兄妹の結びつきを人間臭く、時にユーモラスに描いた作品の代表格として挙げたいのは『妹さえいればいい。』だ。物語の中心にいる兄は創作や仕事に行き詰まり、妹に精神的なよりどころを求める姿が終始描かれる。単なる
ブラコン描写に留まらず、創作に対する焦燥や孤独、承認欲求が絡み合っていて、妹とのやり取りが彼の救いにもなれば痛みの源にもなる――その揺れが胸に刺さる。
作品はコメディの軽やかさと、時折見せる静かな哀しみを両立させている。周囲の人物との関係や創作業界の空気感も巧妙に絡めることで、兄が妹に寄りかかる理由が単純な依存ではないことを伝えてくる。読み進めるうちに、兄の弱さや照れ、そして妹の無自覚な強さが少しずつ補完され、最後にはじんわりと温かい余韻を残す。
感動の種類は静かで内向的だ。派手なドラマはないけれど、心の機微を丁寧に拾う作りが好きなら強く薦めたい作品だ。