私が去り、妻は狂った結婚式で、俺は妻の初恋の相手に酒を一杯差し出した。
だが、相手はそれを皆の前で叩き落とした。
「梨衣(りい)をお前に奪われたのは俺の負けだ。だからといってこんな大勢の前で俺を侮辱するのはないだろ!」
妻は烈火のごとく怒り、嫉妬深くて吐き気がする男だと俺を罵った。
彼女はウェディングベールを引きちぎり、席を立ったその男を追って行ってしまった。
俺は慌てて弁明しようと駆け寄ったが、車にはねられた。
妻は一度だけ振り返ったものの、その男を追う足を止めることはなかった。
俺は救急搬送され、命を取り留めたものの、その時、心のどこかが完全に死んだ。
意識を取り戻したあと、三年も連絡をしていなかった父親に電話をかけた。
「親父……縁談、受けるよ」