第11話 「何か弱みでも握られているのか」と元婚約者に言われました「本当に、結婚したの?」「うん。昨日、婚姻届を出したよ」 美緒がそう答えても、莉奈はすぐには反応しなかった。 会議室の入口付近には、まだ商談を終えたばかりの人々が残っている。資料を片づける社員、久我と言葉を交わしている役員、少し離れた場所には亮介と柊木家の人間たちもいる。 そんな中で莉奈は、美緒の左手と蓮司の顔を交互に見つめていた。「昨日って……お姉ちゃん、会社を辞めるって言った次の日じゃない」「そうだね」「そんなの、おかしいよ」 莉奈の言葉に、美緒は少しだけ眉を寄せた。「何がおかしいの?」「だって、そんな急に結婚なんてできるわけないでしょう? お姉ちゃん、亮介さんと別れたばっかりなんだよ。それなのに昨日いきなり、この人と結婚したって……」 莉奈はそこで蓮司を見た。 自分よりはるかに社会的な立場が上の人間だと理解しているからだろう。露骨に睨むことはしないが、戸惑いと警戒が入り混じった目をしていた。「神代社長……ですよね」「はい」「どうして、お姉ちゃんと?」 蓮司は答える前に美緒を見た。 話していいか、という確認なのだろう。 美緒は小さくうなずいた。「僕が結婚を申し込みました」「いつ?」「一昨日です」 莉奈の顔がさらに強張った。「一昨日……」「あなた方の婚約発表があった日の夜です」 蓮司は余計な感情を混ぜずに答えた。 その言葉だけを聞けば、確
Last Updated : 2026-10-10 Read more