結奈は狂った。ついさっきまで、彼女は記者会見の場で堂々と話し、華やかなスポットライトを浴びている。それなのに次の瞬間、警察が会場へ駆け込み、彼女に手錠をかける。そして、集まったすべてのメディアが見守る中、そのまま警察署へ連行されていく。私は、そんなことにはまったく興味がない。ただひたすら、科学研究に打ち込んでいる。そして5年後。新たな研究成果の発表会で、私は朔と再会する。朔は、ずいぶんと老け込んでいる。髪にも白いものが混じっている。けれど、何より驚いたのは――彼が車椅子に座っていることだった。体が不自由になったの?神様、なんていいことを……いや、待って。科学を信じよう。恩師から一通りの話を聞いて、私は初めて知る。結奈は刑務所に入れられ、自分の人生が完全に終わったことを悟ったらしい。そのうえ、朔に助けを求めたものの、朔は助けるどころか、刑務所の中で彼女が苦しむように手を回したという。そこで結奈は、もう後には引けないとばかりに、とんでもない行動に出た。ひそかに隠し持っていた金で、末期がんを患っていた患者を買収した。そして、その男に車を運転させ、朔のマイバッハへ突っ込ませた。自分もろとも、朔を道連れにするために。幸い、朔は命だけは助かった。ただ、体が不自由になっただけだ。そこまで話すと、恩師は思わず小さく笑う。私も何とも言えない気持ちになり、二人で少し笑いながら話したあと、そのことを頭の隅へ追いやる。発表会が始まる。私は壇上に立ち、堂々と研究成果について語っている。人の波の中に座る朔は、私をほとんど貪るような目で見つめている。まるで、ようやく見つけ出した、失われた宝物でも見るように。「梨々香、待っててくれ」朔が唇だけを動かして、そう言っているのが見える。私は視線を逸らし、彼をまるで空気のように扱う。発表会が終わる。朔は助手の力を借りながら、急いで私のもとへ向かってくる。けれど、私から1メートルほどのところで、警備員に止められる。朔は呆然とする。それでも諦めず、必死になって私の名前を叫び続ける。私に振り向いてほしい。少しでいいから話をしたい。そんな思いをぶつけるように、何度も私を呼ぶ。けれど、二言、三言と声をかけただけで、また警備員に容赦なく制止される
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