ルミエールー光の記憶ー

ルミエールー光の記憶ー

last updateHuling Na-update : 2025-12-07
By:  marimoKumpleto
Language: Japanese
goodnovel18goodnovel
Hindi Sapat ang Ratings
99Mga Kabanata
9.0Kviews
Basahin
Idagdag sa library

Share:  

Iulat
Buod
katalogo
I-scan ang code para mabasa sa App

 大手企業・如月グループの社長、如月結衣は、夫で副社長の悠真に裏切られ、秘書・美咲との不倫で名誉と信頼を失う。孤立した彼女を救ったのは、かつて競合だった東条玲央。記者会見で「守りたい人がいるのは悪いことですか」と公言した彼の一言が、結衣の運命を変える。 一方、陰で動く美咲と櫻井の陰謀を暴くのはホテル王・芹沢晃。やがて三者が手を取り、新たなリゾート計画《LUMIÈRE RESORT》が始動する。 裏切りと赦し、愛と再生――闇の中で“光”を選ぶ、女の復活の物語。

view more

Kabanata 1

第1話 『ルミエール ― 光の記憶 ―』 静寂の黄昏

秋の夕暮れ。

 東京湾岸にそびえる如月グループ本社ビル。

 その最上階――社長室のガラス越しに、沈みゆく陽光が斜めに差し込んでいた。

 オレンジに染まる街並みが遠くまで続き、群青に沈み始めた空との境界線が、まるで世界の呼吸を止めたかのように静寂を支配している。

 その静けさの中、デスクに座る一人の女性がいた。

 如月結衣――如月グループ代表取締役社長。

 三十歳を過ぎたばかりの若きトップ。

 切りそろえられた黒髪が肩にかかり、凛とした横顔には一分の隙もない。

 光沢を抑えたシルバーグレーのネイルが、資料をめくるたびに淡い反射を放ち、その手元に知性と冷徹を宿していた。

 対して、革張りのソファには結衣の夫であり、副社長の如月悠真が座っていた。 紺のスーツに身を包み、足を組みながらスマートフォンをいじるその姿には、どこか所在なさと退屈が滲んでいる。

 時折、画面から顔を上げ、結衣の横顔を盗み見る。

 しかし彼女は一切視線を返さず、ただ淡々と資料に目を通すだけだった。

 この部屋の空気には、言葉にできない「温度の差」があった。

 夫婦でありながら、交わることのない二つの時間。

 愛が冷えたというよりも――

 もはや互いの心が、別々の惑星に漂っているような距離感。

 結衣がふと、ペンを置いた。

 静寂を破るように、彼女の声が落ちる。

「……ねえ、悠真。」

 柔らかい呼びかけだったが、そこには見えない刃が潜んでいる。

 悠真は一瞬、身構えたように顔を上げた。

「ん?」

 結衣は、ゆっくりと彼を見た。

 切れ長の瞳が、わずかに細められる。

「来週の出張の件。ちゃんと確認してあるのよね?」

 その声に、悠真の喉が小さく鳴った。

 出張――その言葉を聞いた瞬間、心臓の奥がわずかに跳ねる。

 彼の頭に浮かんだのは、会社の業務出張ではなく、

 “もうひとつの旅”――美咲との約束だった。

「も、もちろんだよ。ホテルも、交通も、全部手配済みだ。」

 言葉を繕うように笑いながら答える。

 だがその笑顔の奥では、別の鼓動が脈打っていた。

 結衣は短くうなずき、再び資料に視線を落とす。

 その動作は、まるで「追及する価値もない」と言っているように見えた。

 悠真はホッと息をついた――が、同時に、妙な胸の痛みが生まれた。

 彼女が疑っていないことが、逆に怖かったのだ。

 結衣は、彼を信じているのか。

 それとも、信じる価値さえ失ったのか。

 ――どちらにせよ、今の彼にはもう関係のないことだった。

 悠真のポケットには、会社の出張用とは別の航空券が入っている。

 目的地:那覇。

 同行者:佐伯美咲。

 社内でも一際明るく、男たちの視線を集める事務員。

 22歳。

 柔らかな髪と大きな瞳。無邪気な笑顔で甘えてくるが、

 その裏には確かな計算がある――そんな女だ。

 最初はほんの軽い気の迷いだった。

 残業の夜、資料室でふたりきりになったとき、

 彼女が小声で言った。

 「副社長って、意外と優しいんですね。」

 その言葉に、胸がくすぐられた。

 家庭でも職場でも「結衣の夫」としか見られない日々。

 プライドは満たされず、存在価値を見失っていた。

 美咲は、その隙間に入り込むように笑ってみせた。

 ――「二人で、どこか遠くに行きたいな。」

 その囁きが現実になったのは、一週間前だった。

 社の出張を装い、こっそり手配した南の島へのフライト。

 「仕事の疲れを癒す小旅行」――そう言い訳しながら、

 悠真は自分の行為を正当化していた。

 社長室の時計が19時を回る。

 結衣がようやく資料を閉じた。

「……今日は、もう帰りましょう。」

 短い一言で、彼女は立ち上がった。

 カツ、カツ、とヒールの音が床を打つ。

 悠真も立ち上がり、形式的に言う。

「そうだね。疲れただろ?」

 結衣は笑わなかった。

 ただ静かにバッグを持ち、ドアへ向かう。

 その背中には、何かを決意した人間の強さがあった。

 ――彼女の背中を見て、悠真は一瞬だけ罪悪感を覚えた。

 だが、その思いもすぐにスマホの通知音にかき消される。

 「佐伯美咲」からのメッセージ。

 《あと一週間ですね。楽しみです♡》

 帰りのエレベーターで、結衣が無言のまま横に立っている。

 その沈黙がやけに重く、息苦しい。

 悠真は気まずさをごまかすようにスマホをポケットに戻した。

 だが頭の中では、すでに南国の海辺が広がっていた。

 ――一週間後、美咲と過ごす青い時間。

 結衣のいない世界。

 誰にも縛られない、自由な男としての自分。

 それを思うだけで、口元が緩む。

Palawakin
Susunod na Kabanata
I-download

Pinakabagong kabanata

Higit pang Kabanata
Walang Komento
99 Kabanata
Galugarin at basahin ang magagandang nobela
Libreng basahin ang magagandang nobela sa GoodNovel app. I-download ang mga librong gusto mo at basahin kahit saan at anumang oras.
Libreng basahin ang mga aklat sa app
I-scan ang code para mabasa sa App
DMCA.com Protection Status