誕生日ケーキが届いた日、私は離婚を決めた16歳の誕生日。私は自分へのご褒美に、一番おいしいケーキを買ったんだ。
でもその日、ケーキに手をつける前に、喧嘩ばかりしていた両親は私の目の前で離婚届に判を押した。
だから結婚した日、私は夫の松田宏樹(まつだ ひろき)に、「もし離婚したくなったら、誕生日ケーキを贈ってくれればわかるからね」と言った。
宏樹は私を抱きしめて、「安心して。もう、うちで『誕生日』なんて言葉は二度と出てこないから」と言ってくれた。
7年後、宏樹の誕生日に、若い新入社員が内緒で誕生パーティーを企画した。しかし、宏樹は、彼女の顔をひっぱたいて、会社から追い出してしまった。
あの日、私はこの人を選んで本当に良かったって、心の底から思ったんだ。
そして3ヶ月後、私の誕生日に、追い出されたはずの若い新入社員が、いつの間にか夫の秘書になっているのを、私はその時初めて気づいた。
彼女は、私のところにわざわざ特別な誕生日ケーキを届けてきた。
私が電話で宏樹に問いただすと、彼はただ冷たくこう言った。「遥も良かれと思ってやったことなんだ。水を差すようなことはするなよ」
私は一瞬、言葉を失って、そのまま電話を切った。
やっぱり、両親は間違っていなかったんだ。誕生日ケーキっていうのは、離婚届と一緒に味わうものなんだって、私はやっとわかった。