海水が耳に流れ込んだ瞬間、世界は完全に静まり返った。ヨットの上から聞こえていた笑い声も、冷やかす声も、智則の気のない声も、すべて冷たい海水に遮られた。私は泳げない。それなのに、海へ飛び込んだ瞬間、不思議と後悔はなかった。胸が押し潰されるように痛み、四方八方から暗闇が押し寄せてくる。私は本能的にもがき、必死に腕を動かしたが、指先は何も掴めず、ただ虚しく水をかくばかりだった。やがて、誰かが浮き輪を投げ込んできた。巡視艇の乗員に引き上げられたとき、私は全身を震わせていた。薄いキャミソールが肌にぴったりと張りつき、まるで剥がせない皮膚のように冷たく濡れていた。ふくらはぎには船べりで擦った長い傷ができ、傷口に海水がしみて、目の前が真っ暗になるほど痛んだ。ようやく智則がヨットから降りてきた。一歩ずつ近づいてくる彼を見つめながら、私は愚かにも、かすかな期待を抱いてしまった。たった一言でもいい。痛くないか、寒くないかと聞いてくれるだけでよかった。しかし、彼は私の前を素通りすると、真っ先に自分の上着を芙美乃の肩にかけた。芙美乃は彼の隣に立ち、少し青ざめた顔で小さく口を開いた。「智則、私、何か悪いことしちゃったのかな?あの人が海に飛び込んだとき、本当に怖かったの」智則は芙美乃にかけた上着のボタンを丁寧に留めながら、優しいとさえ思えるほど穏やかな声で答えた。「君のせいじゃないよ」そう言ってから、彼はようやく私に目を向けた。その眼差しに心配の色など微塵もなく、ただ楽しい気分を台無しにされた苛立ちだけが滲んでいた。「水城依緒(みずき いお)、もう気は済んだか?」海水でむせたせいで喉がひどく痛み、私は声を出すことさえできなかった。彼は二歩ほど近づくと、ずぶ濡れで惨めな姿の私を見て眉をひそめた。「これだけ大勢が見てる前で海に飛び込んで、いったい誰に何を見せつけたかったんだ?」私はゆっくりと指先に力を込め、体にかけられた保温シートを握り締めた。彼の目には、私が屈辱に耐えきれず、逃げ場を失って海へ飛び込んだようには映っていないのだ。ただ駄々をこねているだけ。わざと彼に恥をかかせようとしているだけなのだ。彼の後ろでは、仲間たちも次々とヨットから降りてきて、そのうちの一人が口笛を吹いた。「水城さん、な
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