イケメン俳優パパ生田蓮に恋をしてーー。

イケメン俳優パパ生田蓮に恋をしてーー。

last updateLast Updated : 2025-06-18
By:  立坂雪花Updated just now
Language: Japanese
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イケメン俳優 生田蓮(いくたれん)34歳 × スーパーのパート 江川葵(えがわあおい)29歳 妊娠中に不倫され、その後、離婚した葵は 娘の柚希(ゆずき)と同じ保育園で同じクラスの斗和(とわ)ちゃんのパパ、生田蓮と親しくなっていく。 でも彼は人気イケメン俳優で、身分の差を感じてしまい――。 子育てと恋愛、ほのぼのストーリー

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1.日常
 まさか、あのイケメン俳優、生田蓮(いくたれん)さんと、こんなことになるなんて――。*** 朝の八時。自転車に乗り、家から約五分くらいの距離にある保育園に、娘の柚希(ゆずき)を連れて行く。「じゃあまた後でね!」 年中さんのクラス『うさぎ組』の教室で寂しそうな表情をしている柚希と思いっきりハグをして保育園を出る。 園を出ると、そのまま近くにある私の仕事場であるスーパーに向かう。 「おはようございます!」「おはよう、葵ちゃん。今日も暑いね!」「暑いですね、ちょっと自転車で走っただけなのに、もう汗だくですよ」 女子ロッカー室でパートの人たちと軽く会話をしながら制服に着替え、胸元まである髪の毛をひとつに纏める。広場に集まり、朝礼が始まる。それが終わると売り場へ。 ちなみに今は七月だ。最近は、もわもわっとした暑さで、ちょっと夏バテ気味。 私、江川葵(えがわあおい)は、子供が生まれた後に離婚した。理由は元旦那の不倫。 私が妊娠している時から帰りが遅くなったり、コソコソしたり、なんだか怪しいなとは思っていた。けれども、問い詰めて喧嘩になって別れれば、これから生まれてくる娘と私は路頭に迷ってしまうのでは? なんてマイナスなことばかり考えてしまい、なかなか真相を確かめられずにいた。 ただでさえその怪しさのせいで、彼に対して気持ちはいつもモヤモヤしていたのに、生まれてきた子供には全く興味を示さないし、彼はずっと自分中心のままだし、私はひとりで子育てしてる状態で、とにかくもう、いっぱいいっぱいだった。 そんな時、私は見てしまった。彼のスマホを。  彼がお風呂に入っている時に、テーブルに置いてあった彼のスマホの音がなり、画面が明るくなった。さりげなく覗くと誰から来たのかが丸見え。『あ・り・さ♡ 』という名前が。「なんだこれ、いかにも怪しい」 いけないと思いながらも、まだ幼かった柚希を抱っこしながらその名前をぽちっと押してみた。『ずっと一緒にいたい♡たーくんは? ありさは、今すぐ会いたいよ!』 私は目を細め、無言で画面を暗くするボタンを押した。 見なかったことにしようとも考えたけれど、柚希が夜中に何度も目覚める時期だったから、寝不足でイライラしていたせいもあり、カッとなってきた。スマホを浴室まで持っていって「恋人からLINE来てたよ」って冷たい口調
last updateLast Updated : 2025-04-30
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2.生田蓮さん
 いつものように、柚希を保育園に連れていった時だった。「おはようございます」「おはようございます」 柚希と同じクラスの女の子、斗和(とわ)ちゃんのパパと保育園の門の前で会い、彼から挨拶してくれて、私も返した。お互い、子供が靴を脱ぎ終えるのを待ったりして、子供と一緒に教室に向かう。 斗和ちゃんのパパが、先生に挨拶をすると先に外に出ていく。 私も先生に挨拶するといつものように柚希とハグをして、外に出た。 斗和ちゃんのパパが車に乗り、黒いマスクを外し、発車させようとした時、私は分かってしまった。 彼は、この前パートの和田さんが見せてくれた表紙の人『生田蓮』。 もう何回も会っている。お母さんばかりが出席していた参観日にも参加していて、一緒に親子ゲーム大会をしたりも。 ずっとマスクで気が付かなかったけれど、斗和ちゃんの苗字も生田だし、あのパパは確実に、アクションも完璧にこなす演技派イケメン俳優、生田蓮! まぁ、正体を知っても、同級生の親同士な関係で、深く関わることなんてないんだろうなと思っていた。 葉が紅く染まり始めた季節。 十七時頃、いつものように保育園に柚希を迎えに行くと、彼もちょうど同じ時間に来ていた。 お互いに目を合わせ、会釈をした後に、それぞれ自分の子供が帰り支度をするのを見守り、玄関で靴を履く。「斗和ちゃん、バイバイ!」「柚希ちゃん、バイバイ!」 親同士も「さようなら」と言い、会釈して、私と柚希は先に外へ出た。外に出るとタイミング悪く土砂降りの雨が降ってきていた。「うわ、さっきまで降ってなかったし、天気予報もずっとくもりってなってたのに、雨すごいね」「ママと柚希、いっぱい濡れちゃうね」 ふたりで話をしていると、彼が話しかけてきた。「自転車ですか?」「あ、はい」「車、乗ってきます?」「はい、えっ、えっ? いや、でも……」「うちの車、大きいから自転車乗せれますよ!」「いや、そういうのじゃなくって」 人気イケメン俳優の車に自転車を乗せてもらい、さらに、送ってもらうだなんて、想像しただけで、無理。心臓が飛び出そう。「これ、多分通り雨で、ちょっとしたらやみそうなので、待ってみます」 私がそう言った後、斗和ちゃんが叫んだ。「柚希ちゃんと帰りたい!」「斗和、柚希ちゃんのママは待ってるって言ってるよ! 無理言ったら、柚
last updateLast Updated : 2025-04-30
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3.彼と食事
 送ってもらった日から一ヶ月ぐらいが経った。  いつもは十七時くらいにお迎えに行けるんだけど、いつもよりも遅くなってしまって十八時になっていた。 保育園の門の前で久しぶりに彼とばったり会う。 「この前、あ、もう一ヶ月前になりますけど……。あの時は送ってくださり、ありがとうございました」「いえいえ、こちらこそ、トイレを貸してくれて、ありがとうございました」 お互いに深々とお辞儀をする。 教室まで行き、いつものように帰る準備をして玄関へ。「柚希ちゃんの家にまた行きたい!」 斗和ちゃんが玄関で突然言いだす。「斗和、もう夜ご飯の時間だから、また今度ね」 と、彼が穏やかな口調で言った。 ――えっ? また今度?  その言葉に敏感に反応してしまったけれど、ただとりあえず、娘を帰る気持ちにさせるためだけに言ったのかな? 「柚希ちゃんと遊びたい!」「私も斗和ちゃんうちに来て欲しい!」 子供たちが一致団結して口々に言う。しばらく続きそう。「江川さん!」「はい!」 不意に彼に名前を呼ばれ、私はドキッとした。「お時間あればなんですけど、すぐ近くにある公園に行きませんか?」「……そうですね、ちょっとでも遊べば本人たち満足しそうですしね」 日が落ちてきて、少し寒いから本当にちょっとだけ遊ぶ感じかな? 二十分後。何度も子供たちに声をかけたけれど、彼女たちは、ジャングルジム、ブランコ、滑り台、シーソーを何回も順番に繰り返し、ずっと「あともうちょっとだけ遊ぶ!」と言い、遊び終わる様子がない。 あぁ、これ、ご飯作る時間なくなるやつだ。今冷凍のおかずのストックもない。この後適当にお惣菜買って今日はやり過ごそうかな? そろそろ半額シール貼られる時間だろうし。「江川さん!」「はい!」 本日名前を呼ばれるのは二回目。 二回目だけど呼ばれた時にドキッとするのは変わらず。「ご飯、準備されてたりします?」「いえ、今日はもうお惣菜買って過ごそうかなと」「じゃあ、どこか食べに行きませんか?」「えっ?」 ――何これ、夢? お誘いにのった。「とりあえず、自転車をうちに置いてきますね!」「いや、車に乗せますよ!」 そんなこと、イケメン人気俳優に、二度もしてもらうだなんて。 頑なに拒否をして、娘を後ろに乗せ自転車を漕いだ。 自転車を走らせている
last updateLast Updated : 2025-04-30
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4.気持ち
 本格的に寒くなってきた季節。  彼からLINEが来た。『ちょっとお聞きしたいのですが、柚希ちゃん、ピンクの可愛いジャンパー着ていましたよね? ボタンが花になってて、フリフリしたデザインの。あれってどこで買いました? 今日、去年着ていた斗和のジャンパーが小さいことに気がついて、駅前にある子供服のお店をまわってみたのですが、もう、あんまりサイズと種類がなくて』『多分、もう売れちゃったのでしょうかね? 柚希が今着ているジャンパーは、ネットで買いました。一応サイトのURL貼っておきますね! そこ、女の子向けの服が売っているんですけど、手袋も靴も可愛いのが揃っています! しかもお値段もお手頃で、オススメです!』『今サイト覗いてみましたが、可愛い服と手袋も見つけたので、一緒に注文しようと思います。ちなみに柚希ちゃんが着ていたジャンパーも見つけましたが、お揃いで買っても良いですか?』 お揃いで買うとか、自由で良いのに。そんな細かいところまで気にして訊いてくれる。『お揃い、もちろん良いですよ! 子供たち喜びそうですね!』『じゃあ、注文します。こんな時間にありがとうございました。では、おやすみなさい』 それから一週間ぐらい経った時、「斗和ちゃんね、私と同じジャンパー着ていたの!」って、柚希が教えてくれた。嬉しそうだった。 ――私が教えたサイトで、柚希とお揃いのジャンパー。本当に買ってくれたんだ。 些細なことだけど、彼がしてくれたから、それは特別なことだった。 彼に対しての欲が出てきて、恋人同士になりたいなとも思ったけれども、彼は雲の上にいる、手の届かない人なのは変わりなくて。恋人になんてなれるはずがなかった。 ご飯を一緒に行くだけで幸せだった。  LINEで会話するだけで幸せだった。 保育園の行事や、送り迎えの時間に会えた時も話せたし。 ――私の心は、完全に浮かれていた。  その記事をネットで見たのは、 暖かくなってきた季節だった。 いつも利用している検索サイトのトップにそれは書かれていた。『生田蓮、元カノと復縁か?』 その文を読んだだけで、私の心臓がバクバクと大きくなりだし、目の前が一瞬真っ白になった。 その見出しをクリックすると、彼が昔付き合っていたらしい、とても美人な女優と、斗和ちゃん、そして彼の姿が載っていた。 この女優さんは斗和
last updateLast Updated : 2025-05-10
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5.遊園地
 次の日の朝。 緊張してあまり眠れなかった。 起きてすぐに朝ご飯の準備をする。手軽に食べられる食パンと、ヨーグルトに缶詰のミカンを入れたもの。ちなみに朝はいつもこんな感じ。 お出かけ用に買っておいた、柚希とお揃いのカットソー着ようかな? 白地に小さな水色の花が散りばめられていてふんわりした形のチュニック。下はデニムのスキニーパンツ。着替えてから柚希と並んで全身鏡に映ると、柚希は嬉しそうだった。 迎えに来てくれる予定だった七時をちょっとすぎてしまった。急いで柚希の胸元まである髪の毛をツインテールにして、準備が完成。ちょうどその時『着きました!』と彼からLINEが来た。 急いで外に出ると、彼が車から降りてきた。「江川さん、おはようございます。予定時刻少し遅れてすみません」「いえいえ、大丈夫です。朝バタバタしてて、実は準備終わったの、ちょうど生田さんからLINEが来た時でした」「朝はバタバタしますよね……。あっ、服、親子お揃い! 可愛いですね」「ありがとうございます」 すぐお揃いなことに気がついてくれた。  しかも可愛いだなんて――。 ふわっとした気持ちになりながら、車に乗り、席に着く。「じゃあ、出発します!」  彼がそう言うと、車が走り出した。 途中何回か休憩しながら、遊園地に着いたのは、十時くらい。 車から降りる時、彼は「ちょっと待っててください」と言って、紙袋から何かを取り出した。ウィッグだ。「これ、結構前に仲良いヘアメイクさんから『変装に使って!』ってもらったんですけど、今初めて使います」 ちょっと照れくさそうに、初めての割には慣れた手つきで、そのウィッグを彼はかぶった。「どうでしょうか?」 どうでしょうか? って言われても。 格好良いに決まっている! いつもはサラサラヘアーの黒い髪。 今は明るい茶色の緩いウェーブ。 どんな姿になってもイケメン。「いいね! パパカッコイーよ!」「いいと思う!」 斗和ちゃんが言うと、柚希も続けて言う。「私も、似合っていて良いと思います」  彼が優しく微笑んできた。 更にマスクをした彼は、もう別人。周りに正体バレなさそう。 遊園地なんて何年ぶりだろう。 最後に行ったのは学生の頃かな? 久しぶりすぎる。 空を見上げると、雲ひとつない青空が広がっている。 遊園地内で
last updateLast Updated : 2025-05-17
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6.距離
 その日の夜、柚希を寝かした後、彼からLINEが来た。『今日はお付き合いくださり、本当にありがとうございました』 返事どうしようかな?って画面を眺めながら考えている最中、再び彼からLINEが来る。『遊園地で江川さんの様子がいつもと違ったこと、やっぱり気になってしまいます。今日、もしも無理やり遊園地に付き合わせてしまっていたり、本当に僕が何かやらかしてしまっていたら、ごめんなさい。何か言いたいことがあれば遠慮なく言ってください。いえ、無理して言わなくてもいいのですが。とにかく気になってしまいました。今日はお疲れ様でした。おやすみなさい』 やらかすだなんて……。 彼が私との関係を、適当な間柄だと思っていたのならこんなLINE、送って来ないよね? 自分の気持ちを伝えるのが得意ではないけれど、今思っていることを素直に伝えてみることにした。『実は私、生田さんと元カノさんが一緒のところを撮られていた記事を見たのですが、生田さんと彼女さんは、現在お付き合いしていらっしゃるのかな?って気になっていまして。プライベートに踏み込むなって感じですよね。すみません。今日はありがとうございました。おやすみなさい』 こんな内容、迷惑だろうなって、送るのをためらってしまったけれど、勢いで送信を押した。送ってから後悔。返事、来ないだろうな。っていうか、今、生田さん、彼女さんと一緒にいそう。 そして、斗和ちゃんも。三人で楽しく過ごしているのかも。 想像なんてしたくないのに、勝手に三人一緒にいる映像が頭の中に流れてくる。復縁の記事を見てからずっと。そして私は今、その頭の中に流れてくる映像に、嫉妬してる。    ――こんなの、私ひとりだけが辛いやつじゃん。 送ってから、一分もしないうちにスマホの画面に『着信 生田さん』の文字が。 彼からの着信は予想外。  心臓が跳ね上がり、鼓動が速くなる。 マナーモードにしてあったから幸い音は出ず、そばで寝ていた柚希を起こさずにすんだ。 私は話し声で柚希を起こさないように、寝室から離れた。そしてトイレへ行き、ドアを閉めた。 震えながら、電話に出るマークを押した。「もしもし」 トイレのドアは閉めたけれど、一応声が漏れないように、ささやくような声で私は電話に出た。「もしもし、あの、柚希ちゃん寝かせてる途中だったとか、忙しい時間にか
last updateLast Updated : 2025-05-25
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7.彼の気持ち
 暑い季節がやってきた。 斗和ちゃんのパパが『生田 蓮』だと知ってからちょうど一年くらいが経つ。 彼と距離を置いてから、LINEをすることもなくなり、ご飯も一緒に行かなくなった。 でも保育園で会うといつも彼から話しかけてくれる。挨拶や子供の話をしたりする程度だけど。 最近は彼への気持ちが少し落ち着いてきた気がする。無理やり自分自身でそう思うようにしているだけかもしれないけれど。 いつものように保育園へ迎えに行き、家に帰ると、柚希が私に言った。「ねぇ、斗和ちゃんのパパがね、ママと一緒にいたいんだって!」 柚希にどういうことか訊ねると、今日保育園で斗和ちゃんが柚希にそう言っていたらしい。まさか彼がそんなこと言うわけがない。最近柚希は妄想話もよくしてくるから、そのたぐいかなと思っていた。 柚希からその話を聞いてから、三日が経った。  朝、保育園の門の前で、彼と会う。「おはようございます」 「おはようございます」 いつものように、彼から挨拶をしてくれて私も挨拶を返す。 四人で玄関に入った時、斗和ちゃんが私に言った。「ねぇ、柚希ちゃんのママー、パパがね、一緒に遊びたがってるよ!」 「えっ?」 「斗和、そういうこと言わなくていいの!」 「えー、だってパパ、泣きそうだったからね、柚希ちゃんのママに教えてあげたの!」 「斗和! すみません。今の斗和の発言、本当に気にしないでください」 無理。  気にしないなんて、絶対に無理! 斗和ちゃんの言葉を聞いてから、気まずい。そんな気持ちと共に淡い期待も心の中でフワフワしてる。 私は年長さんの『きりん組』の教室まで、柚希と一緒に向かう。斗和ちゃんも同じクラスで、しかも柚希と仲が良いから一緒に向かうことになる。親同士は微妙な雰囲気。いつものように先生に挨拶して、柚希とハグをする。なんとなく教室から彼が出ていくのを確認してから、私も教室を出る。彼に追いつかないように、ゆっくりと玄関に向かって歩いた。それから、外に出て、彼が車を走らせたのを確認。私も自転車の鍵を開け、乗ろうとした。 その時、彼の車が戻ってきた。 ――なんで?  彼は駐車場に車を停めて、降りてきた。  私は自転車にまたがった状態で、彼の行動に目を離せずにいた。「江川さん、あの!」 強めに彼は私の名前を呼んできた。その一声で私は
last updateLast Updated : 2025-06-01
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8.彼の家
 お迎えの時間に間に合った。 さっき、彼と付き合い始めたけれど、この保育園での様子は、特に何も変わらずにいつもの光景。 これからもずっと変わらずにこんな感じなのかな? そう思っていたのに――。「今日は、うちでご飯食べませんか?」 「えっ? 生田さんの家でですか?」 「はい、そうです」 どうしよう。いきなりおうちご飯に誘われる展開がきた。「柚希ちゃん、うちに来てー」と斗和ちゃんが言うと「ママ、行こっか!」って、柚希はすでに行く気満々な様子だった。 断る理由、もう何もないよね?「じゃあ、よろしくお願いします」 私の家を通り過ぎ、十分ぐらい更に進んだ場所に、生田さんの住んでいる家があった。 白くて大きな家。大きな庭もあって、モデルハウスみたいにとても綺麗!  一軒家かぁ、憧れる。 立ち止まり、彼の家を眺めながら私は言った。「ちょっと偏見かもしれないですけど、生田さんは駅前にある豪華なマンションに住んでいるイメージでした。しかも最上階」「はは、そんなイメージでした? 江川さんすごいです。実は昔、そのマンションに住んでいました!」 なんと、正解だった。「この家、斗和が産まれてから建てたんです。子供が過ごしやすい家になるように、一緒に笑い合いながら過ごしている場面を想像しながら。工務店の人に何回も相談に乗っていただいて完成しました。ここは今、一番大切な僕の居場所です」 彼は本当に子供のことを一番に考えているんだな。 それにしても、子供が産まれてから家を建てるって忙しそう。家全体を考えたり、ひとつひとつの部屋の壁とか床とか、考えること沢山あるよね? 育児しながら俳優のお仕事もして、彼は他にも色々やってそうで。 私は柚希が生まれた頃は、彼のように考える余裕なんてなかったな。 玄関のドアを開けた瞬間、新築の香りと花のような?いい香りもしてきた。 リビングへ行く。私の家みたいにおもちゃが散らかっていたりしないで、とても綺麗だった。斗和ちゃんがトイレに行きたくなって家に来た時、散らかった部屋を見られてしまったことを思い出し、ちょっと恥ずかしくなる。「見学しても良いですか?」 「はい、どんどんしてください」 「私、お部屋教えてあげる!」 「斗和、二階も全部教えてあげてね! 僕はささっと何かご飯作ってますね!」 「すみません! ありがとう
last updateLast Updated : 2025-06-07
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9.お泊まり
 今年も寒い季節がやってきた。 たしか去年の今頃は、斗和ちゃんのジャンパーが小さくなったってLINEが彼から来て、服のおすすめサイト教えてたっけ?   そして、彼がそのサイトを使ってくれて、柚希とお揃いのジャンパーを買ってた。 どんな些細なことでも、彼と関われるのが嬉しかったな。今もだけど。 ちなみに今は、一緒にそのサイトを見ながら選んだり、お店に買いに行ったりもしている。  あの時よりも進展している。 今年もそのお揃いのジャンパーをふたりは着ていた。 進展といえば、お付き合いを始めてから、彼の家で過ごすことが多くなっていった。「ねぇ、パパ! 今日、柚希ちゃんと一緒に寝たい!」    いつものように、ご飯を彼の家で食べていた時、斗和ちゃんが言った。 私は彼と目を合わせる。  彼の家に泊まったことは、まだない。「斗和、柚希ちゃんたち、もうすぐ帰らないといけないんだよ! また今度きちんとお約束してからにしようね」 「私も斗和ちゃんと一緒に寝たいな」  柚希も言い出した。 「柚希、もう少ししたら帰ろうね?」 「私、帰らないよ!」 「じゃあ、ママひとりで帰るの?」 「うん」  帰ろうって柚希に言ってるのに、私はその言葉に反比例して、泊まりたいという気持ちがふつふつと湧いてきた。「生田さん、明日は土曜日ですが、お仕事ですか?」 「いえ、休みです」 「私もお休みです」  ここで私は言葉を止める。 「……じゃあ、江川さんがご迷惑でなければ、泊まっていきますか?」  素直に泊まりたいって言えばいいのに、明らかに今、この言葉、察して?みたいなところで私は言葉を止め、彼に気をつかわせてしまった。申しわけない気持ちになった。    ――彼の家でお泊まり。心がそわそわする。 「柚希ちゃんも斗和と一緒にお風呂入れちゃって、大丈夫ですか?」 「あ、はい。ありがとうございます」 「もうお風呂沸くんで、三人で入っちゃいますね!」 「じゃあ、私、その後のことするので、子供たちが上がった後は、ゆっくりお風呂に入ってください」 「ありがとうございます! じゃあ、子供たち上がる時、お風呂から呼び出し音ならしますね! 僕たちの後は、江川さんもゆっくりお風呂入ってくださいね!」 「ありがとうございます!」 柚希が着るパジャマ、下着は斗和ち
last updateLast Updated : 2025-06-14
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10.プロポーズ
 しばらくまったりしていると、目の前に置いてあった私のスマホのバイブがなり『拓也』という名前が。 止まらないバイブ。スマホを眺めていると、彼が言う。 「出ないのですか?」 「……あの、何年も音信不通だった元旦那なんです。出たくなくて」  彼の顔色が変わる。 「代わりに出ますね! 良いですか?」 「はい、お願いします」 「あ、切れた」  出ようとしたら切れたけれど、再びかかってきた。 「出ます!」   そう言って、彼は私のスマホを手に取ると、玄関に行き、ドアを閉めた。 元旦那が何の用事だったのか、彼と元旦那が何を話すのか気になったけれど、何よりもこのタイミングで電話が来たのが不満だった。 ――せっかく良い雰囲気だったのに! なんなんだ、あの人。 彼が戻ってきた。 「どうでした?」 「なんか、江川さんと柚希ちゃんに突然会いたくなったそうです」 ――はっ?「それだけですか?」 「はい、なので、もしもどうしても会いたいのなら、僕たちはお付き合いしているので、僕も同伴することをお伝えしました。後は、江川さんは電話に出たくなくて、会いたくもなさそうでしたと伝えておきましたよ。そしたら電話が切れました」 「ありがとうございます」 何年も音信不通だった。養育費も結局三ヶ月しか払ってくれなかったし。他の女のところにいったのに、会いたくなったからって理由で、いきなり電話してきて。どこまであの人は自分勝手なんだろう。「江川さん!」 「はい!」 「あの人のところへは、戻らないでほしいです」 「戻るわけないです。だってあの人は――」  妊娠中に不倫された話から、別れるまでのことを全て彼に話した。 「そうだったのですね……僕、今電話が来た時、とても不安になったんです」 「不安、ですか?」 「はい、江川さんがその人と会い、寄りを戻して、僕から離れていってしまうのではないかと」 「生田さん、私から離れはしないです。離れるとすれば、生田さんから離れていくのだと、ずっと思っています。だって、生田さんはとても魅力的で……」 「ありえないです! 離れるだなんて、考えられないです。『もう会わない方が良い』って江川さんに言われて、実際、保育園でしか会えなくなった時は、しんどかったです」 「私もです。というか、あの時は一方的に電話切ったり、発言とか
last updateLast Updated : 2025-06-15
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