導かざる夢の灯火安浦隆司(やすうら たかし)が死んだ。
葬式の前、妻である玲子(れいこ)は彼の遺品を整理している時、一冊の分厚いアルバムを見つけた。
表紙には「最愛」と書かれていた。
アルバムを開くと、中の写真は自分のものではなく、津戸静美(つど しずみ)——隆司がかつて養女として引き取った少女だった。
それだけではない。隆司の財産も全て彼女に残されていた。
玲子は恨みを抱えたまま息を引き取り、再び目を開くと、隆司と結婚する直前の頃に戻っていた。
今度はこの男のために全てを捧げるのではなく、自分のために生き、夢を追って旅立つことを選んだ。
しかし、思いもよらなかった——今世の隆司は彼女が去ると、狂ったように世界を探し回ったのだ。