その日は、とんでもなく最悪な日だった。 いや、正確には。 私の二十八年間の人生で、大切に積み重ねてきたものが、全部いっぺんに壊れた日だったのかもしれない。 長年片思いしていた幼馴染には、邪魔者扱いをされ。 密かに好意を寄せていた職場の後輩には、あっさり裏切られ。 一年間、誰よりも大切にしてきた男には、笑顔でとどめを刺された。 ……ちょっと待って。 さすがに一日で起こる出来事としては、盛りだくさんすぎないだろうか。 恋愛も仕事も人間関係も、見事なまでに全滅。 ここまでくると、いっそ清々しい。 いや、嘘だ。 普通に泣きたい。「……私って、そんなに魅力ないのかなあ」 夜の街を歩きながら、ぽつりと呟いた。 別に、自分で言うのもなんだけれど。 私はそこそこ可愛いと思う。 美容にも気を遣っているし、仕事だって頑張っている。人付き合いは得意な方だし、料理もできる。 それに、好きになった人にはとことん尽くす。 相手が喜んでくれるなら、時間も労力も惜しまない。 むしろ、好きな人を幸せにすることが私の幸せだった。 ……だったのだけれど。「お前さ、そういうとこマジでうざい」「先輩って、ほんとお人好しですよね。だから舐められるんですよ?」「別に俺、そこまでしてくれなんて頼んでないじゃん」 ……はい。 本日、私が大好きだった男性三名から頂戴したお言葉である。 なんということだろう。 全員、見事なまでに口が悪い。 そもそも私は昔から、無口で冷たくて、ちょっと意地悪な男が好きだった。 簡単には甘い言葉をくれないくせに、たまに見せる優しさがたまらなく好きで。 その一瞬を大切にして、何度だって好きになってしまう。 でも、ようやく気づいた。 私はきっと、彼らと一緒にいたって幸せにはなれない。「なんか、馬鹿みたい」 急に笑えてきた。 私はずっと、いい女になりたかった。 優しくて、物分かりがよくて、何があっても笑顔で受け止めてあげられる女。 でも、それって結局、誰にとって都合のいい女だったんだろう。「……もう、やーめた!」 私はスマートフォンをバッグに放り込んだ。 もう男に尽くすのはやめよう。 好きだからって無理をするのも、冷たくされてまで追いかけるのも、全部おしまい。 そもそも、私にはやりたいことが山ほどある。 仕事
Last Updated : 2026-10-12 Read more