出発の日、東央の新居へ大半の荷物を先に送っていた朔は、いつもより早く実家を出た。遠回りをしてひよりの家へ寄り、一緒に大学へ向かうつもりだった。けれど、玄関から出てきたのは、ひよりの母だった。朔を見ると、ひよりの母は、昨日置いていったスーツケースを急いで差し出した。「朔くん、ちょうどよかった。これ、ひよりから」朔は全身から血の気が引くのを感じ、呆然と立ち尽くした。ひよりの母は、この3年間に二人の間で何があったかを知っていた。とはいえ、相手は自分の娘と同じ年の子だ。まして、これほど傷ついた顔を見れば、責める気にはなれなかった。ため息をつき、静かに言った。「ひよりが選んだのは、南陵大学なの。私たち夫婦と朔くんのご両親は昔から親しいし、あなたたちも一緒に育ってきたでしょう。こんなことになるなんて、誰も思っていなかった。でも、もう決まったことよ。これからは、それぞれ自分の道を歩きなさい」耳鳴りがした。朔は差し出されたスーツケースを受け取らず、自分の荷物までその場に残して走りだした。南陵大学へ行って、ひよりを連れ戻さなければならない。……南陵空港に着くと、琴葉と律希が到着ロビーの外で待っていた。私が何か言うより先に、二人はほとんど同時に口を開いた。「私たちも今来たところ。ひより、ちょうどいい時間だったよ」律希が何も言わずに私のスーツケースを受け取り、琴葉が手を握った。「お兄ちゃんが新入生サポートのスタッフをしてるから、大学行きのバス、前の席を取っておいてもらったの」律希の背中を見つめていると、胸の奥が温かくなった。大学へ向かうバスでは、律希が私と琴葉の後ろに座った。しばらく走ったころ、後ろから水のペットボトルが差し出された。驚いて振り返った。「琴葉の話し相手は疲れるだろ。水を飲んで、少し休め」琴葉はすぐに振り向き、律希と言い合いを始めた。おかげで、私は少し目を閉じて休めた。ところが、スマホが何度も鳴り始めた。スマホを見ると、画面は朔からのメッセージで埋め尽くされていた。【ひより、南陵大にしたなら、どうして俺に言わなかった?】【まだ俺に怒ってるんだろ?】【山へ一緒に行く約束を破ったのは悪かった。でも汐里に、南島へ行くのは亡くなった母との約束だから一緒に来
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