子なしを誓った夫、義妹と双子を作ってました黒川修造(くろかわ しゅうぞう)と連れ添った三十年。私・佐倉青葉(さくら あおば)は、不運にも十五回もの流産を繰り返した。
四十歳になった年、医師から非情な宣告を受けた。
「もう二度と、子供を授かることはできません」
それを聞いた修造はひどく悲しみ、私を安心させるためだと言って、その日のうちにパイプカット手術を受けてくれた。
……
修造の還暦祝いを目前に控えたある日。義理の妹である佐倉百合(さくら ゆり)が、都会から男女の双子を連れて、祝いにやってきた。
その時、思いもよらず彼女の「心の声」が聞こえてきた。
[青葉は本当に、骨の髄までおめでたい女ね。自分が不妊になるよう仕組まれたとも知らずに、私と修造の子供を二十年も育ててくれたんだから]
悲しみに暮れる間もなく、今度はその双子の声が響いた。
[親父の還暦祝いが済んだら、このババア名義の財産を全部俺たちに相続させて、さっさと叩き出してやろうぜ]
……
私は、手の中にあった実家の立ち退き通知を、きつく握りしめた。
口角に、冷たい笑みが浮かぶ。
天に感謝しなくては。この者たちの、あまりにも薄汚い本音を聞かせてくれたことに。
だったら、この五千万円の立ち退き補償金も、私一人で独占させてもらうわ。