時を経ても君に会えず藤田裕志(ふじた ひろゆき)が事故で記憶を失ってからの二年間に、彼の幼馴染である秋元紗奈(あきもと さな)をなだめるため、私たちは七回も離婚した。
そして八回目の離婚は、紗奈の妊娠が理由だった。
「どうせ君には子供ができないんだ。紗奈に子供を産ませて、また復縁すればいい。子供の面倒も見させてやる」
離婚後も、彼はいつもの冷たい声でそう約束した。
その夜、紗奈が私を見るだけで吐き気がすると言ったばかりに。
彼は私に荷物を持たせ、大雨の中、一人で別の家に引っ越させた。
チンピラに襲われそうになり、怪我をして入院しても、彼は何も聞いてこなかった。
ある日、偶然、裕志が紗奈の妊婦健診に付き添っているのを目にした。
裕志が紗奈の腹を無造作に撫でながら、嘲るように言っているのが聞こえた。
「あいつが俺の記憶喪失が嘘だと知ったところで何だというんだ?今さら俺から離れられやしない。餌をやれば尻尾を振って戻ってくるさ」
それを聞いた私は静かに目をそらした。そのとき、風間遼(かざま りょう)からメッセージが届いた。
【深雪、結果はどうだった?】