ログインイケメン俳優 生田蓮(いくたれん)34歳 × スーパーのパート 江川葵(えがわあおい)29歳 妊娠中に不倫され、その後、離婚した葵は 娘の柚希(ゆずき)と同じ保育園で同じクラスの斗和(とわ)ちゃんのパパ、生田蓮と親しくなっていく。 でも彼は人気イケメン俳優で、身分の差を感じてしまい――。 子育てと恋愛、ほのぼのストーリー
もっと見るあれから三年が経った。 子供たちは小学三年生に。「はい、OKです!」と、監督さんの声。 今日はうちのリビングで、とある空気清浄機のCM撮影をしている。出演者はパパと、一歳になった私の娘、羽花(うか)。撮影が始まる前に、一日の流れの説明と共に見せてもらった絵コンテの通り、順番にひとつひとつのシーンを撮り終えていく。ちなみに撮影現場を見るのは初めてで、子供たちと私は、興味津々。 邪魔にならないように、荷物置き場になっている寝室で「上手く行きますように!」と、ドキドキしながら撮影を見守っている。 今、監督さんと彼、スタッフさんで撮れたものをモニターで確認している。「大丈夫そうですね、これで全部撮り終えました。お疲れ様でした!」 撮影が終わった。羽花が出来るだけ普段通りでいられるようにと、本番中、外で待機していたスタッフさんたちが入ってきた。そして撮影に使った道具の片付けを始める。 私はリビングのふわふわした白い絨毯の上で眠っていた羽花を抱っこした。 監督さんに話しかけられる。「奥様、今日は素敵なお家を使わせていただき、撮影にご協力くださり、本当にありがとうございました」 「こちらこそ、貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました」 「子供が遊べるスペースもあって、本当に綺麗で素敵なおうちですね」 「ありがとうございます。夫が、家建てる時に子供が過ごしやすいようにって考えた設計なんです」 「そうなのですね。生田さんらしいです。生田さん、いつも撮影現場でもひとりひとりに気を遣ってくださるし、羽花ちゃんが産まれたばかりの頃かな? 現場一緒になった時、奥様の寝不足や子供たちのことをとても心配されていたりもして、素敵なパパなんだろうなって、スタッフと話していましたよ」 噂の彼を見ると、スタッフさん達と一緒に撮影道具を片付けていた。 はい! 私の夫は世界一素敵です! 私は心の中で叫んだ。 皆がいなくなり家族だけになると、彼は大きなため息をついた。「こんなに撮影で緊張したの、初めてかも。羽花がきちんと笑ってくれるのかな?とか、眠ってくれるかな?って。そんな理由で撮影緊張するなんて、考えたことなかったな」 「私もすごく緊張した。無事終わって良かったね! 羽花とパパの共演、放送されるの楽しみ!」 私もほっとしながらそう言った。
しばらくまったりしていると、目の前に置いてあった私のスマホのバイブがなり『拓也』という名前が。 止まらないバイブ。スマホを眺めていると、彼が言う。 「出ないのですか?」 「……あの、何年も音信不通だった元旦那なんです。出たくなくて」 彼の顔色が変わる。 「代わりに出ますね! 良いですか?」 「はい、お願いします」 「あ、切れた」 出ようとしたら切れたけれど、再びかかってきた。 「出ます!」 そう言って、彼は私のスマホを手に取ると、玄関に行き、ドアを閉めた。 元旦那が何の用事だったのか、彼と元旦那が何を話すのか気になったけれど、何よりもこのタイミングで電話が来たのが不満だった。 ――せっかく良い雰囲気だったのに! なんなんだ、あの人。 彼が戻ってきた。 「どうでした?」 「なんか、江川さんと柚希ちゃんに突然会いたくなったそうです」 ――はっ?「それだけですか?」 「はい、なので、もしもどうしても会いたいのなら、僕たちはお付き合いしているので、僕も同伴することをお伝えしました。後は、江川さんは電話に出たくなくて、会いたくもなさそうでしたと伝えておきましたよ。そしたら電話が切れました」 「ありがとうございます」 何年も音信不通だった。養育費も結局三ヶ月しか払ってくれなかったし。他の女のところにいったのに、会いたくなったからって理由で、いきなり電話してきて。どこまであの人は自分勝手なんだろう。「江川さん!」 「はい!」 「あの人のところへは、戻らないでほしいです」 「戻るわけないです。だってあの人は――」 妊娠中に不倫された話から、別れるまでのことを全て彼に話した。 「そうだったのですね……僕、今電話が来た時、とても不安になったんです」 「不安、ですか?」 「はい、江川さんがその人と会い、寄りを戻して、僕から離れていってしまうのではないかと」 「生田さん、私から離れはしないです。離れるとすれば、生田さんから離れていくのだと、ずっと思っています。だって、生田さんはとても魅力的で……」 「ありえないです! 離れるだなんて、考えられないです。『もう会わない方が良い』って江川さんに言われて、実際、保育園でしか会えなくなった時は、しんどかったです」 「私もです。というか、あの時は一方的に電話切ったり、発言とか
今年も寒い季節がやってきた。 たしか去年の今頃は、斗和ちゃんのジャンパーが小さくなったってLINEが彼から来て、服のおすすめサイト教えてたっけ? そして、彼がそのサイトを使ってくれて、柚希とお揃いのジャンパーを買ってた。 どんな些細なことでも、彼と関われるのが嬉しかったな。今もだけど。 ちなみに今は、一緒にそのサイトを見ながら選んだり、お店に買いに行ったりもしている。 あの時よりも進展している。 今年もそのお揃いのジャンパーをふたりは着ていた。 進展といえば、お付き合いを始めてから、彼の家で過ごすことが多くなっていった。「ねぇ、パパ! 今日、柚希ちゃんと一緒に寝たい!」 いつものように、ご飯を彼の家で食べていた時、斗和ちゃんが言った。 私は彼と目を合わせる。 彼の家に泊まったことは、まだない。「斗和、柚希ちゃんたち、もうすぐ帰らないといけないんだよ! また今度きちんとお約束してからにしようね」 「私も斗和ちゃんと一緒に寝たいな」 柚希も言い出した。 「柚希、もう少ししたら帰ろうね?」 「私、帰らないよ!」 「じゃあ、ママひとりで帰るの?」 「うん」 帰ろうって柚希に言ってるのに、私はその言葉に反比例して、泊まりたいという気持ちがふつふつと湧いてきた。「生田さん、明日は土曜日ですが、お仕事ですか?」 「いえ、休みです」 「私もお休みです」 ここで私は言葉を止める。 「……じゃあ、江川さんがご迷惑でなければ、泊まっていきますか?」 素直に泊まりたいって言えばいいのに、明らかに今、この言葉、察して?みたいなところで私は言葉を止め、彼に気をつかわせてしまった。申しわけない気持ちになった。 ――彼の家でお泊まり。心がそわそわする。 「柚希ちゃんも斗和と一緒にお風呂入れちゃって、大丈夫ですか?」 「あ、はい。ありがとうございます」 「もうお風呂沸くんで、三人で入っちゃいますね!」 「じゃあ、私、その後のことするので、子供たちが上がった後は、ゆっくりお風呂に入ってください」 「ありがとうございます! じゃあ、子供たち上がる時、お風呂から呼び出し音ならしますね! 僕たちの後は、江川さんもゆっくりお風呂入ってくださいね!」 「ありがとうございます!」 柚希が着るパジャマ、下着は斗和ち
お迎えの時間に間に合った。 さっき、彼と付き合い始めたけれど、この保育園での様子は、特に何も変わらずにいつもの光景。 これからもずっと変わらずにこんな感じなのかな? そう思っていたのに――。「今日は、うちでご飯食べませんか?」 「えっ? 生田さんの家でですか?」 「はい、そうです」 どうしよう。いきなりおうちご飯に誘われる展開がきた。「柚希ちゃん、うちに来てー」と斗和ちゃんが言うと「ママ、行こっか!」って、柚希はすでに行く気満々な様子だった。 断る理由、もう何もないよね?「じゃあ、よろしくお願いします」 私の家を通り過ぎ、十分ぐらい更に進んだ場所に、生田さんの住んでいる家があった。 白くて大きな家。大きな庭もあって、モデルハウスみたいにとても綺麗! 一軒家かぁ、憧れる。 立ち止まり、彼の家を眺めながら私は言った。「ちょっと偏見かもしれないですけど、生田さんは駅前にある豪華なマンションに住んでいるイメージでした。しかも最上階」「はは、そんなイメージでした? 江川さんすごいです。実は昔、そのマンションに住んでいました!」 なんと、正解だった。「この家、斗和が産まれてから建てたんです。子供が過ごしやすい家になるように、一緒に笑い合いながら過ごしている場面を想像しながら。工務店の人に何回も相談に乗っていただいて完成しました。ここは今、一番大切な僕の居場所です」 彼は本当に子供のことを一番に考えているんだな。 それにしても、子供が産まれてから家を建てるって忙しそう。家全体を考えたり、ひとつひとつの部屋の壁とか床とか、考えること沢山あるよね? 育児しながら俳優のお仕事もして、彼は他にも色々やってそうで。 私は柚希が生まれた頃は、彼のように考える余裕なんてなかったな。 玄関のドアを開けた瞬間、新築の香りと花のような?いい香りもしてきた。 リビングへ行く。私の家みたいにおもちゃが散らかっていたりしないで、とても綺麗だった。斗和ちゃんがトイレに行きたくなって家に来た時、散らかった部屋を見られてしまったことを思い出し、ちょっと恥ずかしくなる。「見学しても良いですか?」 「はい、どんどんしてください」 「私、お部屋教えてあげる!」 「斗和、二階も全部教えてあげてね! 僕はささっと何かご飯作ってますね!」 「すみません! ありがとう