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第11話

作者: 局所宇宙
結奈は狂った。

ついさっきまで、彼女は記者会見の場で堂々と話し、華やかなスポットライトを浴びている。

それなのに次の瞬間、警察が会場へ駆け込み、彼女に手錠をかける。

そして、集まったすべてのメディアが見守る中、そのまま警察署へ連行されていく。

私は、そんなことにはまったく興味がない。

ただひたすら、科学研究に打ち込んでいる。

そして5年後。

新たな研究成果の発表会で、私は朔と再会する。

朔は、ずいぶんと老け込んでいる。髪にも白いものが混じっている。

けれど、何より驚いたのは――彼が車椅子に座っていることだった。

体が不自由になったの?

神様、なんていいことを……いや、待って。科学を信じよう。

恩師から一通りの話を聞いて、私は初めて知る。

結奈は刑務所に入れられ、自分の人生が完全に終わったことを悟ったらしい。

そのうえ、朔に助けを求めたものの、朔は助けるどころか、刑務所の中で彼女が苦しむように手を回したという。

そこで結奈は、もう後には引けないとばかりに、とんでもない行動に出た。

ひそかに隠し持っていた金で、末期がんを患っていた患者を買収した。

そして、
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    結奈は狂った。ついさっきまで、彼女は記者会見の場で堂々と話し、華やかなスポットライトを浴びている。それなのに次の瞬間、警察が会場へ駆け込み、彼女に手錠をかける。そして、集まったすべてのメディアが見守る中、そのまま警察署へ連行されていく。私は、そんなことにはまったく興味がない。ただひたすら、科学研究に打ち込んでいる。そして5年後。新たな研究成果の発表会で、私は朔と再会する。朔は、ずいぶんと老け込んでいる。髪にも白いものが混じっている。けれど、何より驚いたのは――彼が車椅子に座っていることだった。体が不自由になったの?神様、なんていいことを……いや、待って。科学を信じよう。恩師から一通りの話を聞いて、私は初めて知る。結奈は刑務所に入れられ、自分の人生が完全に終わったことを悟ったらしい。そのうえ、朔に助けを求めたものの、朔は助けるどころか、刑務所の中で彼女が苦しむように手を回したという。そこで結奈は、もう後には引けないとばかりに、とんでもない行動に出た。ひそかに隠し持っていた金で、末期がんを患っていた患者を買収した。そして、その男に車を運転させ、朔のマイバッハへ突っ込ませた。自分もろとも、朔を道連れにするために。幸い、朔は命だけは助かった。ただ、体が不自由になっただけだ。そこまで話すと、恩師は思わず小さく笑う。私も何とも言えない気持ちになり、二人で少し笑いながら話したあと、そのことを頭の隅へ追いやる。発表会が始まる。私は壇上に立ち、堂々と研究成果について語っている。人の波の中に座る朔は、私をほとんど貪るような目で見つめている。まるで、ようやく見つけ出した、失われた宝物でも見るように。「梨々香、待っててくれ」朔が唇だけを動かして、そう言っているのが見える。私は視線を逸らし、彼をまるで空気のように扱う。発表会が終わる。朔は助手の力を借りながら、急いで私のもとへ向かってくる。けれど、私から1メートルほどのところで、警備員に止められる。朔は呆然とする。それでも諦めず、必死になって私の名前を叫び続ける。私に振り向いてほしい。少しでいいから話をしたい。そんな思いをぶつけるように、何度も私を呼ぶ。けれど、二言、三言と声をかけただけで、また警備員に容赦なく制止される

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    朔の足が、床に落ちていた指輪を踏んだ。「これは?」彼はゆっくりとしゃがみ込み、床から指輪を拾い上げる。内側に刻まれた見慣れた「LS」の文字を見て、またその場で固まる。それは、私と彼の結婚指輪……朔は覚えている。あれは結婚式の一週間前だった。友人に言われて初めて、まだ結婚指輪を買っていないことを思い出した。指輪を選ぶのが面倒だった朔は、適当に街のジュエリーショップへ入り、たった3分でこの指輪を決めた。指輪を受け取ったとき、朔は梨々香が泣いたことを覚えている。何を言われても、いつも太陽のように明るく笑っていた女の子が、自分から贈られた指輪を見た途端、ようやく帰る場所を見つけた子犬のように泣きじゃくった。朔は覚えている。梨々香はソファの上で体を丸め、涙で白いワンピースを濡らしていた。少し不格好で、少し可笑しくて。その時、私は朔にこう言った。「ありがとう、朔。これ、一度私にくれたなら、絶対に返してなんて言わないでね。 この指輪……命より大切にするから。お母さんが亡くなってから、また私に家をくれて……ありがとう、朔」では、あのとき朔は何と言ったのだろう?ただ、可笑しいと思った。たかが指輪一つで、どうしてこんなに泣けるんだろう、と。でも同時に、胸の奥がじんわりと温かくなった。まるで甘い蜜の中に浸かっているようだった。あのとき、朔は初めて思った。――うん。こんなふうに、そばにいてくれる人がいるのも悪くない。けれど今、その指輪を梨々香はもういらないと言った。まるで、自分のことまで……もういらないと言われたように。朔の体がふらりと揺れ、そのまま力なく床に座り込む。息ができない。胸が締めつけられる。そこで初めて、朔は気づいた。梨々香がいなくなっただけで、自分は一日すら耐えられないのだと。そのとき、スマホが一度震える。画面に新しいメッセージの通知が浮かぶ。送信者:梨々香。朔は一瞬呆然とし、次の瞬間には慌ててスマホへ飛びつき、急いで画面を開く。「やっぱり、梨々香はあれだけ俺のことが好きだったんだ。今回だって、ただ俺に腹を立ててるだけだ。本気で俺のもとを……」朔の言葉は最後まで続かなかった。トーク画面を開いた瞬間、そこに表示された文字を見たからだ。【離婚の手続きは、もう

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