甘やかした果てこれまでずっと手のかからない素直な息子が、突然、私と一緒に寝ると言い出した。
そして、夫の桐生遼介(きりゅう りょうすけ)を一切近づけさせなかった。
しかし、遼介はそれを咎めることなく、その晩から一人でゲストルームへと移った。
それから半月、彼は主寝室に戻ってくることはなかった。
その時、私は何も深く考えず、ただ彼が息子を溺愛しすぎているだけだと思っていた。
ある日の集まりでのことだ――
私が少し遅れて到着した際、偶然にも、遼介と友人たちの笑い声が聞こえてきた。
「桐生、この前愛人が機嫌を損ねて、背中を血まみれの引っ掻き傷だらけにした時、奥さんにバレなかったのか?」
遼介は何食わぬ顔で答えた。
「フィギュア一つで息子を買収して、『援護』させたんだ。この半月、ずっとゲストルームに泊まっていたからな。
まあ、傷も治ったし、今夜から主寝室に戻るつもりだけど」
これに対し、友人たちは皆、遼介のやり方を褒め称えた。
ただ一人、個室の外に立ち尽くしていた私は、まるで氷の檻に閉じ込められたようだった。