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法廷で裁くのは夫と幼馴染の愛

法廷で裁くのは夫と幼馴染の愛

By:  グングンCompleted
Language: Japanese
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相島香奈(あいしま かな)が裁判官になって初めて担当した案件は、なんと彼女の夫と幼なじみの離婚訴訟だった。 訴状を受け取った時、彼女は何度も確認した。 「長尾さん、この被告の情報、間違ってない?相手は陸川伸年(りくかわ のぶとし)っていう名前?」 事務官の長尾(ながお)は笑って答えた。 「相島さん、これは港市の陸川グループの支配者、陸川伸年社長ですよ。私の担当した案件でミスがあったとしても、この件だけは絶対に間違いありません!」 アシスタントはスマホで「陸川伸年」の検索履歴を見せ、残酷な真実を彼女の目の前に突きつけた。 写真に写っている夫と全く同じ顔を見て、彼女は全身がこわばり、一瞬にして氷の中に落ちたようだった。 書記官の同僚が追い打ちをかけた。 「そうですよ、相島さん、来たばかりだから知らないでしょうけど、陸川社長と幼なじみの林桐子(はやし きりこ)の愛憎劇はもう七年ぐらいになりますよ。法廷沙汰になったのは今回が初めてで、傍聴席の予約は満員御礼なんです!」 香奈は立っているのもやっとで、指先から資料がふわりとテーブルの上に滑り落ちた。 長尾は不思議そうに尋ねた。「相島さん、もしかして陸川社長と知り合いなんですか?」 知り合い?それどころか、彼女と伸年は結婚してもう六年になり、一人の息子までいる。

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Chapter 1

第1話

相島香奈(あいしま かな)が裁判官になって初めて担当した案件は、なんと彼女の夫と幼なじみの離婚訴訟だった。

訴状を受け取った時、彼女は何度も確認した。

「長尾さん、この被告の情報、間違ってないですか?相手は陸川伸年(りくかわ のぶとし)っていう名前?」

事務官の長尾(ながお)は笑って答えた。

「相島さん、これは港市の陸川グループの支配者、陸川伸年社長ですよ。私の担当した案件でミスがあったとしても、この件だけは絶対に間違いありません!」

アシスタントはスマホで「陸川伸年」の検索履歴を見せ、残酷な真実を彼女の目の前に突きつけた。

写真に写っている夫と全く同じ顔を見て、彼女は全身がこわばり、一瞬にして氷の中に落ちたようだった。

書記官の同僚が追い打ちをかけた。

「そうですよ、相島さん、来たばかりだから知らないでしょうけど、陸川社長と幼なじみの林桐子(はやし きりこ)の愛憎劇はもう七年ぐらいになりますよ。法廷沙汰になったのは今回が初めてで、傍聴席の予約は満員御礼なんです!」

香奈は立っているのもやっとで、指先から資料がふわりとテーブルの上に滑り落ちた。

長尾は不思議そうに尋ねた。「相島さん、もしかして陸川社長と知り合いなんですか?」

知り合い?それどころか、彼女と伸年は結婚してもう六年になり、一人の息子までいる。

六年もの間、寝食を共にしてきた男が、実は陸川グループの社長で、しかも他人の夫だなんて?あまりにも荒唐無稽だ。

香奈はぼんやりと首を横に振った。「港市に来たばかりで、そんな人、知りませんよ」

結婚後、彼女は息子の弘安(ひろやす)の世話をするために、A市での弁護士の仕事を辞め、三年間の専業主婦をしていた。

今年、離れて暮らす生活を終わらせるため、苦労して港市の裁判官に合格したばかりで、今夜にでも伸年にこの良いニュースを伝えようと思っていた。

だが、運命が先に彼女に強烈な一撃を食らわせた。

……

法廷の高い席に座った香奈は、ようやく伸年の幼なじみの桐子の顔をはっきりと見ることができた。

桐子は優雅にサングラスを外し、高級ブランドの服を身にまとい、ゆったりと席に着いた。真っ白な指先がテーブルを軽く叩いている。

一方の自分は、息子を一人で育てたせいで日に日にやつれ、生活費を切り詰めるために三年も新しい服を買っておらず、手のひらの薄いマメが、唯一持っていたシルクのパジャマを引っかけて破ってしまったこともある。

開廷時、伸年は姿を見せず、被告代理人の弁護士の東(あづま)だけが来た。

原告の桐子は冷たい顔をして、不機嫌そうにサングラスをテーブルに投げつけた。

「伸年はどうして来ないの?私、離婚したいのよ!」

東は申し訳なさそうに言った。

「陸川社長は国際会議中で席を外せません。社長は、アイビスオークションで落札して、二百億の価値がある『グラスハートブルーダイヤモンド』をすでに別荘に送ったと、今夜は必ず帰って一緒に過ごすと言っていました」

桐子は鼻で笑い、審判席に向かって大声で叫んだ。「今日こそ絶対に離婚するわ!もう耐えられない!」

香奈はプロとしての冷静さを保とうと努めた。「原告は離婚の理由を挙げてください。状況を考慮して検討します」

桐子は腕を組み、訴えた。「彼は私を精神的に追い詰めるのよ。一年の半分しか一緒にいてくれないし、朝目が覚めたらもういなくなってることだってあるの!

それに、ドタキャンもするのよ!一ヶ月もあのブラックカードを使わなかったのに、彼はそれに気づきもしなかった!

あと、先月ロサンゼルスにいた時よ!胃が痛いって言ったのに、夜通し飛んできてお粥を作ってくれなかったの!

彼に電話したのに、会議に集中していて、私が『グラスハートブルーダイヤモンド』が欲しいって言ったのを全く聞いてなかったのよ。今更こんな深情けを見せられても、遅すぎるんだから!」

桐子の、一見すると「訴え」だが、実際は「自慢」である一連の発言に、法廷全体が沈黙した。

特に香奈は、普段は無愛想な仕事中毒の夫に、こんなにも優しい一面があるなんて全く想像できなかった。

彼女は伸年が港市で働く普通のサラリーマンだと思い込み、夫が稼ぐのは大変だろうと、弘安のミルク代も自分の結婚前の貯金から使っていた。

自分がまるで馬鹿みたいに節約し、二人の将来を思い描いていたなんて。

伸年の目には、どれだけ滑稽に映っていただろうか!

彼女は涙で目が潤み、一滴の涙が訴状に落ち、「陸川伸年」という四つの文字がにじんだ。

東弁護士は離婚しないと主張し続け、裁判は膠着状態になった。

その時、伸年から電話がかかってきた。東弁護士はほっと息をつき、スピーカーボタンを押した。

聞き慣れた声が法廷全体に響き渡った。

「もしもし、桐子ちゃん。俺が悪かったよ、ね?また島を一つ買ったから、二日後、その島で一ヶ月間一緒に遊ぼう、それでどう?

俺は離婚したくないんだ……君とやっと結婚できたんだ。離婚するくらいなら、俺を殺してくれ!」

ついに、桐子は吹き出した。「もう、バカね。私、スピーカーにしてるのよ。みんなに聞こえちゃったんだから、もう後悔しちゃだめよ!」

香奈は、自分の夫がそんなベタベタした言葉を言うのを聞いて、心が硫酸に浸されたように、焼けるような痛みに襲われた。

裁判はあっさり結審し、彼女は夫と幼なじみの案件の書類を整理しなければならなかった。

「ピンポン」の通知音。スマホに港市のメディアの速報が届いた。

【陸川グループの社長は愛妻と金湾クラブでデート『離婚騒動』は全くのデマ?!】

添えられた写真には、甘く抱き合う二人が写っていた。

彼女の瞳から光が消え、タクシーに乗って金湾クラブへ向かった。

道中、伸年と過ごした日々の断片が絶えず頭をよぎった。

二人はあるビジネスパーティーで知り合い、偶然、彼女が伸年の厄介な案件を解決してあげた。

もう会うことはないと思っていたが、伸年は猛烈に香奈を追い求め始め、二人はあっという間に恋に落ちた。

幼い頃に父を亡くし、幸せで完全な家庭を強く望んでいた彼女は、伸年のプロポーズに即座に承諾した。

伸年は、彼女の母の前で一生彼女を大切にすると誓った。

結婚後の一年間、香奈は自分が天にも昇るほど愛されていると感じていた。

食事のたびに、伸年は自らエビの殻を剥いてくれ、彼女の嫌いなものを全て覚えていた。

バレンタインデーには、たくさんの花を準備して、自らデザインした指輪を彼女の指にはめてくれた。

彼女の誕生日に、彼は全財産を差し出した。当時、彼女はその千万円に感動して涙を流した。

本当に香奈の心を掴んだのは、伸年が自らパイプカット手術を受けたことだった。

彼は彼女の唇にキスをしながら、深く愛を告白した。「香奈、愛してる。そして、君を尊重したい。君が準備できたら、その時に子供を作ろう」

しかし、結婚二年目、香奈は予期せず妊娠してしまい、伸年も港市に転勤になった。その時から、彼らの関係は急変した。

伸年と友人たちの楽しそうな話し声が、少し開いた個室のドアから聞こえてきた。

「やっぱり陸川さんはすごいよ。A市には嫁と子供と温かい家庭があって、港市には幼なじみとの深い愛情。俺たち独り身には羨ましい限りだ!」

真ん中の男は冷笑した。「羨ましいなら、お前さんにも父親をプレゼントしてやろうか!」

「勘弁してくれ!陸川さんの親父さんが、自分の孫が俺のことを『お父さん』って呼んでるのを知ったら、俺をぶっ殺すだろうよ?ところで、いつになったら桐子にこのことを話すつもりなんだ?」

伸年は指先の煙草を深く吸い込んだ。

「来月、休暇から戻ってきたらだ。桐子とは深い絆で結ばれてる。彼女は俺を助けるために、母親になる資格を失ったんだ。俺は彼女に子供という借りを返したい。きっと弘安のことを気に入ってくれるだろう」

「A市にいるその女が騒ぎ出すんじゃないか?弁護士だそうじゃないか、うまくやれるのか?」

白い煙が立ち込めて、男の表情は見えない。彼は薄情な笑い声で全てに答えた。

「弁護士?それがどうした。彼女は母親いるじゃ。少し手を使えば、香奈は素直に子供を俺に渡すだろうさ」

友人は頷いた。「それもそうだな。そもそも、お前が桐子を怒らせて結婚に追い込んでいなければ、あの女にタダ乗りされなかったんだ。笑ってればいいさ!」

香奈は全身が冷たくなり、心臓が引き裂かれ、一瞬で血の海になったようだった。

彼が自分に優しかったのは、全てが嘘で、彼女と弘安は彼らの喧嘩の際に、何気なく使われた賭けの駒に過ぎなかったのだ。

どうやって金湾クラブから出たのかも覚えていない。外に出るとすぐに、遠く離れたカリフォルニアの先輩から電話がかかってきた。

「香奈、裁判官の仕事には慣れたか?きっと大変で給料も安いだろう。正直言って、カリフォルニアに来ないか?うちの法律事務所はもうすぐ上場するんだ。パートナーの地位を用意してやるよ」

彼女はためらうことなく、すぐに返事をした。

「分かったわ。十日後、カリフォルニアで会いましょう」
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