翻訳という行為は単なる言葉の置き換えではなく、文化やニュアンスの橋渡しだと思う。『私以外私じゃないの』というフレーズを英語にする場合、直訳すると『I'm no one but myself』になるだろうか。
しかし、この歌詞が持つ複雑なニュアンスを考えると、むしろ『There's no me except who I am』の方がしっくりくる気がする。日本語の持つ曖昧さと自己同一性への問いかけを、英語の定型文に押し込めるのは難しい。
アニメ『攻殻機動隊』の主題歌『inner universe』のように、言語を超えた感情表現を追求した作品もあるが、歌詞の翻訳は常に原作者の意図とリスナーの解釈の狭間で揺れ動く作業だ。
The Specialsの楽曲は、1970年代末から80年代初頭の英国社会を鋭く映し出す鏡のような存在だ。『Ghost Town』の不気味なスカビートは都市の衰退を描き、失業率の上昇や若者の絶望を音そのもので表現している。
歌詞に登場する"この町はゴーストタウンになった"というフレーズは、産業が崩壊した街の廃墟化を比喩的に示している。当時のサッチャー政権下で広がった経済格差に対する怒りが、反復されるホーンセクションに込められていた。2トーンという音楽スタイルそのものが、人種融和のメッセージを体現していた点も見逃せない。