翌週、クラブの合同練習に参加した。十三年のブランクを抱えた体は、思うようには動いてくれなかった。ブレーキを踏む位置がわずかに遅れ、コーナーの出口で速度が落ちる。一本目のタイムは、目標には遠く及ばなかった。ヘルメットを脱ぐと、コーチがタイム表を差し出した。「慎重になりすぎだ。昔はもっと無茶をしただろう」そう。昔の私は、失うものなど何もないように走っていた。ようやく取り戻し始めたこの人生だけは、もう誰にも渡さない。二本目は、アクセルを戻すのを少しだけ遅らせた。恐怖にハンドルを握らせるつもりはなかった。走行を終えると、一本目より一秒以上縮まっていた。「まだ走れるな」コーチの短い言葉に、胸の奥が熱くなった。片づけをしていると、コーチに呼び止められた。「来月の選考レースへの出場が正式に決まったぞ」差し出された封筒には、開催日と会場、当日の集合時刻が記されていた。出場を決めたときには、まだ遠く感じていた舞台だ。けれど、印刷された自分の名前を見た瞬間、胸の奥が静かに高鳴った。十三年前なら、父の許可を待った。結婚してからなら、冬真の予定を確かめ、悠生を預けられる日かどうかを考えただろう。けれど今は、誰にも尋ねる必要がない。案内を大切にバッグへしまった。その直後、受付のスタッフが大きな箱を運んできた。「真帆さん宛てです。ずいぶん立派な荷物ですね」中に入っていたのは、新品のヘルメットとレーシングスーツだった。どちらも、気軽に贈れるような値段ではない。スーツは私のサイズに合わせて仕立てられ、胸元には『MAHO』と刺繍されていた。添えられたカードを開く。『続けたいのであれば、反対はしません。月に二度程度なら、悠生にも寂しい思いをさせずに済むでしょう』差出人の名前を見るまでもなかった。冬真には、クラブの場所を教えていない。住まいだけでなく、ここまで調べたらしい。高価な道具を与えれば、それが応援になると思っている。そして今も、私が走る回数まで自分が決められると思っている。その場で配送業者に連絡し、箱を返送する手配をした。それから数週間、選考レースに向けた練習だけに集中した。選考レース当日、十三年ぶりの実戦で無心にコースを走り、二位でチェッカーを受けた。汗に濡れた髪のまま表彰台に立ち、観客席の拍手を聞いた瞬間、十三年前に置
Read more