オフィスで、蓮司は湊から受け取った事後処理の報告書を念入りに確認し、ようやく肩の荷が下りた。「今回の拉致の件は、うまく処理してくれたな。志乃も芹奈も何も気づいていない。芹奈の脚も無事に陽向へ移植できた。これで美羽も俺も安心だ」湊は眉をひそめ、黙っていられず口を開いた。「御堂社長、いくら白石さんが大切でも、奥様ではありません。奥様との間にはお嬢様もいるんです。まだ7歳ですよ。白石さんを悲しませたくないというだけで、お嬢様の左脚を切断させ、その脚を白石さんの息子さんへ移植させた。それで公平だと、本気で思っているんですか?」蓮司の目つきが冷たくなり、報告書を机に叩きつけた。「もういい!美羽を悪く言うな。片脚を失っただけだ。生活できないわけじゃない」湊は怒りを抑えきれず、蓮司を問い詰めた。「では、この先ずっと、奥様とお嬢様に真相を隠し通せるんですか?奥様とお嬢様が、自分たちは白石さんのために殺されかけたのだと知ったら、どうするおつもりですか?」蓮司は黙り込み、やがてスマホを取り出してトーク画面に目を落とした。表示されているのは、私が撮った、朝の挨拶をする芹奈の動画だった。その目からは何も読み取れなかった。「二人が気づくはずはない。うまく隠したからな。それに……」蓮司はスマホをしまい、迷いなく言い切った。「志乃も芹奈も、俺を愛している」自分の耳を疑った私は、怒りで全身が冷え切り、立っているのもやっとだった。車椅子の芹奈も口元をぎゅっと押さえ、目を真っ赤にしていた。芹奈は私に聞きたかったのだ。お母さん、お父さんが言っていたことは本当なの?お父さんは本当に、ほかの人のために芹奈の脚を切ったの?芹奈は今も、悪い人たちに押さえつけられたときの感覚を忘れていない。痛くて、痛くて、ずっと叫び続けた。「お父さん、芹奈を助けて!芹奈の脚を切らないで!」けれど、痛みで気を失うまで、お父さんは現れなかった……
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