私は家族や近しい人を失う場面を訳すとき、単に 'lose' を当てるだけでは弱すぎると感じることが多い。日本語の『喪す』や『喪う』には、喪失そのものの事実だけでなく、喪に服すという文化的重みや残された人の悲嘆がにじむ場合がある。そうしたときは 'to lose someone' よりも 'to be bereaved of someone'、あるいは文脈次第で 'to mourn the loss of' のように意図を明確にする表現を選ぶことが多い。
具体例として、『Norwegian Wood』のような人物の死を扱う文章なら、口語的で親密な場面では "He lost his father" が自然だが、文語的・儀礼的な語りでは "He was bereaved of his father" や "He suffered the loss of his father" としてトーンを調整する。さらに、対象が抽象名詞(記憶、名誉、地位など)の場合は 'to lose' や 'to forfeit'、'to be deprived of' と使い分ける必要がある。