レオノーレは、物心がついたときから前世の記憶を持っていた。前世の名は、九条静流。関西圏で広域に影響力を持つ、由緒ある極道の家系に生まれた。 九条家は、表向きは老舗料亭や書道の家元などと文化的につながる顔を持ちつつ、裏社会を牛耳っていた。 だが父は、非合法活動からは足を洗って警備会社を創業し、それを大企業へと成長させた人物だった。 素行不良の若者や元受刑者も受け入れる包容力のある会社。その警備要員訓練の中核が、総合格闘技──MMA(Mixed Martial Arts)である。 打撃、投げ、寝技。すべてを自在に組み合わせる総合格闘技は、単なる暴力ではなく、法の枠内での「制圧の技術」だった。 警備要員として入社した者には、もれなく総合格闘技のブートキャンプという名の新人研修――特訓が待っている。 これは軍隊の新兵訓練のようなもの。真の強さの何たるかが身に染みた者らは、暴力をひけらかそうなどという発想は消え失せる。 極道の家系となると、それだけで難癖をつけて暴力でマウントを取りに来る者が後を絶たない。名のある極道の家系ならなおさらだ。 静流は、総合格闘技を徹底的に叩き込まれた。 極道の家の娘という宿命と、母方が合気道の名門道場であったという素地もあって、彼女の技は非凡だった。 ☆ ★ ☆ 自宅周辺を縄張りとする女ヤンキーのグループ、レディースなどにも有名どころが多い。暴力団の娘などもいる。ときには、男のヤンキーどものことも……。 静流が通う高校の昼休みの校舎裏。 生徒たちがひそひそと声を潜める。 「またや……《姫影連》や……」「次はうちの学校らしいで。あの子が狙われてるんやて……」「うちは進学校で、そんな人おらんやろ。誰?」
最終更新日 : 2026-10-21 続きを読む