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第6話

Author: 桃瀬乱破
美月の仕事は激務だった。

終電近くまで残業することなんて珍しくなく、「もう辞めたい」が口癖になっていた。

悠斗も何度も転職を勧めた。「少しぐらい休んでもいい、俺が支えるから」と。

2か月前にプロポーズしてからは、給料が振り込まれる口座も、貯金も、全部美月に預けていた。

その数日後だった。残業中に胃の痛みで倒れかけたことがあって、美月はようやく退職を決意した。

「先輩」

悠斗の知る限り、美月がそう呼ぶ相手は、1人しか思い浮かばない。

黒沢晃。3つ上の大学の先輩で、同じ学科の卒業生。そして、美月を会社へ誘ってくれた直属の上司だった。

そういえば以前、美月がこんなことを言っていた。

「黒沢先輩って、声がちょっと悠斗に似てるんだよね」

そのとき悠斗はわざと拗ねたふりをした。

「じゃあ、先輩との会議が夜遅くまで続いても平気なわけだ」

美月はくすっと笑って、首を横に振った。

「そんなわけないでしょ。好きなのは悠斗だけなんだから」

10年間、胸の奥に想いを隠し続けてきた美月は、付き合い始めてからは驚くほど真っ直ぐだった。

――心のどこかに醜いものを抱えていたのは、美月じ
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