もう、男に尽くすのはやめる! 〜愛するのをやめたら、今さら3人の男たちに追いかけられました〜

もう、男に尽くすのはやめる! 〜愛するのをやめたら、今さら3人の男たちに追いかけられました〜

last updateLast Updated : 2026-10-13
By:  すずかんUpdated just now
Language: Japanese
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「もう、男に尽くすのはやめる!」  好きな人にはとことん尽くす、お人好しで恋愛体質な28歳の桜庭小春。ところが、長年片思いしていた幼馴染には邪魔者扱いされ、密かに想いを寄せていた職場の後輩には裏切られ、一年間大切にしてきた男にも冷たく突き放されてしまう。  恋も仕事も失った小春は、ついに男に尽くすことをやめ、自分のために生きると決意する。が、途端に今まで冷たかった男たちが揃って彼女を追いかけ始めて……!?  愛することをやめたら、なぜか溺愛される側に!? 尽くしすぎた女と、失って初めて恋に気づいた男たちの逆転溺愛ラブコメディ。

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Chapter 1

プロローグ 都合のいい女をやめた日

その日は、とんでもなく最悪な日だった。

 いや、正確には。

 私の二十八年間の人生で、大切に積み重ねてきたものが、全部いっぺんに壊れた日だったのかもしれない。

 長年片思いしていた幼馴染には、邪魔者扱いをされ。

 密かに好意を寄せていた職場の後輩には、あっさり裏切られ。

 一年間、誰よりも大切にしてきた男には、笑顔でとどめを刺された。

 ……ちょっと待って。

 さすがに一日で起こる出来事としては、盛りだくさんすぎないだろうか。

 恋愛も仕事も人間関係も、見事なまでに全滅。

 ここまでくると、いっそ清々しい。

 いや、嘘だ。

 普通に泣きたい。

「……私って、そんなに魅力ないのかなあ」

 夜の街を歩きながら、ぽつりと呟いた。

 別に、自分で言うのもなんだけれど。

 私はそこそこ可愛いと思う。

 美容にも気を遣っているし、仕事だって頑張っている。人付き合いは得意な方だし、料理もできる。

 それに、好きになった人にはとことん尽くす。

 相手が喜んでくれるなら、時間も労力も惜しまない。

 むしろ、好きな人を幸せにすることが私の幸せだった。

 ……だったのだけれど。

「お前さ、そういうとこマジでうざい」

「先輩って、ほんとお人好しですよね。だから舐められるんですよ?」

「別に俺、そこまでしてくれなんて頼んでないじゃん」

 ……はい。

 本日、私が大好きだった男性三名から頂戴したお言葉である。

 なんということだろう。

 全員、見事なまでに口が悪い。

 そもそも私は昔から、無口で冷たくて、ちょっと意地悪な男が好きだった。

 簡単には甘い言葉をくれないくせに、たまに見せる優しさがたまらなく好きで。

 その一瞬を大切にして、何度だって好きになってしまう。

 でも、ようやく気づいた。

 私はきっと、彼らと一緒にいたって幸せにはなれない。

「なんか、馬鹿みたい」

 急に笑えてきた。

 私はずっと、いい女になりたかった。

 優しくて、物分かりがよくて、何があっても笑顔で受け止めてあげられる女。

 でも、それって結局、誰にとって都合のいい女だったんだろう。

「……もう、やーめた!」

 私はスマートフォンをバッグに放り込んだ。

 もう男に尽くすのはやめよう。

 好きだからって無理をするのも、冷たくされてまで追いかけるのも、全部おしまい。

 そもそも、私にはやりたいことが山ほどある。

 仕事も頑張りたいし、可愛い服だって着たい。美味しいものも食べたいし、行きたい場所だってたくさんある。

 恋愛なんかに振り回されている場合じゃない。

 これからは、自分の人生を思いっきり楽しもう。

 そしていつか、ちゃんと私を大切にしてくれる人と恋をしよう。

 そうだ。それがいい。

 なんだか急に、未来が楽しみになってきた。

 ……ところが。

 人生というものは、どうやらそう簡単にはいかないらしい。

 それから、たった三日後。

「おい。お前、最近なんで連絡してこねえの?」

「先輩、俺のこと好きだったんじゃないんですか?」

「……俺から離れるとか、勝手に決めんなよ」

 あれほど私を雑に扱っていた男たちが、なぜか揃って追いかけてくるようになったのだ。

 しかも。

「ねえ。あの人たち、もういらないんでしょ?」

 突然現れた見知らぬ美青年が、私の肩を抱き寄せて微笑んだ。

「じゃあさ、次は俺のこと好きになってよ」

 ……ちょっと待って。

 私、もう恋愛はお休みするって決めたんですけど!?

 こうして、尽くすことをやめた私の人生は、思いもよらない方向へ転がり始めた。

 ただし、ひとつだけ誤算があった。

私を失って初めて恋を自覚した男たちは、想像以上に、諦めが悪かったのである。

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プロローグ 都合のいい女をやめた日
その日は、とんでもなく最悪な日だった。 いや、正確には。 私の二十八年間の人生で、大切に積み重ねてきたものが、全部いっぺんに壊れた日だったのかもしれない。 長年片思いしていた幼馴染には、邪魔者扱いをされ。 密かに好意を寄せていた職場の後輩には、あっさり裏切られ。 一年間、誰よりも大切にしてきた男には、笑顔でとどめを刺された。 ……ちょっと待って。 さすがに一日で起こる出来事としては、盛りだくさんすぎないだろうか。 恋愛も仕事も人間関係も、見事なまでに全滅。 ここまでくると、いっそ清々しい。 いや、嘘だ。 普通に泣きたい。「……私って、そんなに魅力ないのかなあ」 夜の街を歩きながら、ぽつりと呟いた。 別に、自分で言うのもなんだけれど。 私はそこそこ可愛いと思う。 美容にも気を遣っているし、仕事だって頑張っている。人付き合いは得意な方だし、料理もできる。 それに、好きになった人にはとことん尽くす。 相手が喜んでくれるなら、時間も労力も惜しまない。 むしろ、好きな人を幸せにすることが私の幸せだった。 ……だったのだけれど。「お前さ、そういうとこマジでうざい」「先輩って、ほんとお人好しですよね。だから舐められるんですよ?」「別に俺、そこまでしてくれなんて頼んでないじゃん」 ……はい。 本日、私が大好きだった男性三名から頂戴したお言葉である。 なんということだろう。 全員、見事なまでに口が悪い。 そもそも私は昔から、無口で冷たくて、ちょっと意地悪な男が好きだった。 簡単には甘い言葉をくれないくせに、たまに見せる優しさがたまらなく好きで。 その一瞬を大切にして、何度だって好きになってしまう。 でも、ようやく気づいた。 私はきっと、彼らと一緒にいたって幸せにはなれない。「なんか、馬鹿みたい」 急に笑えてきた。 私はずっと、いい女になりたかった。 優しくて、物分かりがよくて、何があっても笑顔で受け止めてあげられる女。 でも、それって結局、誰にとって都合のいい女だったんだろう。「……もう、やーめた!」 私はスマートフォンをバッグに放り込んだ。 もう男に尽くすのはやめよう。 好きだからって無理をするのも、冷たくされてまで追いかけるのも、全部おしまい。 そもそも、私にはやりたいことが山ほどある。 仕事
last updateLast Updated : 2026-10-12
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第一話 年上エリート幼馴染・九条怜
「……は? なんでお前がここにいるわけ?」 久しぶりに会えた幼馴染の第一声は、それだった。 ……あれ。 もしかして、来ちゃいけなかった? 都内の一等地にそびえ立つ高層オフィスビル。 そのエントランスで、私は紙袋を両手に抱えたまま、ぱちぱちと瞬きをした。「怜くん! 今日、大事なプレゼンがあるって言ってたでしょ? 資料忘れてたから届けに来たの!」「……お前なあ」 目の前の男は、呆れたようにため息をついた。 九条怜、三十二歳。 誰もが知る大手企業に勤めるエリートで、私が十五年以上片思いしている幼馴染のお兄ちゃんだ。 小さい頃から頭がよくて、顔もよくて、何をやらせてもそつなくこなす。 おまけに背も高く、スーツ姿なんて腹が立つほど似合っている。 ……そう。 私の大好きな男である。 ただし、性格には少々難があった。「わざわざ持ってこなくていいって。連絡くらいしろよ」「だって、忙しかったら邪魔かなって思って。ほら、サプライズ!」「忘れ物届けるのにサプライズも何もないだろ」「えへへ。確かに!」「……褒めてねえから」 怜くんは、昔からこんな感じだ。 無愛想で、口が悪くて、私が何をしても大して喜ばない。 だけど、本当は優しい。 私が落ち込んでいるときには黙って隣にいてくれるし、困っているときには何も言わずに助けてくれる。 だから私は、彼のことがずっと好きだった。「でも、これないと困るかなって。昨日も遅くまで準備してたでしょ?」「……まあな」「ちゃんと朝ご飯食べた? 昨日、寝たの三時過ぎだったよね?」「お前は俺の母親か」「違うよ! 将来のお嫁さん候補!」「はいはい」 ……なんという塩対応。 これでも結構、勇気を出して言ったのだけれど。 まあ、いつものことなので気にしない。 私は彼のこういうところまで、好きなのだから。 ……たぶん。「あら、九条さん?」 そのとき、背後から女性の声がした。 振り返ると、そこにはモデルのように綺麗な女性が立っていた。 艶やかな黒髪に、すらりと伸びた脚。上品なブランドバッグを腕にかけ、見るからに仕事ができそうな雰囲気だ。 うわあ、綺麗な人。 思わず見惚れてしまった。「こちらの方は?」「あ、幼馴染です! 桜庭小春といいます!」 にこっと笑って頭を下げる。 初対面の人には、
last updateLast Updated : 2026-10-12
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第二話 生意気な年下後輩・瀬名伊織
「先輩、今日なんかしょぼくれてますねえ」 午後一時。 職場に戻った私を出迎えたのは、これまた性格に少々難のある美青年だった。「……別にしょぼくれてないもん」「いや、めっちゃ顔に出てますよ。なに、男?」「なんでそうなるの!」「だって先輩、男のことでしか悩まなそうじゃん」 ……失礼な。 私だって仕事のこととか、将来のこととか、いろいろ考えているのだけれど。 もっとも、今は完全に男のことで悩んでいるので、言い返せないのが悔しい。「伊織くんって、ほんと失礼だよね」「今さら? てか、誰に振られたんですか?」「振られてないし!」「じゃあ、好きな男に冷たくされた?」「…………」「図星じゃん。わかりやすっ」 けらけらと笑うのは、三歳年下の後輩、瀬名伊織。 二十五歳。 整った顔立ちに、少し長めの黒髪。涼しげな切れ長の目。 仕事ができて、頭の回転も速く、おまけに女性社員からの人気も高い。 いわゆる、モテる男というやつだ。 そして本人も、それを十分すぎるほど自覚している。「先輩ってさ、ほんと男見る目ないですよね」「……余計なお世話です」「俺みたいないい男が近くにいるのに」「自分で言っちゃうんだ?」「事実なんで」 ……すごい。 ここまで堂々と言われると、いっそ清々しい。 その自信、一割くらい分けてほしいものである。「はいはい。伊織くんはかっこいいねえ」「なに、その雑な褒め方」「だって自分で言うんだもん」「もっと心込めて言ってくださいよ」「かっこいい! 世界一!」「うわ、適当」 そう言いながらも、伊織くんは満更でもなさそうに笑った。 ……本当に、この子は。 見た目だけなら、文句のつけようがない美青年なのに。 中身は図々しいというか、遠慮がないというか。 とにかく、距離感がおかしい。「てか先輩、昨日言ってた映画見ました?」「あっ、ごめん! まだ見てない!」「はあ? あんなにおすすめしたのに?」「だって昨日忙しかったんだもん!」「俺、感想聞くの楽しみにしてたんですけど」「ええっ、そんなに?」「当たり前じゃないですか。俺の好きなもの、先輩にも知ってほしいし」 ……こういうところだ。 いつもは意地悪で、生意気で、私のことなんてからかってばかりなのに。 たまに、妙に素直なことを言う。「じゃあ、今日帰
last updateLast Updated : 2026-10-12
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第三話 生意気な年下後輩・瀬名伊織②
「……どういうことですか?」 午後五時。 突然会議室に呼び出された私は、目の前に置かれた書類を見つめていた。 ……あれ? なんだろう、この空気。 上司は険しい顔をしているし、隣に座っている佐伯さんは今にも泣き出しそうだ。 もしかして、私、何かやらかした? いやいや。 今日はまだ、そんな大きなミスをした覚えはない。 「桜庭さん。今回の取引先への誤送信について、説明してもらえるかな」 「……誤送信、ですか?」 「そうだ。社外秘の資料が、別の取引先に送られていた。先方から正式に抗議が来ている」 「えっ!?」 思わず声が裏返った。 社外秘の資料を誤送信? それは確かに大問題だ。 でも。 「私、その案件の担当ではないんですけど……」 「佐伯さんから、最終確認を任されたと聞いているが?」 「……え?」 思わず隣を見る。 佐伯美咲さん。 私より二歳年下の後輩で、ふんわりとした雰囲気の可愛らしい女性だ。 普段は控えめで、おとなしい。 ……ただし、私に対してだけは少々当たりが強い。 「佐伯さん……?」 声をかけると、彼女は悲しそうに眉を下げた。 「ごめんなさい、先輩……。私、ちゃんと確認してくださいってお願いしましたよね?」 「……うん?」 ちょっと待って。 何の話? 「私、先輩に最終チェックをお願いしたんです。でも、まさかそのまま送信されるなんて……」 「えっ? いや、待って待って!」 私は慌てて手を振った。 「私が佐伯さんから資料をもらったのって、送信したあとだよね?」 「……え?」 「ほら、昨日の夕方! 送っちゃったんですけど、ちょっと不安なので見てもらえませんかって!」 そうだ。 確かにそう言われた。 そもそも私は別案件を担当していて、佐伯さんの仕事には直接関わっていない。 ただ、彼女が困っているようだったから、少しだけ手伝ったのだ。 ……ああ。 嫌な予感がする。 「先輩……ひどいです」 「……えっ?」 「私、そんなこと言ってません!」 佐伯さんの目から、ぽろぽろと涙がこぼれた。 ……ええっ!? 泣きたいの、こっちなんだけど!? 「佐伯さん、落ち着いて! 私、責めてるわけじゃなくて……」 「私だって、先輩のこと信頼
last updateLast Updated : 2026-10-13
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第四話 売れない塩対応ホスト・朝比奈陽向
午後九時。 私は大阪の繁華街にいた。 ……ちなみに、東京で働いている私が、どうしてわざわざ大阪まで来たのかというと。 会いたい人がいたからだ。 ううん。 正確には、会えば少しは元気になれると思っていた。 幼馴染には冷たくされるし、職場では身に覚えのないミスを押しつけられ、挙げ句の果てには退職まで勧められてしまった。 もう、散々である。 でも、私にはまだ大切な人がいる。 口は悪いけれど、真面目で、不器用で。 私が好きだと伝えても、なかなか好きとは返してくれない。 それでも、一年近く想い続けている男の子。 そう。 私の好きな人は、ホストなのだ。 ……いや。 自分で言うのもなんだけれど、なかなかすごいところに恋をしてしまったと思う。 「いらっしゃいませー!」 煌びやかなシャンデリア。 高級そうなソファ。 賑やかな音楽と、あちこちから聞こえてくる楽しそうな笑い声。 ここは、私が一年近く通っているホストクラブ。 そして。 「あ、小春。来たんや」 ソファに座っていた青年が、ちらりと顔を上げた。 「陽向くーん!」 「ん」 「会いたかったあ!」 「はいはい」 ……なんという塩対応。 ちなみに、これでも私たちは一年近い付き合いである。 朝比奈陽向、二十二歳。 明るい髪に、整った顔立ち。少し生意気そうな目元と、少年っぽさの残る綺麗な顔。 自由奔放で、気分屋で、かなりの毒舌。 思ったことは遠慮なく口にするし、自分が納得できないことには絶対に頷かない。 そのくせ、変なところで真面目だったりする。 ……まあ、要するに。 なかなか面倒くさい男なのである。 そして私は、そんな彼が大好きだった。 「ねえねえ、陽向くん。今日めっちゃ大変だったんだよ!」 「なに?」 「聞いてくれる?」 「ええよ」 陽向くんはスマートフォンをテーブルに置くと、こちらに顔を向けた。 こういうところは、ちゃんとしている。 普段はそっけないけれど、話し合いになると意外なくらい真剣に向き合ってくれるのだ。 「実はね、今日会社でいろいろあって……退職することになるかもしれないの」 「……は?」 陽向くんの眉がぴくりと動いた。 「なんで?」
last updateLast Updated : 2026-10-13
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第五話 私の人生は、私のもの
帰りの新幹線。 窓の外を流れる真っ暗な景色を眺めながら、私はふと考えた。 ……私、何のために生きてるんだろう。 仕事を頑張って。 人に気を遣って。 好きな人のために尽くして。 頼まれたら断れなくて、嫌なことを言われても笑って。 寂しくても、相手が忙しいなら我慢して。 少しでも好きになってもらいたくて、綺麗になる努力もした。 料理も覚えた。 仕事も増やした。 そしてたくさん貢いだ。 好きな人が喜んでくれる顔を想像するだけで、どんなに面倒な作業だって楽しかった。 でも。 「……なんか、疲れちゃったなあ」 窓に映った私は、ひどい顔をしていた。 せっかく朝から綺麗に巻いた髪も、いつの間にか崩れている。 お気に入りのリップも落ちていた。 ……ああ、もう。 今日は本当に、何もかもうまくいかない。 誰かの役に立ちたかった。 好きな人を幸せにしたかった。 それだけだったのに。 誰も、私のためには頑張ってくれない。 ……いや。 それは、違うのかもしれない。 友達はみんな優しい。 家族も私を大切にしてくれている。 職場でも、助けた相手から感謝されることはあった。 私を好きだと言ってくれる人だって、いた。 なのに。 私が好きになる男の人は、どうしてみんな。 私のことを、当たり前みたいに扱うんだろう。 「……私、男見る目なさすぎない?」 思わず、小さく笑ってしまった。 十五年間片思いした幼馴染。 ちょっと気になっていた生意気な後輩。 一年間、大切にしてきたホスト。 ……うん。 なかなかの顔ぶれである。 全員、顔だけはものすごくいい。 我ながら、面食いなのは認めざるを得ない。 ただし。 性格に少々……いや、かなり問題がある。 しかも、三人とも私に甘えてばかりだ。 どうしてだろう。 私はただ、好きな人と仲良くしたかっただけなのに。 一緒に笑って、くだらない話をして。 たまには甘えたり、甘えられたりして。 お互いのことを大切にしながら、穏やかに過ごしたかった。 そんなに難しいことだったのだろうか。 「……もう、どうでもいいや」 ぽつりと呟いた。 その言葉が、妙にしっくりきた。 何も考
last updateLast Updated : 2026-10-13
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第六話 都合のいい女、卒業します!
『この前は言いすぎた。今日の夜あいてる?』 スマートフォンに届いたメッセージ。 送り主は、九条怜。 十五年間、私が一途に片思いしてきた幼馴染だった。 「……あれ?」 珍しい。 怜くんから誘ってくるなんて、いったい何年ぶりだろう。 いつもは私から連絡して、予定を聞いて、ご飯に誘って。 それでも「忙しい」の一言で断られることが多かったのに。 ……ふうん。 今さら、どうしたんだろう。 そんなことを考えていると、続けて通知が届いた。 『先輩、少し話せますか』 伊織くんだ。 ……なにを今さら。 そして、三件目。 『無理しすぎてない? 今日電話するわ』 陽向くん。 その名前を見て、私はしばらく画面を眺めた。 ……ああ。 この人も、ちゃんと心配してくれることはあるんだよなあ。 普段はあんなにそっけないくせに。 私が離れそうになると、急に優しくなる。 なんというか。 ……本当に、ずるい男である。 「……ふふっ」 思わず笑ってしまった。 つい数日前の私なら、きっと大喜びしていただろう。 怜くんからのお誘いなんて、予定を全部キャンセルしてでも飛んでいったに違いない。 伊織くんから連絡が来れば、何かあったのかと心配して。 陽向くんから電話すると言われれば、お風呂も後回しにして待っていたはずだ。 ……うん。 我ながら、健気すぎる。 ここまでくると、ちょっとした才能ではないだろうか。 ただし。 その才能を発揮した結果が、あの散々な一日である。 「……もう、いいかなあ」 ぽつりと呟いた。 別に、三人のことが嫌いになったわけじゃない。 怜くんには、たくさんお世話になった。 伊織くんと過ごす時間は、本当に楽しかった。 陽向くんに救われたことだって、何度もある。 大好きだった。 それは、間違いない。 でも。 好きだからって、これからも一緒にいたいかと聞かれたら、答えはもう違った。 私はずっと、彼らのことを理解しようとしてきた。 不器用なところも、意地悪なところも、素直じゃないところも。 その人なりの優しさがあるんだって、必死にいいところを探してきた。 だけど。 ……そもそも、どうして私ばっかり理解しようとして
last updateLast Updated : 2026-10-13
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第七話 十五年間、俺だけを好きだったはずなのに
「……は?」 九条怜は、スマートフォンの画面を見つめたまま固まっていた。 『このアカウントは存在しません』 何度確認しても、表示は変わらない。 電話も繋がらない。 メッセージも送れない。 ……おかしい。 つい一週間前まで、毎日のように連絡してきていたはずだ。 『怜くん、おはよう! 今日もお仕事頑張ってね!』 『ちゃんとご飯食べた? 無理しないでね!』 『ねえねえ、今度一緒にご飯行かない?』 くだらない内容ばかりだった。 仕事中だろうがお構いなしに送られてくるメッセージに、何度呆れたことか。 返信しなくても、翌日にはまた新しいメッセージが届く。 だから、特に気にしていなかった。 ……なのに。 「……なんなんだよ、あいつ」 怜は苛立たしげに前髪をかき上げた。 先日、会社まで忘れ物を届けに来た小春に、少しきついことを言ったのは覚えている。 確かに、言いすぎたかもしれない。 だが、あいつも笑っていた。 『ごめんね! もう来ないから!』 いつものように、にこにこと。 だから、そこまで気にしているとは思わなかった。 ……いや。 そもそも、あいつが本気で怒るところなんて、ほとんど見たことがない。 何を言っても、最後には笑って許してくれる。 どれだけ冷たくしても、翌日には何事もなかったように話しかけてくる。 それが、桜庭小春という女だった。 「……はあ」 大きなため息をつき、怜はスマートフォンを伏せた。 まあ、いい。 どうせ、少し拗ねているだけだろう。 そのうち、また連絡してくる。 ……そう思っていた。 ところが。 翌日になっても、その翌日になっても。 小春からの連絡は、一通も届かなかった。 さすがにおかしいと思い、彼女の勤め先に確認したところ。 『桜庭はすでに退職しております』 返ってきたのは、予想もしない言葉だった。 「……退職?」 怜は眉をひそめた。 あいつが? あんなに仕事が好きで、毎日楽しそうに働いていたあいつが? 以前、小春は笑いながら言っていた。 『私ね、仕事も恋愛も大好きなの! だから毎日めちゃくちゃ忙しいけど、すっごく楽しい!』 そう言って、目を輝かせていた。 いつだって忙しそうで。 そ
last updateLast Updated : 2026-10-13
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第八話 俺のこと、好きだったんじゃないんですか?
「……先輩?」 同じ頃。 瀬名伊織は、オフィスの一角で立ち尽くしていた。 目の前にあるのは、きれいに片づけられたデスク。 そこは、つい先日まで桜庭小春が使っていた席だった。 「……え、マジで?」 最初は、何かの冗談だと思った。 だって、あの先輩だ。 いつもにこにこしていて、何かと世話を焼いてきて。 ちょっとからかえば、すぐに頬を膨らませる。 『もう! 伊織くんって本当に意地悪!』 ……ああ。 あの反応、結構好きだったんだけどな。 「……辞めたって、マジなんすか?」 近くにいた同僚に尋ねると、あっさり頷かれた。 「うん。桜庭さん、もう退職したよ」 「……へえ」 伊織は小さく笑った。 ……いやいや。 ちょっと待て。 普通、辞めるなら一言くらい言わない? 俺、一応あの人と結構仲よかったんだけど。 映画に行く約束だってしてたし。 毎日、くだらない話もしてたし。 ……それなのに。 「……俺には何も言わないんだ」 ぽつりと呟いた。 こちらから送ったメッセージには、返信がない。 電話も繋がらない。 SNSも見つからない。 ……はあ? 「……なにそれ」 伊織は苛立たしげに舌打ちした。 いつもなら、どれだけ素っ気なくしても向こうから話しかけてきた。 頼んでもいないのに差し入れをくれたし、仕事で困っていれば真っ先に助けてくれた。 少しくらい意地悪を言っても、すぐに笑って許してくれた。 なのに。 たった一度、仕事のことで揉めたくらいで。 ……いや。 たった一度? あの日のことを思い出す。 『俺、関係ないですし』 そう言った自分に、小春はどんな顔をしていただろう。 『伊織くんは、そう思うんだね』 ……ああ。 そうだ。 あのとき、彼女は笑っていた。 いつものように、にこにこと。 でも。 あの笑顔は、少しだけ違っていた気がする。 「…………」 伊織は、無意識に隣のデスクを見た。 そこには、缶のミルクティーが置いてあった。 小春が好きだった銘柄。 彼女は甘いものが好きで、これを渡すと毎回大げさなくらい喜んでいた。 『わあ! ありがとう! 伊織くん優しい!』 ……ほんと、単純な人だった。 ちょ
last updateLast Updated : 2026-10-13
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第九話 年下ホスト、情緒崩壊につき大炎上
そして、大阪。 深夜三時。 「はあああい! どうもおおお! 朝比奈陽向でえええす!」 配信開始から、わずか三秒。 陽向は画面に向かって、勢いよく両手を振った。 「いやああ! 今日も最高! 人生楽しい! みんな生きてる!? 俺は生きてるうう!」 ……明らかに、おかしかった。 朝比奈陽向、二十二歳。 普段から自由奔放で、気分屋で、テンションの振れ幅が大きい男ではあった。 しかし。 今日の彼は、いつにも増して様子がおかしい。 『え、うるさwww』 『今日どうしたん?』 『テンションバグってるwww』 『開始3秒で情緒終わってて草』 「いやいやいや! 終わってない! むしろ始まってる! 俺の人生、今始まったから!」 『何がwww』 『何の話?』 「知らん! 俺にもわからん!」 陽向は突然、腹を抱えて笑い出した。 「アッハハハハ! 意味わからん! ほんま意味わからんわ!」 ……そう。 意味がわからなかった。 小春からの連絡が、途絶えて一週間。 何度電話しても繋がらない。 メッセージも届かない。 毎日、好きだの会いたいだの言ってきた女が、突然いなくなった。 ……いやいやいや。 おかしくない? 普通、そんな急に消える? しかも、一年間やで? 一年間! 「なあ! 一年って何日か知ってる!?」 『365日』 『急に算数始まった』 『うるう年なら366日』 「そう! 三百六十五日! つまり一年! いや当たり前やけど! アッハハハ!」 『?????』 『何言ってんのwww』 『誰か通訳して』 『今日ほんまに怖い』 「いや、聞いて! 聞いてって! 例えばやで!?」 陽向は画面にぐっと顔を近づけた。 「毎日毎日、好き好き好き好き言うてくる女がおったとするやん?」 『急に女の話www』 『なになに?』 「いや、姫とかそういうんちゃうねん! いや姫やけど! でも違うねん!」 『どっちwww』 『もう寝ろwww』 「そいつがさあ! 急に! パッ! 消えたらどう思う!?」 陽向は両手を広げた。 「パッ! やで!? パッ! 人間ってそんな簡単に消える!? 忍者なん!?」 『忍者wwww』 『女に飛ばれたん?』 『担当が姫に飛ばれて発狂してるw』
last updateLast Updated : 2026-10-13
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