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夫の幼なじみと入れ替わり、私は身を引いた

夫の幼なじみと入れ替わり、私は身を引いた

By:  クレヨンブタちゃんKumpleto
Language: Japanese
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夫の小寺翔太(こてら しょうた)は、いつもまとわりついてくる幼なじみを、ずっと疎ましく思っていた。 私、小寺理乃(こてら りの)のために、その幼なじみ、奥島悠実(おくしま ゆうみ)との連絡すら絶ってくれたほどだった。 それなのに、目が覚めると、私は悠実と身体が入れ替わっていた。 翔太に相談しなくちゃ。でも、悠実の姿のままでは、門前払いされてしまうかもしれない。 頭の中で何通りもの説明の仕方を考えてから、私は翔太との家を訪ねた。 玄関のドアを開けた翔太は、私を見るなり眉をひそめ、慌てて扉を閉めると、無理やり外へ押し出そうとした。 私は悠実じゃない。そう説明しようとした瞬間、翔太が、ぎゅっと私を抱きしめた。 「なんでここに来たんだ?さては、この2日間、俺のことが恋しくてたまらなかったんだろ」

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ひとみ
ひとみ
不倫を知れたから、入れ替わりの呪詛もある意味良かった…のか…
2026-10-06 15:33:37
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松坂 美枝
松坂 美枝
不倫の手口が遂に呪術にも使われて(笑) そこまでして不倫したかったのに離婚したら取り乱しすぎだろ(笑) 主人公もさっさと再婚したし、相当いい女だったのにアホなことしたね
2026-10-06 10:42:11
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ノンスケ
ノンスケ
呪詛で数日、妻と幼馴染が入れ替わった。なのに夫は全く気づきもしないで、妻のふりをした幼馴染を大事にするふりをしながら、幼馴染の姿をした妻に「いつものように後から行くから」と浮気してたことをバラしてしまった。妻が去って錯乱したと言うことは、妻に対して愛情はあったけど、幼馴染が自分に寄せる行為も話したくなかったのね。そして元の姿に戻った元妻は、デザイン学校に戻り、再開した先輩と少しずつ心を通わせ合い結婚。幼馴染は呪詛がバレて地下に監禁され、それがバレて元夫の会社も破産。入れ替わったことで浮気がしれてよかったんじゃない?
2026-10-06 21:03:25
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9 Kabanata
第1話
呆然とする私をよそに、翔太は固まったままの私の頬へ軽く口づけた。「ここ何日か、理乃の監視が厳しくてさ。抜け出して会いに行く暇がなかったんだ」理乃は私だ。私がここにいる。なら、この家の中にいる「私」は、誰?背筋がぞくりと冷える。目の前の男までもが、急に見知らぬ他人に思えてきた。黙り込んだのが気に入らないのか、翔太は顔を曇らせ、私の顎を乱暴につかむ。「言っただろ。理乃の前で騒ぎを起こすなって。妻の座以外なら、何だって叶えてやる」目に涙をためたまま、私は言葉を失っていた。涙に濡れた顔を見て、翔太の表情がふっとほどける。「わかったわかった。まったく、すぐ泣くんだから。いい子だ、あとでたっぷり可愛がってやるよ」急に吐き気がこみ上げた。翔太は今までずっと、こうやって私を欺いてきたのだ。本当のことを言おうとした瞬間、玄関の扉が開き、翔太は反射的に私を突き放した。「私」が、目の前に現れた。彼女は笑みを浮かべて言う。「悠実、来てたのね。どうして中に入らないの?翔太ったら、女の子を追い返してどうするの。さあ、上がって」翔太は苦虫を噛み潰したような顔で吐き捨てた。「なんでこんなところに来たんだか。追い返そうとしていたところだ。俺たちの邪魔をするな」「私」は笑いながら翔太の手を揺する。「もう、翔太ったら。私以外の女の子みんなに、そんな怖い顔しなくてもいいじゃない」そう言いながら、「私」は歩み寄り、私の手を取った。視線が絡んだ瞬間、悟った。彼女は悠実だ。私たちは、身体が入れ替わっているのだ。問い詰めようと手を伸ばすが、悠実はぱちりと瞬きをしてみせた。「さあさあ、入って。面白い話をしてあげる」何か考えがあるのだと察し、私は黙ってついていった。翔太は少し慌てた様子で、後ろから追ってくる。「理乃、なんでこいつを家に上げるんだよ。水入らずの時間が台無しじゃないか」そう言いながらも、翔太は悠実の目を盗んで、そっと私の手を握ってきた。私は居たたまれず、その手を振りほどく。ソファに腰を下ろして、ようやく気づく。テーブルの上に、私と翔太のウェディングフォトが何枚も広げられていた。ゴミ箱に放り込まれたものまである。信じられない思いで、私は立ち上がった。「これ、どういうつもり?」翔太が、訝しげに私を見る。「理乃が
Magbasa pa
第2話
翔太は一瞬考え込み、ふっと笑った。「ははーん、わかったぞ。俺と理乃の写真にヤキモチを焼いてるんだな?」彼の手が、私の腰を這うように撫でる。「安心しろ。理乃と撮り直すときに、お前と撮る分も予約してやる。あいつの目の前で撮ってやるよ。それなら機嫌も直るだろ?ほら、早く立て。見られたらまずい」翔太に引き起こされながら、私の心は底の底まで沈んでいった。悠実が、私のタオルと服を持って戻ってくる。「悠実、早くこっちに来て。拭いてあげるから」翔太はぱっと私を放し、唇を引き結んで黙り込む。悠実は何も気づかなかったような顔をしている。このふたりは、前からこんなに大胆だったのだ。そして私は、今までなんて愚かだったのだろう。絶望に沈む私の顔など目に入らないかのように、悠実は優しげな声で着替えを促してきた。ぼんやりしたまま浴室に押し込まれ、蛇口をひねる。鏡に映っているのは、翔太が散々疎んじていたはずの悠実の顔。私は声を上げて泣き崩れた。しばらくして着替えを終えて出ると、悠実が嬉しそうに私の手を取った。「翔太にも話したの。せっかく来たんだし、うちに何日か泊まっていって。部屋なら余ってるから」悠実の意図がわからず、私は翔太に目を向けた。けれど彼は私に一瞥もくれず、冷たく言い放つ。「理乃が頼み込むから泊めてやるだけだ。でなきゃ今すぐつまみ出しているところだぞ。この数日、理乃の話し相手になってやれ。さもないと、その場で追い出すからな!」胸の奥がすっと冷えていき、思わず身震いした。悠実の狙いなど、わからないはずがない。私の目の前で、翔太といちゃつくところを見せつけたいのだ。夕食の準備の時間になると、悠実が急に言い出した。「悠実、前に魚の甘酢あんかけが得意だって言ってたよね。私、魚が一番好きなの。今日、作ってごちそうしてくれないかな」魚料理なんて、私に作れるはずがない。断ろうとしたところへ、翔太の声が割って入った。「食べたいって言ってるんだ、作ってやれ。おい、聞こえないのか?さっさと支度しろ!」言い返す気力もなく、私は黙って台所へ向かった。シンクの横には、丸ごとの魚が一尾置かれていた。魚をさばいたことなどなく、どこから手をつければいいのか分からず途方に暮れていると、突然背後から抱きつかれ、思わず飛び上がりそうになっ
Magbasa pa
第3話
私は慌てて弁解した。翔太の目に、冷酷な光が宿るのが見えたからだ。「おい、誰か来い」屈強なボディガードがふたり入ってくる。翔太は歯を食いしばって言った。「言ったはずだ。理乃には誰にも指一本触れさせないと。お前でもだ!鍋の味噌汁を、全部こいつの手にぶちまけろ」そう言い捨てると、泣きじゃくる悠実を抱き上げて出ていった。「やめてッ!」私は声を張り上げた。「翔太、私が理乃なの!ちゃんと私を見て!」けれど、翔太には届かない。足早に去っていく背中は、どんどん遠ざかっていく。目の前のボディガードはすでに鍋を持ち上げ、こちらへ歩み寄ってくる。逃げようとしたが、もうひとりに両手を押さえ込まれた。「いや、放して!私が小寺理乃なのよ、こんなことして許されると思ってるの!」ボディガードの口元に、蔑むような笑みが浮かんだ。「奥島さん、小寺社長のご命令ですので。我々にはどうしようもありません」言い終わるや否や、煮えたぎる味噌汁が、私の両手に降り注いだ。激痛が走る。数秒と経たないうちに、私は意識を失った。目を覚ますと、翔太がベッドの脇に座っていた。顔色は優れない。私が目を開けたのを見て、彼は不機嫌そうに口を開く。「面白くないのはわかってる。でも言っただろ、理乃は俺の命なんだ。あいつに手を出すな」言い終えるや、彼は私の首に手をかけた。もがいて起き上がろうとしたはずみで、包帯を巻かれた両手に激痛が走る。私の苦痛に歪んだ顔を見て胸が痛んだのか、翔太は不意に手の力を抜いた。私は荒く息をつく。「悠実、おとなしくしてろ。お前が俺の女でいることは許してやる。だが、もう一度言うぞ。理乃の前で騒ぎを起こすな」険しい顔のままだったが、その口調はいくぶん和らいでいた。私は涙といっしょに、笑いをこぼす。「翔太、もし私が理乃だって言ったら、あなたはどうする?」目の前の男の瞳が、一瞬、はっきりと揺れた。けれどすぐに口の端を歪める。「悠実、俺の気を引きたいなら、理乃のふりなんてしなくたっていいんだぞ」心がひとつ、またひとつと砕けていく。わからない。どうして、ひとつの心でふたりの女を同時に愛せる男がいるのだろう。「ほら、もう泣くな」翔太が私の涙を拭った。「今回の罰は、少しやりすぎたかもな。この前、理乃がしてるのと同
Magbasa pa
第4話
情欲に駆られながらも、翔太は悠実の手の怪我を案じていた。「理乃、手が……」悠実は彼のシャツのボタンを外していく。「平気よ。あなたが楽しんでくれれば、それでいいの」やがて、ふたつの影がもつれ合った。突然、猛烈な吐き気がこみ上げた。私は扉の前で何度かえずき、よろめきながらゲストルームへ戻った。テーブルの上に置かれたダイヤの指輪が目に入った。私はそれを乱暴に払いのけ、そのままゴミ箱へ落とした。もう、人も物も、何もいらなかった。……翌朝。部屋を出ると、翔太が悠実を支えながら階段を下りてくるところだった。彼は、私の顔をまともに見ようともしない。悠実は翔太を軽く小突いて、柔らかな声で言った。「悠実、昨日はわざとじゃなかったって、ちゃんとわかってるわ。翔太も、あんなに厳しく罰しなくてもよかったのにね。私からきつく言っておいたから、もう怒らないで」相手にしたくなかった。けれど、翔太の剣呑な視線がこちらを射抜いた。ここで話を合わせなければ、また罰を受ける。そう悟って、私は仕方なく口を開く。「……わかってる」悠実は嬉しそうに笑った。「じゃあ、みんなでオークションに行きましょう。翔太が、気晴らしに何かプレゼントしてくれるって。悠実も一緒に行こう?」翔太はいつものように渋った。「なんでわざわざ、こいつまで連れて行くんだ」悠実が彼の手を揺すって甘える。「いいじゃない、みんなで行こうよ」翔太は彼女の鼻先を軽くつついた。「わかったわかった。お前の言う通りにするよ」悠実が、意味ありげな視線をこちらに向けてきた。私は黙っていた。オークション会場では、悠実と翔太が当然のように最前列に腰を下ろした。私も並んで座ろうとしたそのとき、悠実が不意に言った。「悠実、後ろの席にしたら?ここ、全部ペアシートだから」私はじっと翔太を見つめた。彼は小さくうなずくだけだった。「後ろに行け。目障りだ」「……わかった」騒ぎ立てはしなかった。ウェイターに案内されるまま、いちばん後ろの隅の席まで、おとなしく歩いていった。休憩時間、お手洗いから出たところで、私は翔太に腕を引かれて、物陰に連れ込まれた。「浮かない顔しやがって。ほら、お前にジュエリーを一式、競り落としてやったぞ。お前のはメインのネックレスで、あい
Magbasa pa
第5話
翔太が荷物を受け取り、封を開けた瞬間、1枚の書類がはらりと床に落ちた。離婚届受理証明書だった。それを見た悠実と翔太の表情が、同時に凍りついた。翔太はしゃがみ込んで拾い上げ、読んでみた。そこには紛れもなく、私と翔太の名前が並んでいた。彼は勢いよく、ウェディングドレス姿の悠実を振り返る。「理乃、どういうことだ?」悠実が説明する間もなく、彼女は突然、頭を抱えてうずくまった。翔太が慌てて支える。「どうした、理乃?どこか具合が悪いのか?」だが、彼の腕の中で顔を上げたのは、悠実自身の顔だった。翔太は弾かれたように、悠実を突き飛ばした。「悠実……?理乃?いったい、どういうことだ」悠実にも、何が起きたのかわからない。唇を震わせるばかりで、ひと言も出てこなかった。翔太は震える手で、荷物の中の手紙を開いた。【翔太へどうして悠実と身体が入れ替わったのか、私にはわからない。気になるなら、彼女に聞いてみたら?ただ、この数日、あなたが彼女にしたことも、私にしたことも、全部知ってる。翔太、あなたには吐き気がする。悠実にも感謝しなくちゃね。おかげで、あなたたちふたりの虫唾が走るような本性が、はっきり見えたから。結婚指輪もウェディングフォトも、あなたは全部彼女にあげたでしょう。だったら、私は身を引く。どうぞおふたりで、一生ふたりでしがみつき合って、末永くお幸せに!二度と、私を探さないで。理乃】翔太は、胸にぽっかりと穴が空いたような心地だった。信じられない思いで手紙を何度も読み返し、ようやく、私が本当に彼を捨てたのだと理解した。彼の目は血走り、狂気を宿していた。その表情を見て、悠実は思わず後ずさった。震える声で呼ぶ。「しょ、翔太……っ」翔太は大股で悠実に歩み寄り、細い首を力任せに締め上げた。「悠実!言ったよな。どれだけ騒ごうと構わない、だが理乃にだけは手を出すなと!理乃は俺の命なんだ。理乃に何をした?言え!言わなければ、死んだ方がマシだと思える目に遭わせてやる!」息ができず、悠実はただ必死に、翔太の手を叩くしかなかった。見かねたボディガードが、傍らから声をかける。「小寺社長、奥島さんが死んでしまいます!」ようやく理性が戻りかけた翔太の手から、力が抜けた。悠実は
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第6話
嬉しさのあまり、私は自分の顔をまじまじと見つめ、何度も頬に触れた。喜びの涙があふれる。私は、本当に自由になったのだ。ちょうどそのとき、空港のアナウンスが流れた。「790便をご利用のお客様は、お早めにご搭乗ください」スマホには、翔太からの着信が数えきれないほど入っていた。きっと、もう気づいたのだろう。手紙も読んだに違いない。私は彼の連絡先を残らずブロックして、自分の夢を追いかけはじめた。世界的に名の知れたウィーンのデザイン研究所が、私の才能に目を留め、デザイナーとして迎えたいと声をかけてくれたことがあった。けれど、翔太のそばを離れたくなくて、私はその誘いを断った。それから3年。研究所は今もなお、私に手を差し伸べてくれていた。私は迷わず承諾し、海外転出届も出した。ウィーンに降り立つと、研究所から迎えのスタッフが来てくれることになっていた。けれど、いくら待っても、ネームボードを掲げた人は見当たらない。そのとき、後ろから誰かが私の肩を軽く叩いた。振り向いた私は、思わず固まってしまった。「やあ、久しぶり」黒いロングコートに身を包んだ相楽晃司(さがら こうじ)が、微笑みながら私を見ていた。「先輩!お久しぶりです。どうして先輩が?」驚きと嬉しさで、声が弾んだ。晃司は手を伸ばして、私のスーツケースを受け取る。「決まってるだろ。我らが誇る天才デザイナー、理乃様をお迎えに上がったんだよ」私は思わず足を止めた。「先輩も、研究所にいらっしゃるんですか?うそ、嬉しいです!」晃司は私の頭をぽんぽんと撫でた。「行こう。ビールさんを待たせちゃ悪い」ビールは、私たちデザイナー全員の師匠であり、研究所をたったひとりで立ち上げた人でもある。穏やかで小柄なドイツ人のおじいさんで、かしこまらなくていい、みんな気軽に「ビール」と呼んでくれ、と言ってくれている。ビールや他のデザイナーたちとの顔合わせは、とても楽しいものだった。それが済むと、私は家探しを始めた。その最中、晃司がふと言った。ルームメイトが出ていったから、寝室がひとつ空いている。嫌でなければ、とりあえずそこに住めばいい。家賃のことは、気にしなくていいから、と。翔太のもとを去ったとき、私は何も持ち出さなかった。今は懐が寂しくて、大した額は出せない。私は感謝を込めてう
Magbasa pa
第7話
「離婚」という言葉を聞いた途端、翔太は血相を変えて叫んだ。「離婚なんてしてない!理乃、あんなのは偽物だ。俺は認めてない!悠実も、あのときお前と身体を入れ替えた奴も、俺がきっちり罰しておいた。信じられないなら、これを見てくれ」言葉と同時に、彼は慌ててスマホを取り出した。画面には、大量の監視カメラの映像が保存されている。適当に開いた1本には、悠実が電流を流されて苦しむ映像が映っていた。彼女は見る影もなく痩せ細り、そのくぼんだ目には、生きようとする意志のかけらも残っていなかった。映像を見終えて、翔太への嫌悪が、さらに募っていった。「翔太。これが全部自分のせいじゃないって、本気で言うつもり?あなたが悠実を好き勝手させていなければ、私たちの結婚生活が破綻することなんてなかったはずよ」私は、1語ずつ区切るように言った。「あなたこそが、諸悪の根源よ!」私が言葉を重ねるたび、翔太の顔からすうっと血の気が引いていく。言い終えて、彼の腕を冷ややかに振り払って立ち去ろうとしたが、強くつかまれて動けなかった。翔太は、私の前にひざまずいた。「理乃!すまない、俺が悪かった。不倫なんて、するんじゃなかった」彼の目が、みるみる赤く充血し、涙ぐんでいく。「頼む、一緒に帰ろう。あいつらのことも、過去のことも全部忘れて、もう一度だけ、最初からやり直させてくれないか?なあ……」「嫌よ。あなたとは行かない」私は、しがみついてくる腕を冷ややかに振り払った。けれど少し進んだところで、背後から強く抱きすくめられた。口と鼻に、薬品の匂いがするハンカチが押し当てられる。抵抗する間もなく、私の意識は深い闇へと落ちていった。途切れる寸前、うわごとのような翔太の声が耳元で聞こえた。「理乃……お前は、俺から離れちゃだめなんだ」目を覚ますと、そこはホテルの1室だった。傍らには、見張るように翔太が座っている。意識のない私を連れて、すぐに国外へ連れ出せるはずがない。私は部屋の隅に縮こまって、声を張り上げた。「翔太、正気なの?こんなの不法監禁よ!ここはあなたの好き勝手できる場所じゃない、今すぐ帰して!」翔太は、水を注いだコップを差し出してきた。「いいから、もう叫ぶなよ。このフロアは全部俺の手の者だ。誰にも見つかりっこない。頼むから、おとな
Magbasa pa
第8話
彼にきっぱりと諦めさせるには、嘘をつくしかなかった。「この人は、私の婚約者よ。もうすぐ結婚するの。だから、二度と私たちの邪魔をしないで!」翔太は、崩れ落ちるように叫んだ。「そんなはずないッ!理乃、俺は信じない。俺たち、あんなに愛し合ってたじゃないか!ああああっ!」晃司は後のことを、駆けつけた警察とボディガードに任せた。そして、かけがえのない宝物を守るようにそっと私を抱き上げ、周りの目から隠すように、しっかりと包み込んでくれた。私は彼の胸に顔をうずめた。ようやく安全を実感できて、たまらず声を上げて泣いた。晃司は私を、ふたりで暮らす家に連れ帰った。ベッドにやさしく下ろすと、その脇に片膝をつき、心配そうに私の顔を覗き込んだ。「理乃、もういいんだ。泣かなくていい。大丈夫……全部、終わったから」しゃくり上げながら、私は尋ねる。「先輩……私が連れ去られたって、どうしてわかったんですか?」その話になると、晃司の顔に怒りがにじんだ。「いつもお昼を一緒に食べる約束だっただろ?君が出ていってしばらくして、何が食べたいかメッセージを送ったのに、返事がなかった。ちょっと心配になって、入口まで見に行ったんだ。そしたら、君のデザイン画が全部、地面に散らばってた。何かよくないことが起きたんだって、すぐにわかったよ。それで、ツテを頼って調べたら、君の元夫が連れ去ったってすぐにわかった」晃司が、私の頭をそっと撫でてくれる。「でも、もう大丈夫だ」私は顔を上げ、おそるおそる尋ねた。「先輩……知ってしまったんですよね。彼のこと……」「ああ。でもいいんだ。過去のない人間なんて、いないさ」やっぱり、春風のように穏やかでやさしい先輩だった。涙を拭って、私は深くうなずいた。「そうですよね。全部、もう終わったこと。ありがとうございます、先輩」ふと、晃司が口を開く。「さっき言ったこと、本当なのか?」「……え?」「婚約者って」真剣なまなざしが、私を見つめる。その瞳には、いつも私に向けられてきた、深くあたたかい想いが宿っていた。私は、耳まで真っ赤になった。「ち、違います。あれは、あの人に諦めさせて、二度と付きまとわれないように、わざと言っただけで……」「そうか」晃司の顔が、少しずつ近づいてくる。「君
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第9話
帰国してからも、翔太は諦めなかった。小寺グループの強大な影響力を使い、街じゅうの広告ビジョンに私へのプロポーズ動画を流して、私が振り向いてくれるのを祈り続けた。晃司は、彼の実家のツテを使って、翔太が国外で女性を不法に連れ去った事件を世間に広めた。その間、私の名前も身元も、すべて完璧に伏せられた。翔太の愚かな行いがもとで、小寺グループの株価は暴落し、資金繰りも完全に行き詰まった。株は大量に売り浴びせられたうえ、今度は敵対的な買い集めに遭い、激しいマネーゲームの末に、巨大なグループはあっけなく経営破綻した。翔太の邸宅は抵当に入った。差し押さえの担当者が家を引き取りに訪れたとき、薄暗い地下室で虫の息になっている悠実を見つけ、救出した。悠実は翔太を告訴した。殺人未遂をはじめとする罪に問われ、翔太には長期の実刑判決が下ることになった。すべてを聞き終えても、私の胸に湧いたのは、ほんの少しの感慨だけだった。それでも、もう全部終わったのだ。半年後、晃司と私が共同でデザインした「煌めき」シリーズが、世界的なファッションランキングで1位に輝いた。授賞式の日、晃司は私の手を引いて、栄誉ある壇上へと上がっていった。受賞スピーチを終え、壇を降りようとしたとき、晃司が突然、私を引き止めた。彼は片膝をついて、片手にはスタッフから受け取った真っ赤な薔薇の花束を、もう片方の手にはまばゆいダイヤの指輪を差し出した。私は、呆然と立ち尽くした。晃司はまっすぐに私を見つめ、やさしく澄んだ声で言った。「理乃、ずっとずっと前から、君が好きだった。これからの人生を、君と一緒に歩いていきたい。俺と、結婚してくれませんか?」「受けて!」「結婚しちゃえ!」こらえきれずに、大粒の涙がこぼれた。私はうなずいて、そっと手を差し出した。「はい。喜んで」晃司は、世界でいちばん大切な宝物を手に入れたように、私をひょいと抱き上げ、嬉しそうにくるくると回った。プロポーズのあと、私たちは幸せな結婚式の準備を始めた。研究所の同僚たちも喜んで加わってくれて、招待状から披露宴の会場まで、花束のひとつひとつ、小物の配置のひとつひとつに至るまで、すべてが丹念に、美しくデザインされた。かつて晃司をからかっていた、あのヨーロッパ人の同僚が、彼を肘でつついて、またフランス語で言った。
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