第11話 あれが俺の妻だ イベント会場を出た頃には、建物の正面に昼間とは比べものにならない数の報道陣が集まっていた。 世界的デザイナーMIOが三年ぶりに姿を現しただけでも大きなニュースになる。それに加えて、彼女が御堂ライフスタイル社長・御堂蓮司の妻であり、現在は離婚協議中だと自ら明かしたのだ。ファッション誌だけでなく、経済誌、一般紙、テレビ局、動画配信メディアまで押しかけている。 自動扉が開いた瞬間、夜の冷たい空気と一緒に無数の声が飛び込んできた。「御堂社長、奥様がMIOだったことは以前からご存じだったのでしょうか!」「離婚協議に至った理由を教えてください!」「MIOさんが三年間活動を休止していたのは結婚生活と関係がありますか!」「御堂グループとして今後もMIOとの共同事業は継続されますか!」 片桐と警備担当者が前へ出る。 蓮司は足を止めなかった。 何を言っても、今は澪の言葉を利用する形になる。 自分は夫だから事情を知っている、などという顔をする資格もない。つい数時間前まで、彼女がMIOであることすら知らなかったのだから。「社長からのコメントはございません。業務上の事項につきましては、後日正式に広報を通じてご案内いたします」 片桐が記者を制しながら道を作る。 蓮司は車へ向かいかけたところで、背後から鋭い声を聞いた。「御堂社長!」 若い記者だった。「奥様が世界的デザイナーだと知らなかったという情報があります。本当でしょうか!」 足が止まった。 片桐がすぐ横へ来る。「社長、お答えになる必要はありません」「分かっている」 そう返したのに、蓮司は振り返った。 カメラの光が一斉に向けられる。「私
Last Updated : 2026-10-10 Read more