驚いたことに、公式の告知を追っていたらその発表はとても直接的だった。告知文では、作曲者自身が『
げんこつや』のテーマ曲を担当したと明記されていた。自分は最初、クレジットの読み間違いかと思ったけれど、投稿された音源と併せて確認すると確かにその人物の作風が色濃く反映されているのが分かった。楽器の選び方や和音進行、リズムの取り方にいつものクセが見えて、他の仕事と同じ手癖が感じられる。例えば、映画音楽で印象的だった『君の名は』のテーマと比べると、メロディの追い方や空間の作り方で共通点があるが、場面ごとの情感の扱い方はより抑制的で、作品世界に寄り添う意図がはっきりしている。
自分の耳で聞き分けると、曲の中に散りばめられたモチーフやリフが作品のテーマと密接に結びついていて、誰が作ったか一度分かるともう戻れない。発表当時のSNSでは賛否があったが、自分はその選択に好感を持った。外部からの豪華な起用も魅力的だけれど、作中の空気感を最優先にするなら、制作側が信頼できる作曲者に任せるのは自然な判断だと思うからだ。発表の文面にも「この作品のために」といった強い意志が見え隠れしていて、単なる作業ではなく丁寧なコミットメントが伝わってくる。
結局、公式は「作曲者本人が担当した」と発表しており、自分はその決定に納得している。音楽は記憶と結びつきやすく、テーマ曲が作品の顔になることを考えれば、誰がその顔を描いたかは重要だ。今回の選択は、作品の個性を際立たせる良い方法だったと感じており、完成版を改めて聴くたびに、その作曲者の手腕に唸ってしまう。