藤のある庭高校に入学して3週間、和明は同級生の玖珂翠惟という存在に心を奪われていた。
だれとも交わらず冷ややかな孤立をまといながら、まるで現実から浮き上がったような美しさを持つ翠。その不可思議な魅力に惹かれつつも、和明は彼の心の奥底に触れられないまま、距離を保った奇妙な関係を続けていた。
しかし突然翠は学校に姿を見せなくなる。
担任に頼まれ、連絡係として翠の家を訪ねる役目を負った和明は、胸のざわつきを抱えたまま彼の暮らす家を訪れる。
そこにいたのは、翠によく似た儚げな美しさを宿した女性・華椰だった。