雨の記憶と、枯れた花の七年目私の名前は柏木穂香(かしわぎ ほのか)。桐島蒼介(きりしま そうすけ)と離婚して七年目。
久しぶりに戻った故郷で、私はカメラを首から下げた小さな男の子に出会った。
その子は、ずいぶんとませてる口調でこう言った。
「お姉さん、僕のパパは有名なカメラマンなんだよ。
僕も将来絶対に、パパみたいにカメラマンなるから。
今、もしモデルになってくれたら、お姉さんは僕のスポンサー様ってことだよ」
思わず吹き出してしまい、私はその申し出を引き受けた。
撮影の途中、男の子がいきなり興奮して私の背後に向けて手を振り、「パパ!」と叫んだ。
つられて振り返り、私は視線の先にいた人物を見て凍りついた。
蒼介も、その場に立ち尽くしていた。
気まずい沈黙が流れた。
それでも私は何食わぬ顔で、男の子が満足するまで撮影に付き合ってあげた。
別れ際、ずっと黙り込んでいた蒼介が突然、口を開いた。
「穂香……お前がもう二度と、この町には戻らないと思っていた」
私は薄く笑って答えた。
「昔の話よ。もうとっくに過ぎたことだわ」