All Chapters of 密かな復讐のホールインワン: Chapter 31 - Chapter 33

33 Chapters

31話. 揺らぐ証拠と反撃

ドンッ――! 元麻布のペントハウスの重厚な玄関扉が、壊れんばかりの勢いで開いた。目を真っ赤に血走らせた久我雅臣がリビングへ踏み込んできた。その手には私立探偵から送られた写真を印刷したA4用紙の束が握られていた。 紗良はシルクのガウンをまとい、ソファで優雅に温かい紅茶を飲んでいた。 「白石紗良、この汚らわしい女が!」 雅臣が怒鳴り、写真の束を紗良の顔めがけて投げつけた。 バサバサッ――! 隼人とテラスで口づけを交わすぼやけたシルエット写真が、紗良の足元に散らばった。 「これは何だ! 俺の金で食っているくせに、若いプロの男と遊び歩いていやがるのか!」 雅臣は紗良の胸ぐらをつかもうと手を伸ばした。 パシッ! 紗良はティーカップを置き、その手首を払いのけた。落ちた写真には確かに自分がいたテラスが写っていた。彼女は一枚拾い、顔の写った部分を確かめた。 「騒がないで、久我雅臣。その汚い手をどけなさい」 「何? 汚い手だと? この写真を見てもそんな口が利けるのか!」 紗良はふっと乾いた笑いを漏らした。床の写真を一枚、尖った靴先で軽く踏みつける。 「暗がりで望遠レンズを使って人影を撮っただけで、私に罪を着せる気? これが私だという証拠はどこにあるの?」 「何だと!?」 「昨日の未明、私はアルファインベストの石原誠司社長と顧問弁護士団と一緒に南青山のクラブで新規ファンドの打ち合わせをしていたの。望むなら、石原社長と大手法律事務所のパートナー弁護士たちとの会議の録音を今すぐ再生してあげましょうか?」&nb
last updateLast Updated : 2026-10-24
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32話. 借名帳簿の実態と30億円の罠

「お前……どうして手形の満期を知っているんだ!?」 雅臣は閉まった寝室の扉に向かって叫んだ。投資審査に提出した満期一覧だった。紗良には会社の仕事などわからないと言って、見せたことさえなかった数字だ。自分の知らないところで誰かが資料を読んでいる。そう思うと、再びドアノブをつかんだ。 寝室の扉がまた開いた。隙間から現れた紗良の唇に、残酷な冷笑が浮かんでいた。 「あなたが投資を受けようとして提出した資料に書いてあったじゃない。私には会社のことがわからないと言っても、その数字まで消したわけじゃないのね」 紗良は腕を組み、雅臣を冷たく見下ろした。 「銀行も他人名義の取引と契約違反を調べたわ。投資が一件取り消された程度の問題じゃない。期限の利益喪失、EOD通知が明日の午前9時に予定されているから、財務部に聞いてみなさい」 「あり得ない……! なぜ石原社長が投資を取り消す!? チャリティー大会で契約書に判を押すはずだったんだぞ!」 雅臣は頭をかきむしり、絶叫した。 「久我雅臣。ペーパーカンパニーを3社も作って粉飾決算をしていた、あの腐った帳簿。石原社長はもう全部確認したわ」 雅臣は莉香の名前ではなく、先に石原誠司への罵倒を吐いた。紗良は彼が帳簿そのものを否定するか聞いていた。取引がなかったとは言わない。問題にしているのは、誰が帳簿を見たかだけだった。 「誰が……誰がその帳簿を石原社長に渡したんだ!? どこの野郎だ!」 紗良は送金の日付を一つ口にした。雅臣は黙り込んだ。誰から受け取ったのか答えるつもりはない。まだ録音を回収しなければならない莉香へ、彼の疑いをわざわざ向ける理由もなかった。 その瞬間、
last updateLast Updated : 2026-10-24
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33話. パッティングマットの上の背徳の吐息

午後11時、南青山の静かなマンション。柔らかな照明がともるリビングの床には、緑色の人工芝のパッティングマットが長く敷かれていた。 カチャ。紗良が電子錠を開けて入ると、シャワーを終えて黒いガウンだけをまとった隼人が、濡れた髪をかき上げながら迎えた。たくましい胸と鎖骨から、ほのかなシダーウッドの香りが漂う。 「久我雅臣はどうでしたか?」 隼人はワイングラスを渡しながら低く尋ねた。紗良は受け取って一口飲み、微笑んだ。 「会社からの電話のおかげで、ひとまず出ていったわ。写真への疑いが晴れたわけじゃないけど。帳簿が渡ったと知ったから、まず莉香を捜しに行くでしょうね」 紗良は言葉を止め、グラスを置いた。 「もし写真に顔がはっきり写っていたら、どうなっていたかしら」 来る途中では会社の状況から説明するつもりだった。けれど隼人に会った途端、自分の顔がはっきり撮られていた場合のことが先に浮かんだ。隼人は写真がぼけていてよかったという一言で話を終わらせず、続きを待った。 「今日は切り抜けられました。でも撮られたという事実は残ります」 隼人は紗良が置いたグラスをマットから離れた場所へ移した。差し出された手を紗良が握り、二人でリビングのパッティングマットの前へ進んだ。 「ひと息つきましょう。さっき言われたことと、今ここにいることを、少し切り離してみてください」 隼人は紗良の手に重みのあるパターを握らせた。そして自然に、その背後へぴったりと寄り添った。後ろから抱きしめる形の完璧なアドレス。たくましい下半身が紗良の臀部をしっかり支え、体温が伝わった。紗良の息が一瞬乱れた。 「はぁ……隼人、ここでパッティングのレッスンをするつもり?」 
last updateLast Updated : 2026-10-24
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