愛を誓ったその日に、ワスレナグサは枯れた前田グループの社長、前田勲(まえだ いさお)は私にぞっこん。みんなからは「彼は奥さんの言いなりだ」と噂されるほど、私をこよなく愛していた。
そして結婚式を明日に控えた日。妊娠検査薬に浮かび上がった陽性のサインを見て、勲を驚かせようと私は胸を弾ませていた。
でも、書斎のドアの前で、勲の氷のように冷たい声が聞こえてきたんだ。
「美羽(みう)は体が弱い。上田家の血筋を絶やさないためには、子供が必要なんだ。
体外受精がうまくいったことは絶対に遥(はるか)には知られてはならない」
それを聞いて、私の手から妊娠検査薬が滑り落ちた。そこでようやく悟ったのだ。勲の愛は、大きな利益の前では、所詮後回しにされてしまうのだ。
そう思って私はその夜のうちに自分の痕跡をすべて消し去ったあと、お腹に宿したまだ2ヶ月ほどの双子と一緒に、アフロテラ共同体へ向かう支援プロジェクトの飛行機に乗り込んだ。
それから5年後。国際ニュースに映る私は、世界に名を知られる記者になっていた。
一方、あれだけ私を見下していた勲は、血眼になって世界中で私を捜し回り、ついには200億円もの懸賞金をかけるほどになっていた。