ルール設計を現実味のあるものにするために、まず
爵位がその世界で何を意味しているのかを明確に定義するところから始めるのが近道だ。爵位が単なる称号なのか、土地・収入・司法権・兵力を伴う実権なのかで、継承ルールの論点がガラリと変わる。実権を伴うなら土地のまとまりを守るための仕組み(たとえば大名家でいうところのファミリーのエンテイル=家産保持制度)が必要だし、儀礼的な爵位なら血統の正当性や名誉回復のルールが中心になる。世界観として封建的・中央集権的・宗教主導かといった背景を先に固めると、継承ルールの説得力が出る。
次に具体的な制度設計だ。基本ルールとしては長子優先(長子相続)、近親優先(長男優先)、または男女同等の長子優先(絶対的長子相続)などの選択肢がある。僕が好んで使うのは『主要家系は長子相続で土地を温存しつつ、分家には扶持や小さな領地を与える』というハイブリッドだ。これによって本家の勢力が分散しすぎず、分家が社会的に生き残る余地も残せる。加えて、未成年継承時の摂政(後見)や摂政評議会、女性継承を認める条件、私生児の扱い(認知か排除か)、婚姻による爵位の移転やモルガナティック婚(爵位を伴わない結婚)など、現実世界の歴史で使われた手段を参考にすると現実味が増す。
運用面での細部も忘れずに。爵位移転の際は公文書(系譜台帳)と印章、宣誓と領民の承認、場合によっては貴族評議会の認可を必須にしておくと紛争解決の手順が自然に描ける。没落・反逆による剥奪(没収)と復権のルール、相続税や封土分割の例外条項(特別残余や皇室特許)、分家が勢力を持ちすぎた場合の締め付け方も設計しておくと政治的ドラマを生みやすい。争いが起きたときの常套手段としては、法廷闘争、貴族評議会での仲裁、聖職者の介入、あるいは軍事的解決—それぞれにコストと正当性の描写を与えるのがコツだ。
ファンタジー要素を加えるなら、魔法や神託による正統性付与を制度に組み込むとユニークになる。血に刻まれた紋章が継承時に
顕現する、あるいは古代の契約により血筋にしか解けない封印があるといった設定は便利だが、万能にすると整合性が崩れるので“例外の作り方”を定めておくことが重要だ。最後に僕からの一言:継承ルールを作るときは、ルールそのものが物語の摩擦(対立や同盟、悲劇)を生むよう設計すると、読者にとってリアルで魅力的な世界になる。