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潮風が想いを連れ去る

潮風が想いを連れ去る

By:  1000円くれCompleted
Language: Japanese
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三年間、黒崎隼人(くろさき はやと)に必死で媚び続けた末、彼はようやく私との結婚を承諾してくれた。 結婚後、さらに七年間媚び続けた。そして、彼はついにサプライズを用意してくれると言った。 その約束をもらい、私はその日のうちにSNSに三回も投稿してお祝いし、約束の海辺で五時間も待った。 五時間後、隼人は現れなかった。 代わりに、彼の幼馴染の高槻玲奈(たかつき れいな)がホテルからの位置情報を添えたSNSを投稿した。 【あなたとの距離なんていらない。肌が重なるマイナスの距離でいたい】 添えられた写真は、キスマークと歯形だらけの隼人の胸元だった。 急に吐き気がして、私はその投稿に「いいね」とコメントを残した。 【帰ったらちゃんと体を洗ってね。汚いのは嫌だから】 次の瞬間、彼からすぐに電話がかかってきた……

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Chapter 1

第1話

三年間、黒崎隼人(くろさき はやと)に必死で媚び続けた末、彼はようやく私との結婚を承諾してくれた。

結婚後、さらに七年間媚び続けた。そして、彼はついにサプライズを用意してくれると言った。

その約束をもらい、私はその日のうちにSNSに三回も投稿してお祝いし、約束の海辺で五時間も待った。

五時間後、隼人は現れなかった。

代わりに、彼の幼馴染の高槻玲奈(たかつき れいな)がホテルからの位置情報を添えたSNSを投稿した。

【あなたとの距離なんていらない。肌と肌が重なるくらい近くにいたいの】

添えられた写真は、キスマークと歯形だらけの隼人の胸元だった。

急に吐き気がして、私はその投稿に「いいね」とコメントを残した。

【帰ったらちゃんと体を洗ってね。汚いのは嫌だから】

次の瞬間、彼からすぐに電話がかかってきた……

電話を受けた時、私はすでに海辺で隼人を五時間も待ち続けていた。

電話の向こうで、隼人の呼吸はまだ乱れているのに、声は夜明け前の海水よりも冷たかった。

「雪村美冬(ゆきむら みふゆ)、お前どうかしているぞ。玲奈が冗談を言っただけなのに、何だその嫌味な言い方は?

今どこにいる?すぐにこっちに来て玲奈に謝れ……」

「隼人」

結婚して七年、私は初めて隼人の言葉を遮った。

「離婚しよう」

夜の風と波が強すぎたのかもしれない。

あるいは彼が私に自分から離れる勇気があるなんて信じていなかったのかもしれない。

隼人は無意識に私の言葉を無視し続けた。

「俺と玲奈は小さい頃からずっと一緒なんだ。もし付き合う気があったらとっくに付き合ってる。そうなっていたら、そもそもお前の出番はなかったんだよ。

美冬、いつもそんなに嫉妬深くなるなよ。本当にみっともないな」

私は静かに聞いていたが、心の中では少しおかしくなっていた。

結婚して七年、隼人は私が他の男性と少しでも長く話しているのを見るだけで、イライラして私を家に引きずり戻し、ふしだらだ、男を誘惑していると責め立てた。

今、彼は玲奈とホテルにいて、私を海辺に五時間も置き去りにしたのに、それをただの冗談だと言うのだ。

私が馬鹿だったのだ。

これ以上聞きたくなくて、私は二度目に彼の言葉を遮った。

「私、まだ海辺にいるの」

今日は私と隼人の結婚記念日だ。

彼は一週間前に海辺でサプライズを用意したと私に告げた。

今夜の八時に必ず来るようにと。

夜八時から深夜一時まで。

私は隼人を五時間も待った。

五時間ずっと、砂浜から人影が次第に消えていくのを見ていた。

そして潮がゆっくりと満ちてくるのを見ていた。

自分が立っている岩が、次第に海水に囲まれて孤島になっていくのをじっと見ていた。

それはまるで私たちの結婚生活のようだった。

でも、いくら経っても隼人の姿は現れなかった。

私が玲奈のSNSにコメントして初めて、彼は私の存在を思い出したのだ。

電話の向こうの声が急に途切れ、それからゴソゴソと服を着る音と玲奈の不満げな甘える声が聞こえてきた。

隼人は後ろめたそうに叫んだ。

「その場から動くな。今から迎えに行くから。

待ってろ、絶対に待ってろよ」

電話を切ってから、さらに二時間待った。

空からは大雨が降り始め、海水もふくらはぎまで達していた。

隼人へのメッセージは梨のつぶてだ。逆に玲奈がまたSNSを更新していた。

【どんな豪雨も怖くない。私の王子様が家まで送ってくれるから】

私に返信する時間のない隼人が、その下にコメントしていた。

【俺のプリンセスは永遠に守る】

彼らの愛に「いいね」を押したかったが、携帯は海の中に落ちてしまい、もう見えなくなった。

自嘲気味に笑い、私は靴を脱いで海に飛び込んだ。

泳いで帰る途中、色々なことを考えていた。

今日で、私が隼人を好きになって十年目だ。

彼が私にサプライズをくれると約束した日だ。

そして、私がついに隼人の心の中に入れたのだと思った日だ。

でも現実は、彼はまたしても玲奈のために私を捨てた。

悲しいか?

悲しい。

続けたいか?

もういい。疲れた。

岸に上がった瞬間、私はもう一度あの岩を振り返った。

今回は、私は自分の力で孤島から抜け出した。

「美冬!」

背後から突然、聞き慣れた男性の声がした。

私が勢いよく振り返ると、ちょうど隼人の慌てた瞳とぶつかった。

「どうして来たの?」

私は少し驚いたが、隼人はすでに雨の中に駆け出していた。
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