作品の放送形態を確認すると、'
あせとせっけん'は1クールでの放送でした。具体的には全12話構成としてテレビ放送され、原作の恋愛要素をテンポよくまとめた形になっています。見返すと、各話の尺が限られているぶん、エピソードの取捨選択に工夫が見え、原作の細かな心理描写や日常の間合いがぎゅっと凝縮された印象を受けました。個人的には、その凝縮感がプラスに働いた場面と、もう少し余白が欲しかった場面が混在していたように思います。
制作側の意図を想像すると、1クールという枠は視聴ハードルが低く、多くの視聴者に手に取りやすい利点があります。とはいえ、原作でじっくり育まれる関係性を完全に再現するのは難しく、数カ所の重要なシーンが省略されたり順序が入れ替わったりしている部分もありました。そうした編集は作品としての密度を高める一方で、原作ファンにはやや物足りなさを感じさせることもあります。私自身はそのバランスを楽しみつつ、アニメ独自の見せ方や演出(カメラワークや声の演技)に新たな魅力を見出しました。
比較のために別作品の編成を引き合いに出すと、例えば'からかい上手の高木さん'のような恋愛コメディでも1クールで丁寧にキャラの日常を積み重ねていく例があります。そうした作品と比べると、'あせとせっけん'はエピソード選定にもっとアグレッシブな場面があり、結果として印象に残る瞬間が強調されていると感じます。総じて、1クール(全12話)というフォーマットはこの作品の性質には十分に機能していた一方で、もう1クール分の余裕があればさらに深い描写や余韻を楽しめたかもしれない、そんな見方も捨てきれません。