別れても桜花爛漫妊娠が分かったその日、石原実桜(いしはら みお)は大雨の中で、木村紫雲(きむら しうん)がよく行くクラブへ向かった。
個室の前で、彼女は濡れた髪を拭きながら、彼が席を立ったときにサプライズを仕掛けようと準備した。
わずかに開いたドアの隙間から、笑みを含んだ男の声が漏れてきた。
「紫雲、あと一週間で実桜との結婚式だな。式でのサプライズはもう用意できたのか?」
「もう準備できてる」紫雲の冷ややかな声が酒気を帯びて響いた。「彼女に一生忘れられない思い出を残すつもりだ」
髪を拭く実桜の手が止まり、思わず口元に甘やかな笑みが浮かんだ。
紫雲と一緒に過ごした三年間、彼は本当に彼女を大切にし、骨の髄まで愛してくれた。
「ははは、兄さん、もし実桜が俺がお前を装ってずっと彼女を弄んでたって知ったら、その場で崩れ落ちて発狂するんじゃないか?」
「はは、実桜さんは絶対に想像できないだろうな。紫雲にはそっくりな双子の弟がいるなんて!」
「もし、自分が三年間ずっと彼氏の弟に弄ばれていたと知ったら……」