幼馴染を選んだ夫の結末千利と口をきかない状態になってから一か月。
彼は音楽フェスティバルのVIPリストバンドを二本差し出し、結婚記念日に一緒にフェスを見に行こうと私を誘った。
あの日、私は念入りに身支度を整えた。
けれど、入場ゲートでチケットを確認する段になっても、彼は現れなかった。
仕方なく一人で入ろうとリストバンドを取り出そうとしたとき、バッグの中からそれが消えていることに気づいた。
ちょうどそのとき、千利の幼なじみである凪希がSNSを更新した。
写真には、真面目な顔でピンクの綿あめを掲げる千利の姿が写っている。
いつもの冷徹なエリート然とした雰囲気とはまるで別人だった。
添えられた文は――
「ついにドミ・ドラ様に会えました~!いつでもお願いを聞いてくれるあの人に感謝」
バッグの空っぽの仕切りを見つめながら、私はすべてを悟った。
もし以前の私だったら、千利と激しく言い争い、理由を問い詰めていたはずだ。
けれど今は、ただ肩の力が抜けるような感覚しかなかった。
5年。
積み重なった失望があまりにも多すぎて、もう疲れてしまった。