Masuk主人公「私」こと夜鷹 空(ヨダカ ソラ)。 私にとっての至福の時間。 それは家の横庭でごはんを食べたり焚き火をするといった庭でキャンプ。 メインディッシュは自然の中で、キャンプ飯を食べる。 ある時は星空観察、ある時は焚き火をしながら珈琲を嗜む。 キャンプを通じて感じたスローライフな空間を書き記した、ショート日常的ストーリー集
Lihat lebih banyak私の名前は、夜鷹 空。
地方の出版社と契約をしているフリーライターであり、編集や校正の仕事も請け負っている。
ある自然豊富な山奥の一軒家に住んでいる。
(んーーっと! 今日も良い天気だ)
外に出て、私はストレッチするかように腕を上の方へ伸ばした。
周りの景色は草木や田んぼ、畑が多くお店すら何もない。
けれど、私にとって落ち着きやすくのどかで素晴らしい場所だ。
(はぁ、新鮮な空気……気持ちいい)
春は積もっていた雪から解放され、新たな生命として芽生えてくる草花と共に桜の花が開花宣言を告げていく。
涼しく青々とした緑の葉っぱがひらり、シトシトと湿りのある梅雨。
夏は田んぼの側で、太陽から煌めきを放つような向日葵が光に向かって、背伸びするかのように咲いている。
秋はコスモスやススキで辺り一面を生い茂っている。
山の表面には、緑から赤や黄色が交わり移るような森林に色変わる。
冬はしばらく生命の活動にお休みを頂き、また新しい時を待つために覆う白い雪……。
四季折々の景色が、一つ一つ輝いて見えるところ。
(だから……もっと楽しむためには)
こういう場所で至福になれる時間がある。
それは、庭でキャンプごはんを作ったり焚き火を楽しむ。
いわば「庭キャンプ」のことだ。
私が住んでいる家の横にある庭を小さなキャンプ場としてイメージする。
余暇があればタープを立てたりと準備を行い、その休憩としてコーヒータイムで一服……なんてことも。
庭でするのも楽しいけれど、本当は本格的にキャンプ場で宿泊することも憧れを持っている。
(さて、そろそろ庭キャンの準備をしようっと)
——そして、今日も一人、庭で焚き火やごはんを楽しんでいくのである。
——気を取り直して……。野菜の下ごしらえが終わり最後は豆腐を切るのみ。(いつもの絹ごし豆腐で六等分に……)これでようやくひと仕事をした。「お? 出来た?」「うん」私はコクリと頷く。「じゃあ、鍋の出汁を作ろう」「うむ、作る」出汁を作るのは、私の役目と決まっている。そもそも私の実家で年に一回、カニ鍋をしていたから馴染みがある。私にとっては思い出の一品で、本当に正月の期間にしか出さないハレの日料理。出汁の調合や作り方は、私の父が作っていたのを見よう見真似で行うだけ。我が家の出汁は、昆布で出汁を取る。あらかじめ、土鍋の半分より少し多めの水に昆布一枚分浸していた。そこに塩を少々、薄口醤油とお酒をひと掛け。そしてコンロの火をつける。沸騰し始めたら白菜の芯や白ネギ、豆腐を先に入れ、次の食材を入れるタイミングを待つ。「空ー! 俺、取り皿とかガスコンロ出しておくぞ」鍋の食材を入れている合間に、恭弥さんが声を掛けてきた。「うん、ありがとう。あっ、こたつの電源だけ切っておいてね」「OK」(今日は新年最初の料理の振る舞いだし、彼のために美味しい鍋を作らなきゃ!)大切な人のために料理を振る舞うというか、もっと作ってあげたい気持ちがどんどん湧いてくる。(そろそろ、次の食材の入れ頃かな)昆布出汁のやさしい香りも、ほんのり漂ってきた。グツグツと食材が揺らぐ頃に、火の通りやすく青々しい部分と黄色みの
——夜鷹家、自宅内のリビング。「なんでやねん、それはないやろ!」「ワハハッ!」私達、夜鷹夫婦はリビング内の暖房にあたっている。ぬくぬくと家の中で籠りながら、テレビで今放送されている正月用の特別番組をボーっと鑑賞している最中だ。(やはり正月の時だからこそ、初笑いだからかお昼から漫才やバラエティ番組が多いなぁ……)今年最初を飾るハレの日、一月一日。新年の幕開けの日でもある。私も恭弥さんも、年末年始は仕事がお休み期間中。初詣は家の近くにある神社で無事にお参りを済ませた。今はこたつの中でのんびりと温まっている。毎年届く年賀状も無事に受け取ったし、お雑煮やお節料理もお昼ご飯も……。(ただ、キャンプができる日はまだまだ遠い先……)現在、庭キャンプは冬季休み期間である。冬用のキャンプ道具やテントを持っていない。それが一番の理由がそれだから。我が家の住んでいる山奥での外は、雪一面の景色。特に、朝と夜はマイナスの気温まで下がる世界。昼間でも一桁の気温には、流石に耐えきれない寒さだ。だけど、家にいるとやはり身体が鈍ってしまうのも事実である。しかし、夕刻になって晩ご飯の時間が近づくにつれて……。——ぐぅ~……。盛大な音が部屋の中で響く。「空、お腹空いただろ?」「……うん」隣にいる彼はクスッと笑いながら、私のお腹の空き具合を聞く。(うぅ、バレちゃったか……)「お腹が鳴ってたの、すぐわかったよ」
——ピピッ、ピピッ!スマホのタイマーが鳴り響いた。十五分の煮込みは、長く感じるような気もした。恭弥さんと話していれば、あっという間だと感じる。鍋の中に入っているローリエを取り除き、一旦火を止める。シチューのルーと牛乳を入れて再度火をかける。少し弱火にして、じっくりルーと牛乳を馴染ませるかのように混ぜていく。「おぉ、良い匂いしてきているね」「うん、クリーミーな感じがする」恭弥さんが鍋の中を少し覗き込みながら、シチューの完成を待ち望んでいる。(あ、そうだ! かき混ぜるのと同時に、忘れずにこれも入れておかないと)そう、彩りを足す役割をするブロッコリーのことだ。それも加えてかき混ぜていくうちに、とろみも出てきた。沸々と湧いてきたから火を止めることにした。「出来た?」「うん、あとはパンをスキレットで軽く温める」「そうだね、パンがあると更に美味しくなるしな」シチューの入った鍋は鍋敷きの上へコンロから下ろし、スキレットで切り分けていたフランスパンを二枚温める。パンをだんだん温めていくうちに、小麦とバターの香りが漂ってくる。(はぁ、特にバターの香りが美味しく感じる)恭弥さんは、私の心の中を覗いてニヤニヤしているような気がした。いやいや、そんなことよりもシチューの盛り付けをしないと!「恭弥さん、量はこれくらい?」「うーん、もうちょいだけ」パンを温めている間は、シチューをそれぞれのボウル型のお皿に取り分けていた。恭弥さんの分を入れ終わった後、自分の分も盛り付けてようやく完成。
焚き火の火が安定してきた頃。いよいよ、カセットコンロでシチューを作る準備だ。ちなみに我が家の使用しているダッチオーブンは直火、IHでも両方使える。オリーブオイルでダッチオーブンの鍋の底を馴染ませ、コンロの五徳に乗せる。——カチャンッ! ボッ!ツマミを全開に回し、火を付けた。ここからは、いつも家で作る感覚で手順を踏まえる。(鍋が温まったところで、まずは鶏肉から炒めよう)炒めているうちに鶏肉の透明感のあるピンク色から変わり、少し狐色の焼き目がついてくる。「おぉ、良い色ついてるなぁ~」恭弥さんが匂いを嗅ぎつつ、時折覗き見をしている。しかし、彼に料理をしている姿を見せていない。そのせいで、近づけてくるほど緊張してしまう。(今は意識しない……! 次はキッチンで切った野菜を……)火の通りにくい人参、玉ねぎを先に投入して木製のヘラで回し炒める。(玉ねぎはあらかじめ切った後でもまだ引っ付いているから、先に剥がしておいて正解だ)ここで皆さんに豆知識だが、このことはご存知だろうか?玉ねぎを食べている白い部分は、実はキャベツやレタスと同じく葉っぱであるということだ。ちょっと恥ずかしながら、私も最近知った知識だ。(野菜の知識は、私でも知らないことが色々ありそうだし勉強しなくっちゃ!)玉ねぎが半透明になったところで、ジャガイモを入れて軽く炒める。ここから煮込みタイムへ入ろう。水を具材が浸かる程度まで注ぎ、コンソメとローリエを加え蓋を閉める。少し弱めの中火にして十五分ほど、タイマーをスマホで設定
——カシャッ、タンッ、タンタン。(うん、この写真がいいからこれにして……送信っと!)私はスマートフォンのカメラで、出来上がったカレーライスの写真を数枚撮る。写りのいいいものを選択して、恭弥さんにLIMEで送った。もちろん、メッセージも添えて……。(あとは返事が来るまで待つ……その間冷めないうちに食べてしまおう)
——扉を開け、外へ出てみる……。(うっ! 眩しい……!)青空の天上から、太陽が燦々と眩しく照らしている。梅雨の期間、あまり外へ出ていなかったから尚更だ。目や肌へ日差しの刺激がより感じる。(今日はそんなにジメジメした湿気が少ないけど、これから先はもっと湿っぽくて暑くなるだろうなぁ)しかし、ここでへたれてい
——七月初旬のある日の午後。(ぬぅ~暑い……。暑いよう……)季節は、もう夏を迎えている。薄手の長袖から半袖への衣替えも兼ねて、そろそろ部屋の中へ扇風機を設置しようか迷っていた。最近、この時期の昼間は少しずつ暑くなってきた。天気予報では、夏日に近い気温を示す日中も増えている。けれど山奥の気候は平地と違い、朝と夜はまだ涼しい。
——数十分後……。(ふぅ、食べたぁ……)ポテトサラダとホットサンドを食べ終えた後、お腹がいっぱいになった。けれど、昼食はこれで終わりじゃない。(最後は、あのデザートが待っている!)デザートを用意する前に、食べ終えたお皿などまとめて片付ける。一度キャンプ部屋から出て、キッチンへ向かう。昼食
Ulasan-ulasan