妹だけ救われた日、私は静かに息を引き取った洪水が押し寄せたその瞬間、救助隊長である父は真っ先に従妹の由奈を抱え上げ、ためらうことなく私の命綱を切り捨てた。
「由奈ちゃんは泳げない。ヘリにもう席がないんだ。お前は少しぐらい助けるのが遅れたって、死にはしないだろう」
息絶え絶えで、私は病院へと運ばれた。
ところが、医者である母は、最後に残っていた一袋のRhマイナスの血液を、さほど重症でもない由奈へと迷いなく回した。
私は掠れる声で母にすがりついたものの、母は冷ややかに私の手を振りほどいた。
「由奈ちゃんは貧血で、昔から体が弱いの。こんな時まで私の気を引こうとしないで」
けれど、そんな両親は知る由もなかった。
彼らに見捨てられたその時、私はもうとっくに息絶えていたということを。