All Chapters of もう、男に尽くすのはやめる! 〜愛するのをやめたら、今さら3人の男たちに追いかけられました〜: Chapter 11 - Chapter 16

16 Chapters

第十話 沖縄で幸せ満喫中なのに…

南の島の、小さなカフェ。「ん〜〜〜っ! 幸せすぎる〜〜っ!」私は目の前に並んだパンケーキを見て、思わず頬を緩めた。青い空。透き通ったエメラルドグリーンの海。心地よい潮風。そして、たっぷりの生クリームに、色とりどりのフルーツが添えられた、ふわっふわのパンケーキ。……最高。控えめに言って、人生最高である。「んん〜っ! 美味しいっ!」一口食べるだけで、幸せが全身に広がっていく。ああ、私、こういう時間が大好きだったんだ。可愛いカフェを巡ったり。おしゃれを楽しんだり。美味しいものを食べたり。綺麗な景色を眺めたり。……なのに。「……私、今まで何してたんだろ」ぽつりと呟いた。思い返せば、ここ数年。私の頭の中は、いつだって男の人のことでいっぱいだった。(今日は連絡くれるかな?)(私のこと、好きなのかな?)(どうして冷たいんだろう?)(もっと頑張ったら、好きになってもらえるかな?)……ああ、もう!考えているだけで疲れてくる。特に私は、一度好きになったらとことん尽くしてしまうタイプだ。相手が忙しいと言えば予定を合わせるし、疲れていると言えば励ますし、落ち込んでいたら放っておけない。なんなら、相手が幸せそうにしているだけで自分まで幸せになる。それ自体は悪いことじゃないと思う。人を愛することは、私にとって何よりも楽しいことだから。……ただし。(なんで私ばっかり頑張ってたんだろ?)問題は、そこなのだ。私は恋人が欲しかったのであって、誰かのお母さんになりたかったわけではない。ましてや、無償で働く専属カウンセラーでもなければ、都合のいい支援者でもない。好きな人を幸せにするのは楽しい。でも。私だって、誰かに幸せにしてもらいたかった。「……うん。もう、いいや!」私は大きく伸びをした。過去の恋愛に後悔はない。あれだけ全力で恋をして、泣いて、笑って、悩んで。普通なら経験できないようなことも、たくさん経験した。おかげで可愛くなったし、仕事も頑張れたし、以前よりずっと自信がついた。だからこそ、もう十分なのだ。(これからは、自分のために生きようっと!)可愛い服を着て。美味しいものを食べて。好きな仕事をして。行きたい場所に行って。そして、いつか素敵な人に出会ったら、今度こそお互いに大切にし合える恋がしたい。
last updateLast Updated : 2026-10-13
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第十一話 衝撃の事実

『ええと、確か……朝比奈さん?』 「…………」 私は、ゆっくりと天を仰いだ。 ……ああ。 終わった。 よりにもよって。 よりにもよって、あの男。 (……ヒナタくん!?) 大阪のホスト。 十か月間、私が通い続けた男の子。 世界で一番顔が好みで。 世界で一番不器用で。 そして、世界で一番私を振り回した男。 あの、ヒナタくんである。 『なんだか、ものすごく必死だったのよ』 「……え?」 『泣きながら、あなたに会えないかって』 「…………」 ……泣いてた? ヒナタくんが? あの、いつも偉そうで、口が悪くて、素直じゃない男の子が? 『とにかく、一度だけ話がしたいって何度も言ってたわ』 「…………」 胸の奥が、一瞬だけちくりと痛んだ。 ……そうなんだ。 私がいなくなって、そんなに取り乱してるんだ。 あんなに愛情表現が苦手だったのに。 あんなに私を突き放していたのに。 ……でも。 (……いや、待って) ちょっと待ってほしい。 感傷に浸っている場合ではない。 「お母さん、なんでヒナタくんが実家のこと知ってるの!?」 『え? あなたが教えたんじゃないの?』 「…………」 ……あ。 そういえば。 以前、地元の話をしたとき。 『うちの実家、この辺りなんだよね〜』 なんて、何気なく話した記憶がある。 ……あるけど! (……いや、場所までは教えてないんですけど!?) まさか。 まさかとは思うけれど。 あの子。 その情報だけで、探し回ったってこと? (……え、こわっ!) いや、好きだったけど! すっごく好きだったけど! だからって、さすがに行動力がありすぎません!? 東京まで会いに行くとは口で言っていたけど、今まで自分から会いに来てくれたことなんて、一度もなかったじゃん! なんで今になって、そんなに行動力を発揮してるの!? 『それでね、あまりにも必死だったから、お母さんも可哀想になっちゃって』 「…………」 ……ん? 『あなたの電話番号、教えておいたわ』 「…………」 ……え。 「……お母さん?」 『なに?』 「……今、なんて?」 『だから、電話番号を教
last updateLast Updated : 2026-10-13
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第十二話 母は、知らない男まで家に上げる

一方、その頃。 都内某所。 小春の実家の玄関先で、九条怜は三度目のインターホンを押すかどうか迷っていた。 右手には、紙袋。 中身は、小春の好きな焼き菓子だった。 いつもなら、こんなものを持ってくる必要はない。 十五年も付き合いのある家だ。 手ぶらで来て、勝手に小春の部屋を覗いて、そこにいる本人に「何しに来たの」と笑われる。 それが、当たり前だった。 ……つい、この間までは。「……何やってんだ、俺」 小さく呟いた、そのとき。 がちゃり。「あら、怜くん!」 扉を開けた小春の母が、驚いた顔で彼を見上げた。「どうしたの? こんな時間に」「……小春、帰ってきてませんか」「あの子、まだ旅行中よ」「……そうですか」 わかっていた。 わかっていたのに。 もし帰っていたら。 もし、いつもの顔で玄関に出てきたら。 そんな期待を、どこかで捨てきれなかった。「連絡、つかないの?」「……ええ」「怜くんとも?」 怜は眉を寄せた。「……とも?」「あ、ううん。とりあえず入って。今、お茶を淹れたところだから」「いえ、今日は——」「ちょうど、小春の会社の方もいらしてるの」 怜の足が、止まった。 会社の方。 あの子が辞めた、会社の。「……誰ですか」「伊織くんっていう、後輩の子」 母は、何の警戒もなく微笑んだ。「とても感じのいい子よ。小春を心配して来てくれたの」 ……感じのいい、後輩。 怜は黙って靴を脱いだ。 さっきまで断ろうとしていたお茶を、今度は断る気になれなかった。 リビングの扉が開く。 ソファに座っていた青年が、こちらを向いた。 白いシャツ。 長い指に挟まれたティーカップ。 整った顔に、柔らかな微笑み。「あ、どうも」 青年は、すぐに立ち上がった。「突然お邪魔して、すみません」「こちら、小春の幼馴染の怜くん」 母が紹介すると、青年の笑みがわずかに変わった。「……へえ」 ほんの一瞬。 値踏みするような視線が、怜の顔をなぞる。「あなたが、怜さんですか」 怜は紙袋を握り直した。「……俺のこと、知ってるのか」「ええ。先輩から、少し」 伊織は、にこりと笑った。「よく、お世話をしている方だって」 ……ぴくり。 怜の眉が動いた。 それは、間違っていなかった。 間違っていないからこそ。
last updateLast Updated : 2026-10-13
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第十三話 十五年、何をしていたんですか

「ちょっと待っててね。お菓子も出すから」 小春の母が、キッチンへ消えた。 食器の触れ合う音。 湯の沸く音。 そして、リビングには。 初対面の男が、二人。「……お前も、小春を探してるのか」 先に口を開いたのは、怜だった。 伊織はティーカップを置く。「ええ。何か問題でも?」「実家まで来るほどの用か」「それは、こちらの台詞では?」 にこり。 伊織の笑みは、崩れない。「幼馴染の方なら、居場所くらいご存じなのかと思いました」「……知ってたら、ここには来てない」「ですよね」 わざわざ、確認するように頷く。 怜は目を細めた。「会社の後輩ごときが首を突っ込むな」 伊織は、小さく笑った。「先輩と同じ会社にいた人間ですよ。最近のことなら、あなたより知っているかもしれません」「……何が言いたい」「別に」 少しだけ、身を乗り出す。「ただ、幼馴染ってだけで、そんなに偉いんですか?」 沈黙。 怜の指が、膝の上で止まった。「……お前」「十五年も一緒にいたんですよね」 伊織は、首を傾げた。「その間、先輩に何か言ってあげたんですか?」「何か、って」「好きだとか。大事だとか」 その言葉に。 怜は、すぐに答えられなかった。 伊織の笑みが、少し薄くなる。「……言ってないんですね」「お前に話すことじゃない」「そうですか」 伊織は、頬杖をついた。「俺なら、あんなに一生懸命好かれたら、もう少し優しくしますけど」 がたり。 椅子が、わずかに鳴った。「……喧嘩、売ってるのか」「まさか」 伊織は、怜をまっすぐに見た。「先輩が、可哀想だなと思っただけです」 怜の脳裏に、最後に見た小春の顔が浮かぶ。 会社まで、忘れ物を届けに来た日。 小さな紙袋を胸に抱えて。 周囲に気を遣って、廊下の端に立っていた。 あのとき、自分は。『……会社まで来なくていい』 そう言った。 小春は笑おうとしていた。 けれど、うまく笑えていなかった。 ……それでも。 怜は、何も言い直さなかった。「……お前は」 低い声で、怜が言う。「そんなに偉そうに言うなら、あいつが会社を辞めたとき、お前は何をした?」 今度は、伊織が黙った。伊織の指先が、カップの取っ手に触れた。持ち上げはしなかった。「……事情は、聞いてるんですか」「全部じゃ
last updateLast Updated : 2026-10-13
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第十四話 先輩は、俺にも笑っていました

 テーブルに並べられたのは、怜の持ってきた焼き菓子だった。「あら、これ。小春が好きなお店のじゃない」 母が、紙袋を覗いて笑う。「よく覚えてたわね、怜くん」「……昔から、好きだったので」「そうそう。あなたと半分ずつ食べるって、よく買ってきてたわ」 怜は、目を伏せた。 小春は、いつも自分に大きい方を渡していた。『怜くん、甘いの好きでしょ』 そう言って。 自分だって、好きなくせに。 伊織が、焼き菓子を一つ見つめる。「……これ、俺もいただいたことがあります」「あら、会社に持っていってたの?」「はい。残業していたときに」 怜が顔を上げた。 伊織は、その視線に気づいた上で続ける。「俺の分だけ、別に取っておいてくれていました」「小春らしいわねえ」「……ええ」 伊織の声が、少し柔らかくなった。『伊織くん、夕飯まだでしょ』 机の端に置かれた、小さな包み。『甘いの食べて、ちょっと休憩しなよ』 あのとき、自分は何と言っただろう。『先輩、俺を甘やかすの好きですね』 そんなふうに、からかった。 嬉しかったくせに。 それを、そのまま伝えるのは癪だった。「……でも最近、元気がなかったから」 母が、ぽつりと言う。 二人が、同時に顔を向けた。「元気が?」「ええ。電話しても、仕事の話をあまりしなくなって」 伊織の肩が、わずかに固まる。「怜くんの話もしなくなったし」 今度は、怜が動かなくなった。「前はね、何かあると話してくれたのよ。怜くんが忙しそうだから何か作ってあげようかな、とか。後輩の子がよく気づいてくれるんだ、とか」 母は、二人の顔を見た。「あなたのことだったのね、伊織くん」「……たぶん」「嬉しそうだったわよ」 伊織は、唇を引き結んだ。 怜は、それを見逃さなかった。 けれど、何も言えなかった。 自分も、今。 同じような顔をしている気がしたから。「だから、心配だったの。でも——」 母の表情が、ふっと明るくなる。「さっき電話したら、すごく楽しそうだった」 怜の喉が、小さく動く。「……さっき?」「うん。海が綺麗で、パンケーキが美味しいんですって」 伊織は、ゆっくり息を吐いた。「……そうですか」「明日も予定があるみたい。久しぶりに、あんなに弾んだ声を聞いたわ」 よかった。 無事だった。 元
last updateLast Updated : 2026-10-13
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第十五話 お前にだけは、負けたくない

 小春の実家を出ると、空はすっかり暗くなっていた。 門の前で、怜が足を止める。 数歩後ろには、伊織。 母の前では、最後まで礼儀正しくしていた二人だった。 けれど。 玄関が閉まった途端。「……俺なら優しくする、だったか」 怜が、振り返った。 伊織は、眉を寄せる。「まだ、その話をするんですか」「気になっただけだ」「あなたこそ、十五年も——」「俺は、間違えた」 伊織の言葉が、止まった。 怜は、自分でも驚くほど静かな声で続けた。「来なくていいって言った。あいつが傷ついたのも、見てた」 言葉にすると。 思っていたより、ひどかった。「でも、また来ると思ってた」 そうだ。 腹を立てても。 少し泣いても。 最後には、小春の方から話しかけてくる。 それまで、待っていればいい。 ……そんなことを、考えていた。 伊織は、視線を逸らした。「……先輩は」 しばらくして、口を開く。「俺にも、笑ってました」 怜は、黙って聞いた。「からかうと、怒って。それでも次の日には、普通に話しかけてくれて」 街灯の下で、伊織の指が握られる。「だから、嫌われてないと思っていました」「……そうか」「会社のことも。先輩なら、説明すればわかってくれるって」「説明したのか」 伊織は、答えなかった。 その沈黙だけで、十分だった。 怜が、短く息を吐く。「似たようなもんだな」「一緒にしないでください」「俺も、されたくない」 即答だった。 二人は、しばらく無言で睨み合った。 反省している。 後悔も、している。 だからといって。 目の前の男と、仲良くできるわけではなかった。「……あなたは、先輩に何を言うつもりですか」 伊織が尋ねる。「お前に教える必要はない」「でしょうね」「お前は?」「教える必要、あります?」「ないな」 また、沈黙。 ……驚くほど。 会話が、噛み合わない。 ただ、一つだけ。 同じことを考えていた。 小春に、会いたい。 今度こそ、ちゃんと話したい。 そして。 この男より先に。「……連絡が来ても、抜け駆けしないでくださいね」 伊織が言った。 怜は、露骨に嫌そうな顔をした。「何で、お前の許可が要る」「要りませんけど」「なら、聞くな」「……ほんと、感じ悪いですね」「お互い様だろ」
last updateLast Updated : 2026-10-13
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