冷めた花火、掴めぬその温もり森本博一(もりもと ひろかず)が、七人目となる身重の愛人を私のもとへ連れてきた。
彼女の出産に私を立ち会わせるためだ。
彼の親友は、私が何秒で泣き叫び始めるかを賭けていた。
だが、分娩室から赤ん坊の産声が響くまで、私の取り乱した声が聞こえることはなかった。
「博一、これで七人目だぞ。奥さん、今度こそ本気で怒って口をきいてくれなくなるんじゃ?」
博一は、どこ吹く風といった様子で答えた。
「あいつは子供を産めない体だし、うちはこれだけの大企業を経営してるからな。
どうせ遅かれ早かれ、跡継ぎのために他の女に産ませることになる。今のうちにたくさん産ませて、あいつを慣れさせておいたほうがいい」
その言葉が終わると同時に、私は赤ん坊を抱いて部屋を出た。
そして、助産師として告げた。
「おめでとうございます。体重は3700グラムで、母子ともに健康です」
博一は満足げに笑みを浮かべて子供を受け取ると、離婚届と離婚協議書を私に差し出した。
「サインしてくれ。あの子をなだめるための芝居だ。離婚してくれないと二人目は産まないなんて、聞き分けのないことを言うもんだから。
二人目が産まれれば、子供は全部で八人になる。そうなれば、もう誰もお前が森本家の妻にふさわしくないなんて言わなくなるさ」
こんな茶番に、私はこれまでに七回も付き合ってきた。
けれど今回は、迷うことなく書類に名前を書き入れた。
そして、ある人からのプロポーズを受け入れることにした。
博一は大きな勘違いをしている。私は産めないのではない。彼との遺伝子の相性が、致命的に悪いだけなのだ。
子供が欲しいなら、相手を変えればいいだけの話。
森本家の妻という肩書きのために、私が他人の子を育てるはずだと、彼は一体なぜ思い込めるのだろう。