裏切りの果て私が退職届を提出した時――
佐藤鳴海(さとう なるみ)は、新入りインターンの女の子の肩を抱きながら、大型契約を獲得する方法を教えている。
彼は教え終えると、やっとだらけた目つきで私の退職届をちらりと見た。
「今度はまた何を騒ぐんだ、俺のトップセールス様?」
私は静かに言った。
「会社の顧客リストは全部引き継ぎました。今四半期分の歩合もボーナスも、全部受け取りません。経理部に清算を依頼し、会社に帰属させるようにしておきました」
彼は二秒ほど固まり、それでもまだ私が駆け引きしてると思ったらしい。
「……金、いらないって?
じゃあ何が欲しい?美咲をクビにしろって?それとも株よこせって?」
そう言って、コーヒーを差し出してきた。
きっとまた、いつものようにこう来ると思ってるんだ。
――チームを守るために泣き寝入りして、悔しい思いを噛みしめながら、今日も必死に働く私を。
だが、私はただ首を振った。
今の私は、ただ彼に会社が潰れていくのを見届けさせたいだけだ。