タイトルに「洩る」という言葉が含まれる小説で真っ先に思い浮かぶのは、京極夏彦の『洩露事』です。この作品は独特の
妖しい雰囲気が漂い、主人公が遭遇する不可解な事件を通じて、人間の心理の深層に迫っていきます。京極らしい複雑なプロットと濃密な描写が特徴で、読者をぐいぐい引き込む力があります。
もう一つ挙げるとすれば、綾辻行人の『暗闇に
洩れる声』もおすすめです。こちらはホラー要素の強いミステリーで、閉鎖空間での心理戦と意外な展開が魅力です。綾辻作品らしく、最後まで謎が解けないもどかしさと、真相が明らかになった時の衝撃がたまりません。
「洩る」という言葉には秘密や本音が外部に漏れ出すというニュアンスがあるため、これらの作品はタイトルと内容が見事にマッチしています。特に心理描写に重点を置いた作品が多い印象で、登場人物たちの内面がじわじわと「洩れ出て」くる過程が実に興味深いです。
もしもっと古典的な作品を好むなら、泉鏡花の『高野聖』にも「洩る」という表現が重要な役割を果たすシーンがあります。ただしこれは短編なので、期待するボリューム感とは異なるかもしれません。それでも妖艶な日本語の美しさを味わうには最高の作品です。