春風と雪は時期が違う「時田さん、一週間後、本当に偽装死サービスをご利用になるのですね?」
「はい」
「その際、時田さんのすべての身分情報は抹消されます。新しい身分で、新たな生活を再スタートされることになります……」
「分かりました。お願いします!」
時田年乃(ときた としの)は三条成那(さんじょう せいな)と結婚して三年。その三年間、彼にすっかり振り回され、尽くしてきた。
しかし、彼の初恋が帰国したことで、彼に対する愛情はとうに尽きていた。
年乃は偽装死によって彼のそばから逃げ出すことを選んだ。
だが、成那は決して彼女を手放すつもりはなかった。
彼女が逃げれば、彼は必ず追いかける。
「年乃、お願いだ……行かないでくれ!」
「三条、私はもう、チャンスを与えたのよ……」