紗良の一喝に、桐谷莉香の顔が真っ赤になったり青ざめたりした。「な……あんた、インチキしたんでしょ?! プロのコーチを呼んで、何か仕組んだんじゃない!」莉香は憎々しげに叫んだが、返ってきたのはギャラリーの冷たい軽蔑だけだった。「桐谷莉香さん、マナーを守ってください。れっきとしたチャリティー大会ですよ」石原社長は莉香にはそれ以上構わず、紗良に握手を求めた。雅臣が割って入ろうとしたが、差し出された手の相手は変わらなかった。「白石さん、実に驚異的なショットでした。スイングスピードも下半身の回転も、まさに芸術ですよ」「ありがとうございます、石原社長。優秀なコーチのおかげです」紗良は上品に微笑み、ちらりと隼人を見た。隼人は黙って彼女の傍らに控え、雅臣を冷たい目で見下ろしていた。雅臣は屈辱をこらえ、作り笑いで割って入った。「はは、石原社長! 妻は今日は運がよかったようです。それより、今日のラウンドが終わりましたら、弊社・久我ホールディングスの50億円の不動産PF融資契約の件を……」「久我社長」石原社長の表情が一瞬で冷えた。「投資の話は後にしよう。今は白石さんと話したい。君は後ろで莉香さんの気持ちでも慰めてあげたまえ」石原社長はあからさまに雅臣を無視し、紗良の隣へ歩み寄った。雅臣は拳を白くなるほど握りしめた。50億円の契約を得るため妻を道化に仕立てたはずの舞台が、妻だけの独壇場に変わっていた。ラウンドが2番ホール、3番ホールへ進むほど、その差は残酷なまでに開いていった。すっかり平常心を失った莉香はティーショットを何度もOBゾーンへ飛ばし、雅臣もダフって面目を失った。一方、紗良は隼人の正確な距離計測とコース攻略を受け、バーディーを続けて奪い、周囲を圧倒した。1番ホールに続き、4番ホールもパーで終えた。茶店を目前にした5番ホールのグリーン。石原社長が紗良にそっと声をかけた。「奥様、久我ホールディングスの中核プラットフォームを、ご自身で企画なさったと聞きました。ゴルフの話はひとまず置いて、その資料を見せてもらえませんか?」紗良の唇に、冷たくも魅惑的な笑みが広がった。話す機会はできた。だが、紗良は好意を投資の約束と勘違いするつもりはなかった。「石原社長、腐った外殻に50億円を無駄遣いなさるおつもりですか? それとも本物の中身に投資なさいますか?」「
Last Updated : 2026-10-23 Read more