道具選びは思ったより奥が深い。何度も工具を買い替えたり改良したりした経験から話すと、ハンマーは重さと顔の形がすべてを決める道具だと感じている。
普通の
鍛治仕事なら、0.5kg前後(約1〜1.5ポンド)のハンマーが振りやすくて疲れにくい。刃物を仕上げるなら小ぶりで丸顔のハンマー、引き延ばしや板材の作業が多ければクロスピン(横矧)やストレートピンの先端を持つ重めのヘッドが便利だ。ハンマーのヘッド材は高炭素鋼が一般的で、フェイスは平らでバリが少ないものを選びたい。柄の長さは腰から肩の可動域に合わせて選ぶと疲労が減る。握り心地は実際に振ってみないと分からないが、グリップが滑りにくいことと目(ヘッドの貫通穴)との係合がしっかりしているかを確認する。
火床については、作るものと作業場所で選択が分かれる。小物中心ならポータブルなプロパン炉で十分で、立ち上がりが早く掃除が楽だ。鉄を大きく加熱して鍛接や大物をやるなら、コールフォージ(炭火炉)の方が高温域での熱容量があり、炎のコントロール幅も広い。炉の大きさは加工する最大の材料よりやや大きめ、通気(ブロワー)と換気は必須。耐火材は火床の寿命に直結するので、耐火レンガやセラミックファイバーで断熱と耐久性を確保すると長く使える。
安全面は絶対に手を抜かないこと。
適正な風量で燃焼させ、火床周りに可燃物を置かない、目や耳の保護具を着用する。最初の頃は道具の重さや炉の特性に慣れるまで時間がかかるが、道具を自分の手に馴染ませていくプロセス自体が面白い。最後に、使い勝手が合わなければ遠慮なく替えていけば良いといつも思っている。