電話は、そのまま一方的に切れた。全身の血が凍りついたようだった。耳鳴りだけが耳の奥で鳴り続けていた。「……ごめん」ソファに横たわったまま、悠斗がまた寝言のようにつぶやいた。今度は、私の名前だった。「……美月、ごめん……」喉の奥がきゅっと締めつけられた。苦しそうに眉を寄せる悠斗を見つめながら、思わず笑ってしまった。皮肉な笑いだった。私と結婚することは、紗妃だけじゃなく、彼自身の想いまで裏切ることだった。そのくせ、結婚前に紗妃と関係を持ち、私のことまで平然と裏切っていた。私は無言でキッチンへ向かい、コップいっぱいに冷たい水を注いだ。戻ってきた頃には、コップを持つ手が震えていた。次の瞬間、私はその水を悠斗の顔へ思いきり浴びせた。「悠斗、起きて」冷たい水が髪を伝い、頬からシャツへと流れ落ちていった。悠斗は勢いよく目を開けた。怒るどころか、慌てて私の手をつかもうとした。「ごめん、美月。飲みすぎた……あいつらに無理やり飲まされてさ……変な夢を見たんだ。寝坊して、君と入籍に行けなくなって……君に嫌われる夢を見たんだ……そうだ……今、何時だ……?」そう言ってスマホを探そうとした悠斗は、私の足元に落ちていた手紙に気づいた。その瞬間、酔いは完全に醒めたようだった。悠斗は飛びつくように手紙を拾い上げた。「……どこで見つけた!?」さっきまでとはまるで違う声だった。抑えきれない動揺と焦りが滲んでいた。「誰が読んでいいなんて言った!?」私は冷たく笑うと、悠斗の手からスマホを取り返した。通話履歴を開き、録音をそのまま再生した。「悠斗!ちゃんと避妊したって言ったよね!?なんで私、妊娠してるの……!」静まり返った部屋に、紗妃の叫び声だけが鋭く響いた。「……これは、どういうこと?説明してくれる?」「美月、違う。ちゃんと説明――」悠斗が言いかけた瞬間、私は込み上げる吐き気に耐えきれず、洗面所へ駆け込み、その場で激しく吐いた。その間にも、スマホの画面には何度も紗妃の名前が表示されていた。私は知っていた。悠斗の心には、ずっと紗妃だけがいたことを。高校時代、悠斗は3年間ずっと紗妃に想いを寄せていた。卒業後、ようやく恋人同士になれたものの、その幸せはわずか2か月で終わった。紗妃
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