俺がスマホで予約の手続きを始めたのを見て、咲月の表情が和らいだ。彼女は愛おしそうに湊の頭を撫でてから、俺の手を引いた。芽依は湊の太ももに抱きつき、甘えた声を出した。「じゃあ、水着を買いに行きましょう。湊おじちゃんと芽依、最近サーフィンの特訓してたもんね。南十字島に着いたらさっそく海で遊べるね!その時、湊おじちゃんはきっとビーチで一番かっこいい男だよ!」娘がこんなふうに愛想のいい言葉を口にするのは珍しい。彼女は俺に対して妙に壁を作っており、その目には言葉にし難い軽蔑の色が潜んでいる。父娘の距離を縮めようと、俺は芽依がお気に入りのグルメ系インフルエンサーをチェックし、彼女が「いいね」を押したレシピを必死に練習した。だが、期待を込めて「美味しいか?」と尋ねるたび、彼女は決まって眉をひそめて口にした俺の手料理をゴミ箱に吐き出し、吐き気を催すような素振りを見せた。「パパの作ったご飯、本当にマズい」味は悪くなかった。単に芽依の口に合わなかっただけだと思っていた。だが今ならわかる。俺という存在が嫌いだから、俺のすることなすこと全てが気に食わないのだ。俺はハンドルを強く握り、バックミラー越しに芽依が湊の腕の中で静かに横たわっているのを見た。俺の視線に気づくと、彼女はあっかんべーをして、俺に向かって唾を吐きかける真似をした。湊はそれを見て吹き出し、たまらず口を挟んだ。「兄貴と芽依って、絶対に前世からの仇同士だよな。俺が見てきた中で一番いい子なのに、なぜか兄貴にだけは懐かないもんなぁ」咲月は目尻を下げて同調した。「芽依は本当に湊のほうが好きみたいね。毎年の誕生日の願い事だって、『明るくてかっこいい湊おじちゃんがパパになればいいのに』だもんね」そう言われて、湊は照れ臭そうに顔を赤らめた。彼はチラリと咲月を見てから、芽依の脇腹をくすぐった。「こら、そんなこと言うなよ。兄貴が傷つくだろ」車内に響き渡る楽しげな笑い声が、鋭い針のように俺の胸を刺す。俺は幼い頃から手のひらで大切に育ててきた我が子を見つめた。湊が家に居候し始めてからというもの、彼女は二度と俺に懐くことはなくなった。苦い思いを噛み殺していると、咲月が身を乗り出して俺のシートベルトを外してくれた。俺が落ち込んでいるのを察したのか、彼女は
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