美羽は怒りに任せ、手近にあった花瓶をつかむと、湊めがけて投げつけた。「冗談じゃないわ!法律を破ったのはあなたたちでしょう。どうして私まで責任を取らなきゃいけないの?勝手にやったのはそっちでしょう。私が無理やりやらせたとでも言うの?」蓮司は呆然と美羽を見つめた。このとき初めて、彼女の本性を思い知った。「美羽!」蓮司の怒声に我に返った美羽は、目に涙を浮かべ、その袖をつかんだ。「蓮司、さっきは取り乱してただけなの……刑務所になんて入りたくない……お願い、何とかして……」蓮司の表情は何度も変わり、最後には嫌悪もあらわに美羽の手を払いのけた。「美羽、助けてほしいなら、今すぐ俺の前から消えろ!」美羽はオフィスを追い出されたが、不安は消えなかった。蓮司が自分だけ助かるために、美羽と湊にすべての罪をかぶせるのではないか。先ほどの言葉を思い出すほど、不安が募った。その夜、長いあいだ考えた末、美羽は思い切って逃げることにした。遠くへ逃げ、海外まで行ってしまえば、警察だって自分を捕まえられない。二度とこの国へ戻れなくても、陽向と二人でやり直せばいい。その日のうちに、美羽は蓮司から受け取った金をすべて持ち、一番早い便で海外へ逃げた。……裁判が始まるのは、1週間後だ。私は芹奈と海外を旅しながら、国内の動きを追っていた。代理人を務める弁護士はとても頼りになった。資料をすべて確認すると、短いメッセージを一つだけ送ってきた。【問題ありません】その弁護士は、業者が私のために選び抜いた腕利きだった。専門知識も経験も申し分ない。そのうえ、ネット上には私たちを支持する声があふれていた。裁判が始まる前から、結果は見えていた。一方、蓮司は湊を通じ、再び拉致犯たちに連絡を取った。蓮司と湊は、拉致犯たちと街外れのカフェで落ち合った。顔を合わせるなり、蓮司は一枚の小切手を差し出した。「2億円ある。これを持って海外へ消えろ」男は小切手をひらつかせ、嘲るように笑った。「2億円ぽっちで俺たちを追い払う気か?御堂社長、これじゃ話にならねえ。3人で6億円だ。入金を確認したら、すぐに海外へ消えてやるよ」蓮司は眉をひそめた。「これは交渉じゃない。命令だ!お前たちが俺に条件を出せる立場か!」男は少しも動じなかった。
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