許せない過去が、風に吹かれて結婚前夜、姉と帰宅中に突然拉致された。
家族が用意した身代金は、姉の分だけ。
私は廃工場に閉じ込められ、三日三晩地獄のような日々を過ごした。
婚約者の周藤旭(しゅうとう あさひ)は即座に冷たい声明を出した。
【清原雨音(きよはら あまね)に不祥事あり。周藤家の嫁に不適格。
縁組の相手は清原家の長女・瑠花(るか)に変更する】
瞬く間に私は新浜市社交界の笑い者になった。
両親までも私を恥じ、ついに家から追い出された。
命を絶とうとしたその時、新浜市の名門・菅田家の長男、菅田晃成(すがた あきなり)が現れた。
彼は強く抱きしめ、掠れた声で言った。
「過去なんて、もう気にするな」
その後、街中が騒ぐほどの豪華な結婚式を挙げてくれた。
結婚当初、私を傷つけまいと、私に一度も触れてこなかった。
その優しさに包まれ、私の心も体も徐々に癒え、彼の愛を受け入れられるようになった。
関係を持ってから一ヶ月後、妊娠検査の結果を手に喜びを伝えようとしたとき、偶然、晃成と旭の会話を聞いてしまった。
「お前の考えが分からない。昔、瑠花のために雨音を追い詰めたくせに、今さらあいつに子どもを産ませようって?」
晃成は冷静に答えた。
「瑠花の息子が重病だ。臍帯血がなければ助からない。瑠花は体が弱くて、もう産めない。
だが雨音なら大丈夫だ。あんな目に遭っても、ちゃんと元に戻ったんだからな。必要なら、何人でも産んでもらう。
残酷だと思う?分かってるよ。だから、余生全部かけてそばにいる。
雨音にとって、これで十分だろう」