妹を殺した教団に復讐するはずが、愛を教え込まれた~罰ではなく、おまえを選ぶまで

妹を殺した教団に復讐するはずが、愛を教え込まれた~罰ではなく、おまえを選ぶまで

last updateLast Updated : 2026-05-17
By:  中岡 始Updated just now
Language: Japanese
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同じ東京にいながら、妹を救えなかった。 美里が遺した手記に記されていたのは、新興宗教・白燈院が“救い”の顔で近づき、罪悪感に値札をつけ、祈りさえ搾り取っていく地獄のような仕組みだった。 妹の死の真相を暴くため、和希は再会した幼なじみの弁護士・芳人と手を組む。 だが、その協力は無償ではない。 冷静で、美しく、どこか危うい芳人は、復讐に取り憑かれた和希に容赦なく踏み込み、傷も罪も欲望も暴いていく。 これは、奪われた祈りを取り戻すための復讐劇。 けれどその先で待つのは、断罪か、破滅か、それとも罰ではなく誰かを選ぶための愛か。

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Chapter 1

1.白い相談室

雨は降っていなかったが、夜の東京には、濡れた舗道を思わせる光があった。

仕事帰りの人波が少しずつほどけていく時間だった。大通りから一本入ると、店の看板は急に減り、代わりに小さな事務所や低いマンションの灯りが静かに並ぶ。派手な音楽も、呼び込みの声もない。信号が変わるたびに、遠くで車の流れが薄く唸り、それがまたすぐに建物のあいだへ吸い込まれていく。

長浜美里は、スマートフォンを握ったまま立ち止まった。

地図アプリの青い点は、もう目的地の上に乗っている。画面を閉じてもいいはずなのに、指はそこから離れなかった。予約確認メールを開く。件名の下に並ぶ、日時と場所。白燈院 東京相談室。短い案内文。初めての方も安心してお越しください、という、少しも強くない言葉。

画面を閉じる。

また開く。

何度も見た文面なのに、いま改めて読むと、そこに書いてある場所は、自分とは無関係な誰かの行き先のようにも見えた。こんなところへ来る人は、もっと切羽詰まっていて、もっと迷いがなくて、もっと普通ではない人間なのではないかと、さっきから美里は何度目かの考えに戻っていた。

目の前の建物は、宗教施設には見えなかった。七階建てほどの細いビルで、一階には小さな設計事務所が入っており、ガラス越しに観葉植物とデスクライトが見える。二階に上がる外階段の脇に、控えめな案内板が立っているだけだった。白地に細い文字で、白燈院 東京相談室。下に、ご予約の方はこちらからお入りくださいとある。どこにも金色の装飾はなく、提灯も、読めない経文も、いかにもそれらしい匂いもない。

むしろ、静かすぎるくらい整っていた。

それが少し、怖かった。

帰ろうと思えば帰れた。

駅は歩いて十分もかからない。さっき通り過ぎたコンビニで温かい飲み物を買って、電車に乗って、自分の部屋に戻るだけだ。誰にも見咎められない。ここに来ようと決めたことだって、誰にも言っていない。予約をすっぽかしたところで、困るのは自分だけだ。いや、困るのも、たぶん今夜だけだろう。メールを消してしまえば、何もなかったことにできる。

それでも足が動かなかったのは、帰った先にあるものが、結局ここへ来る前の苦しさそのままだと分かっていたからだ。

部屋に戻れば、冷蔵庫の低い音がして、洗いきれていないマグカップが流しに残っていて、脱ぎ捨てたままのカーディガンがソファの端に引っかかっている。何も変わらない、いつもの一人暮らしの部屋。そこに入った瞬間、また同じことを考えるだろう。眠る直前まで。あるいは眠れないまま朝まで。

あのときのこと。

口に出せないこと。

誰にも言えないのに、頭の中ではいつまでも形を変えずに残っているもの。

それは、自分の中だけで考えていると、どんどん現実味を増した。罪悪感と呼ぶには、もう少し生ぬるい重さがあった。胸の奥に沈んだ鉛のようで、時間が経っても軽くならない。忘れようとしたぶんだけ、かえって輪郭が硬くなる。

美里はもう一度だけ、建物の案内板を見上げた。

二階の窓には、薄いレースのようなブラインドがかかっている。その向こうに、暖色の灯りがやわらかく滲んでいた。オフィス街の夜にしては、人の生活に近い色だった。冷たい蛍光灯ではなく、湯気の立つ部屋のような、白と木の匂いを想像させる光。

このまま引き返したら、きっとまたしばらくは何もできない。

そう思った瞬間、美里はやっと階段に足を乗せた。

二階までの数段が、ひどく長かった。

扉の前にも、派手な表示はない。すりガラスに細い文字で相談室とだけ印字され、その下に、予約名をお知らせくださいと書かれている。呼び鈴の横に小さな鉢植えがあり、葉の丸い緑が照明を受けて静かに光っていた。手入れが行き届いているのが分かる葉だった。先端が枯れていない。それだけのことなのに、そこに人の気配があった。

美里は息を吸って、指先で呼び鈴を押した。

すぐに足音がして、内側で鍵の外れる音がする。わずかに開いた扉の隙間から、やわらかな空気が流れ出てきた。香りはほとんどない。強いていえば、木の新しい匂いと、清潔な布の匂いがした。

扉を開けたのは、三十代前半くらいの女性だった。ベージュの柔らかなブラウスに、薄いグレーのカーディガンを羽織っている。きちんとしているのに、威圧感がない。髪は低い位置でゆるくまとめられ、顔立ちはどこにでもいそうなほど穏やかだった。

その普通さに、美里は少しだけ肩の力が抜けた。

「こんばんは」

女性は声までやわらかかった。

「ご予約の方でしょうか」

その問いに返事をしようとして、美里の喉はひどく狭くなった。たったそれだけのことなのに、名前を言うまでに一拍かかった。誰にも言えなかったことを抱えたままここへ来た自分が、名前を名乗った瞬間、何か取り返しのつかない側へ入ってしまう気がしたからだ。

「……長浜、です」

自分の声が思っていたより掠れていた。

女性は表情を変えず、小さく頷いた。

「長浜美里さまですね。お待ちしていました」

待っていました。

その言葉だけで、胸の奥が不意に揺れた。

責められなかったことに、美里はあまり慣れていなかった。もちろん、誰かに露骨に責められたわけではない。ただ、あのことについては、仮に打ち明けたとしても、結局どこかで顔を曇らせられるだろうと知っている。驚かれるか、困られるか、善意の言葉で遠ざけられるか。そのどれかだと思っていた。

だから、まるで予定通りの来訪を迎えるように、自分の名前を受け取られただけで、涙腺の裏が熱くなった。

「どうぞ、中へ」

女性に促されて一歩入ると、足音がふっと変わった。床は硬いタイルではなく、少し柔らかさのある素材らしく、ヒールの音が響きすぎない。白を基調にしながら、壁の一部や棚に明るい木目が使われている。広すぎない空間に、背の低いソファが二脚と、小さな丸テーブル。カウンターの上には受付用の端末があるが、病院のような無機質さはなかった。照明は明るすぎず暗すぎず、顔色を責めない色をしていた。

宗教施設というより、少人数制のカウンセリングルームか、女性向けの相談サロンに近い。

壁に掲げられているパネルを見て、美里は思わず足を止めた。

心の相談。

大切な存在との別れに悩む方へ。

一人で抱えなくていい痛みがあります。

そこに、救済だの浄化だの、強い言葉は書かれていなかった。霊験や奇跡を謳う文句もない。何か超常的なものにすがる場所というより、ただ、話してもいい場所だと言われているようだった。

その控えめさが、美里には都合よかった。

自分は頭のおかしいことをしに来たのではない。

ただ相談に来ただけだ。

ただ、誰にも言えなかったことを少しだけ話しに来ただけだ。

その言い訳を、自分自身に許したかった。

「こちらへどうぞ。少しだけお待ちいただきますね」

受付の女性に案内されて、窓際のソファに座る。クッションは柔らかすぎず、身体を預けても沈み込まない。冷えた指先を膝の上で重ねていると、女性が湯気の立たない白い湯呑みのようなカップを運んできた。

「白湯です。熱くないので、よければ」

白湯。

その選び方まで妙にやさしかった。甘い香りのする飲み物でも、過剰に気遣った高級茶でもない。ただ喉を刺激しない温度の湯。

「ありがとうございます」

そう言って受け取ると、ほんのりとした温かさが指先に移った。冷えていたことに、そのとき初めて気づく。口をつけると、ぬるい温度が喉にすべり落ちた。味はしない。だからこそ、身体の内側だけが静かにほどけた。

受付の女性は、必要以上に話しかけてこなかった。問診票のようなものも今は出されず、名前の確認以外、何も問われない。カウンターへ戻ったあとも、キーボードを叩く音は控えめで、空調の音に紛れてしまうほどだった。どこかで時計が鳴ることもない。静かだが、息が詰まる静けさではない。誰かの小声や紙の擦れる音が、ごく薄く空間に溶けている。

それなのに、美里は急に泣きそうになった。

人のいない場所でなら、もう何度も泣いていたはずなのに、こういうところでは逆に持ちこたえられなくなる。電車の中でも、職場のトイレでも、外ではずっと大丈夫な顔を作ってきた。何でもない声で電話に出て、愛想よく笑って、締め切りの確認をして、コンビニで夕飯を選ぶような顔で生きてきた。

なのに、ここではまだ何も聞かれていない。何も打ち明けていない。ただ座って、名前を呼ばれ、白湯を出されただけだ。

それだけで、ずっと張っていた糸が少し緩む。

たぶん、責められないと分かったからだった。

あるいは、まだ責められていないだけなのかもしれない。それでも、今この瞬間だけは、何かを説明する前にすでに減点されている空気がない。そのことが、かえって苦しかった。

美里は視線を落とし、カップの縁を見つめた。白い陶器の曲線が、灯りを受けて柔らかく光っている。こんなふうに静かな場所に、自分がいていいのだろうかと思う。自分が持っているものは、もっと乱れていて、もっと汚れていて、こういう白い部屋には似合わないはずなのに。

帰りたい、と思う。

同時に、帰りたくない、とも思う。

このまま名前を呼ばれず、ただ座っているだけなら楽なのに、とも思うし、早く誰かに聞いてほしい、とも思う。

矛盾した気持ちが胸の中でせめぎ合い、白湯を飲み下した喉のあたりを行き来する。

もし、話してしまったらどうなるのだろう。

全部ではなくても、一番重いところを少しでも口にしたら、その瞬間、目の前の人の表情は変わるのだろうか。やっぱりそうですか、という顔をされるのか。それは大変でしたね、という優しい声で、けれど心の奥では線を引かれるのか。

それでも、ここまで来た。

その事実だけが、かろうじて美里を座らせていた。

スマートフォンが膝の上でかすかに震えた気がして、慌てて画面を見る。通知はない。幻のような感覚だった。ここ数か月、何かに急かされている気配が身体から抜けなくなっている。支払いの日付、未読のメール、もう見たくない名前、履歴の残る番号。確認しなければならないものばかりだった。

だが今、画面に映っているのは、自分のぼんやりした顔だけだ。ガラスの黒に、白い照明が細く筋を作っている。

兄に連絡すれば、と思わなかったわけではない。

その考えを思い浮かべるだけで、美里の胃の奥は鈍く縮んだ。兄の顔はすぐに浮かぶ。真っ直ぐで、優しくて、だからこそ言えない。もし聞かれたら、きっと困らせる。軽蔑はしないかもしれない。責めないかもしれない。余計に、それがつらい。自分のしたことを、自分より大切に抱えさせるのは嫌だった。

誰にも言えない。

その結論ばかりが先にあり、それでも一人ではもう抱えきれなくて、だからここに来た。

美里はゆっくり息を吐いた。

視界の端で、受付の女性が立ち上がるのが見えた。近づいてくる足音はやはり響きすぎない。

「長浜さま」

柔らかな声で名前を呼ばれ、美里は反射的に背筋を伸ばした。

「お待たせいたしました。ご案内しますね」

立ち上がろうとして、膝が少し重いことに気づく。長く座っていたわけでもないのに、身体のほうが先に緊張しているらしい。カップをテーブルへ戻すとき、指先がわずかに震えた。女性はそれを見ても何も言わなかった。ただ、ごく自然な動作で前を歩き出す。

通路の先には、個室らしい扉がいくつか並んでいた。どれも白い扉に小さなプレートがついているだけで、病院の診察室にも、会議室にも見える。最奥の一室の前で女性が立ち止まり、静かにノックをした。

内側から、どうぞ、という落ち着いた声が返る。

それだけで、美里の心臓がひとつ大きく鳴った。

「こちらへ」

扉が開く。

個室の中も、外の待合と同じように白と木で整えられていた。大きな机ではなく、向かい合うように置かれた一人掛けの椅子と、小さな低いテーブル。窓際には細葉の植物が置かれ、照明はやはり柔らかい。閉じた空間なのに圧迫感がないのは、壁際に余計なものがないからかもしれなかった。

その椅子の向こうに、ひとりの女性が座っていた。

美里と同じように、過剰ではない色の服を着ている。年齢は三十代半ばくらいだろうか。整えられた髪、穏やかな目元、けれどただのやさしさだけではない、相手の顔を見て待つ人の静けさがあった。机も書類の壁もないその距離で、その人は立ち上がり、軽く頭を下げた。

「こんばんは。秋山と申します」

秋山志保。

その名を聞いた瞬間、美里は、ここまで来てしまったのだと思った。

もう帰れる。いまならまだ、すみません、やっぱりやめますと言って扉を出ていくこともできる。誰にも引き止められないだろう。責められもしないだろう。きっとこの人は最後まで穏やかな顔のまま、どうぞお大事に、と言うだけだ。

それでも、美里の足はその場に止まったままだった。

部屋の空気は静かで、清潔で、やさしかった。

そのやさしさの前で、自分の抱えているものだけが、急に輪郭を持ちはじめる。これまでずっと胸の底で濁っていたものが、言葉になる前の形で、喉のあたりまで浮かんでくる。

この部屋で何かが変わる。

それが救いなのか、もっと深い場所への入り口なのかは、まだ分からない。

ただ、もう何も起きていないふりだけはできないと、美里はその白い部屋の中で初めて思った。

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1.白い相談室
雨は降っていなかったが、夜の東京には、濡れた舗道を思わせる光があった。仕事帰りの人波が少しずつほどけていく時間だった。大通りから一本入ると、店の看板は急に減り、代わりに小さな事務所や低いマンションの灯りが静かに並ぶ。派手な音楽も、呼び込みの声もない。信号が変わるたびに、遠くで車の流れが薄く唸り、それがまたすぐに建物のあいだへ吸い込まれていく。長浜美里は、スマートフォンを握ったまま立ち止まった。地図アプリの青い点は、もう目的地の上に乗っている。画面を閉じてもいいはずなのに、指はそこから離れなかった。予約確認メールを開く。件名の下に並ぶ、日時と場所。白燈院 東京相談室。短い案内文。初めての方も安心してお越しください、という、少しも強くない言葉。画面を閉じる。また開く。何度も見た文面なのに、いま改めて読むと、そこに書いてある場所は、自分とは無関係な誰かの行き先のようにも見えた。こんなところへ来る人は、もっと切羽詰まっていて、もっと迷いがなくて、もっと普通ではない人間なのではないかと、さっきから美里は何度目かの考えに戻っていた。目の前の建物は、宗教施設には見えなかった。七階建てほどの細いビルで、一階には小さな設計事務所が入っており、ガラス越しに観葉植物とデスクライトが見える。二階に上がる外階段の脇に、控えめな案内板が立っているだけだった。白地に細い文字で、白燈院 東京相談室。下に、ご予約の方はこちらからお入りくださいとある。どこにも金色の装飾はなく、提灯も、読めない経文も、いかにもそれらしい匂いもない。むしろ、静かすぎるくらい整っていた。それが少し、怖かった。帰ろうと思えば帰れた。駅は歩いて十分もかからない。さっき通り過ぎたコンビニで温かい飲み物を買って、電車に乗って、自分の部屋に戻るだけだ。誰にも見咎められない。ここに来ようと決めたことだって、誰にも言っていない。予約をすっぽかしたところで、困るのは自分だけだ。いや、困るのも、たぶん今夜だけだろう。メールを消してしまえば、何もなかったことにできる。それでも足が動かなかったのは、帰った先にあるものが、結局ここへ来る前の苦しさそのままだと分かっていたからだ。部屋に戻れば、冷蔵庫の低い音がして、洗いきれていないマグカップが流しに残っていて、脱ぎ捨てたままのカーディガンがソファの端に引っかかっている。何
last updateLast Updated : 2026-03-25
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2.あなたは悪くない
個室の扉が閉まる音は、ひどく小さかった。外の待合の気配が一枚向こうへ遠のき、部屋の中には空調の静かな音だけが残る。白い壁、明るい木の棚、角の丸い低いテーブル。窓には厚すぎない生成りのロールスクリーンが下ろされていて、夜の気配は完全には遮られず、外の灯りだけが淡く布越しに滲んでいた。どこにも仏像はなく、線香の匂いもしない。観葉植物の葉先が、照明を受けてやわらかく艶を返している。椅子に腰を下ろした美里は、膝の上で両手を組んだ。指先がまだ少し冷たい。さっき白湯を飲んだはずなのに、身体の奥のこわばりまでは温まりきっていなかった。向かいに座った秋山志保は、すぐには話し始めなかった。急かさず、相手の呼吸が落ち着くのを待つ人の間の取り方だった。年齢は三十代半ばほどに見える。優しいだけではない、よく研がれた静けさを持っている。柔らかい色のブラウスに、飾り気のない細い腕時計。声を張らなくても届く人の落ち着きが、その人の全身にあった。テーブルの上に、ティッシュの箱と、蓋つきのガラスボトル、水の入った小さなグラスが置かれている。どれも最初からそこにある。泣くかもしれない人のための準備が、目立たないように整っているのだと、美里はそのときやっと気づいた。秋山は、ごく穏やかに微笑んだ。「緊張なさいますよね」美里は、うまく笑い返せなかった。ただ、曖昧に頷く。秋山はそれ以上、その頷きに意味を求めなかった。「ここでは、無理に順番どおりに話さなくて大丈夫です」秋山は、机の上のメモにも手を置かずに言った。「うまく言葉にならないことは、そのままでかまいません。話せるところからでいいですし、今日は来てみただけ、でも大丈夫です」その言い方に、美里はほんの少しだけ顔を上げた。来てみただけでもいい。それは、許可のように聞こえた。これまで誰かに相談しようと考えるたび、美里の頭の中には、まず説明しなければならないことがいくつも並んだ。いつから、何があって、どこで間違えて、どこまで自分が悪くて、どうして今さらそんなことを言うのか。そうやって最初から最後まで筋道立てて話せなければ、相談する資格すらない気がしていた。けれど今、目の前の人は、整った説明を要求していない。それだけで、喉の奥に詰まっていたものが少しほどける。「……何から話したらいいか、分からなくて」やっと出た声は、自分でも
last updateLast Updated : 2026-03-25
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3.祈りの手順
最初の相談から四日後、美里はまた同じビルの前に立っていた。前回ほど足はすくまなかった。迷わなかったわけではない。ただ、一度扉の向こうに入ってしまえば、あの白い待合と、声を荒げない人たちの空気が待っていることを知っていた。その記憶が、夜の街よりも先に身体を動かした。相談室の受付で名前を告げると、前と同じ女性が穏やかに会釈した。二度目だからか、必要以上に確認されることもない。来ることが不自然ではない場所として、美里はもうそこに受け入れられていた。個室で向かい合った秋山は、前回の続きから当然のように話を始めた。「その後、眠りはいかがでしたか」美里は、少しだけ考えてから首を横に振った。「一晩だけ、少し楽だった気がして」それは嘘ではなかった。最初の面談の夜、美里は帰り道にたしかに呼吸がしやすくなっていた。眠るまでの時間も、いつもより短かった。けれど次の日の夜には、また同じところに戻った。胸の奥の重さは、少し動いただけで、消えたわけではなかった。「でも、戻りました」そう言うと、秋山は同情しすぎない顔で頷いた。「そうでしたか」間違っていなかった、という響きがそこにはあった。楽になりきらないことは失敗ではなく、次の説明へつながる途中経過として扱われる。「最初に少し緩む方は多いんです」秋山は、テーブルの上に置いた手を動かさずに言った。「それだけ、長く張りつめていらしたということでもありますから」長く張りつめていた。その言い方は、責めるより先に疲労を見つけてくれる。美里は視線を落とした。自分を責める言葉はいくらでも思いつくのに、疲れていたのだと誰かに言われるだけで、涙に近いものが喉元へ上がってくる。秋山は、その日の面談でも、露骨な言葉を使わなかった。けれど会話は確実に、前より少しだけ深い場所へ進んだ。「前回、終わらせられなかった感じがあるとおっしゃっていましたよね」美里は頷く。「はい」「その思いは、日によって濃さが違いますか」「違いま
last updateLast Updated : 2026-03-26
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4.家族の支えも供養です
アプリの残高を見た夜、美里はしばらく床に座ったまま動けなかった。部屋の灯りはつけているのに、画面の白さだけが妙に強く見える。銀行の残高、カードの利用明細、来週引き落とされる家賃、携帯代、水道代。数字は静かで、正確で、容赦がなかった。見なければ、まだ曖昧な不安で済んでいたものが、見た途端に輪郭を持つ。あと何日で給料日か、今の財布の中にいくら入っているか、冷蔵庫の中身で何日もたせられるか。そういう現実の細い紐が、一斉に首へ巻きついてくる。シンクには朝のマグカップがそのまま残っていた。洗おうと思えば洗えるのに、立ち上がる気力がなかった。空気は乾いていて、冷蔵庫の低い唸りだけが部屋に満ちている。ワンルームの静けさは、ひとりでいるときほど広く感じるのに、その夜は妙に狭かった。美里はスマートフォンをもう一度見た。履歴の中に並ぶ、白燈院に関わる支払い。都内相談所の相談料。灯明。個別の祈り。継続浄化の申込み。交通費。送迎費は表向き別名になっているが、自分には分かる。どれも一回だけなら払えた額だ。高級なバッグではない。旅行でもない。たった数千円、あるいは一万円前後。そのたびに、これで少しでも楽になるならと思って払った。積み重なると、生活が削れていた。今月、美容院に行かなかった。会社帰りのコンビニでデザートを買うのをやめた。昼食も、社食でいちばん安い定食ではなく、おにぎりだけで済ませる日が増えた。ファンデーションが減っているのに買い替えを先延ばしにしている。そういう細かい我慢で穴を塞いでいたつもりだったのに、数字はすでに塞ぎきれないところまできていた。画面を消した途端、暗いガラスに自分の顔が映る。頬が少しこけて見える。目の下の影も濃い。このままは無理だ、と美里は初めて明確に思った。楽になるために始めたはずのことが、もう日常そのものを壊し始めている。家賃が払えなかったらどうするのか。携帯が止まったら。食費をさらに削ったら。そんな当たり前の恐怖が、祈りより先に胸へ迫ってきた。やめなければならない。その結論は出た。出たのに、その次がなかなか続かなかった。やめて、何も変わらなかったらどうしよう。やめ
last updateLast Updated : 2026-03-27
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5.助けてと言えない
門を出てしばらく、美里はどちらへ歩けば駅へ着くのかも分からないまま足を動かしていた。夜の空気は冷たかったが、頬を打つほどではない。ただ、肺の奥までうまく入ってこない。吸っているはずなのに足りない。別院の白い壁が背後へ遠ざかっていくたび、少しはましになるかと思ったのに、胸の狭さは消えなかった。ようやく大通りへ出ると、車のヘッドライトが連なって流れていく。コンビニの白い看板、ファミリーレストランの窓、交差点の信号機。郊外の夜ですら、世界は普通に動いている。誰かが夕食を食べ、誰かが帰宅し、誰かが子どもを車から降ろしている。さっきまで自分の中で何かが決定的に壊れた気がしていたのに、街はそれと無関係だった。駅へ向かう道の途中で、美里は一度だけ立ち止まった。バッグの中のスマートフォンが重い。別院を出てから、一度も見ていない。見れば、何かが来ているかもしれない。兄から、職場から、通販の通知かもしれない。何でもない知らせのひとつひとつが、自分の壊れ方と噛み合わない気がした。それでも取り出して画面をつける。暗いガラスに、自分の顔が一瞬だけ映ってから、通知欄が現れる。未読のメールが一件、広告のプッシュ通知が二件。兄からは何も来ていない。ほっとしたのか、寂しかったのか、自分でも分からないまま、美里はトーク一覧を開いた。和希。その名前はいつも、一番上かそのすぐ近くにいる。特別頻繁にやりとりするわけではない。けれど、何でもない文のやりとりが絶えず途切れない距離に兄はいた。おつかれ、元気、今度ごはんどう、あの店まだあるかな。そういう、生活の端に置かれた言葉たち。そこへ指が伸びる。トーク画面を開く。最後の文面は、兄の「最近どう?」に対して自分が返した「また予定見て連絡するね」だった。淡々としている。普通だ。そこに何の異常もない。だから逆に、いまこの画面へ何かを書き込むことが、ひどく大ごとに思えた。美里は文字入力の欄を開いた。助けてそこまで打って、指が止まる。白い三文字。短い。簡単だ。このまま送ればいいだけだ。兄はきっとすぐに気づく。電話をかけてくるかもしれない。どこにい
last updateLast Updated : 2026-03-27
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6.兄さんへ
ペン先が紙に触れる直前で、美里はまた手を止めた。白い罫線の上に、まだ何もない。さっき書いた「兄さんへ」の四文字だけが、別の紙の上で乾いている。封筒の表にも、もう同じ宛名を書いた。逃げ道を自分でひとつずつ塞いでいるみたいだった。部屋は静かだった。冷蔵庫の低い音。流しに残ったコップの縁に、天井の光が薄く反射している。テーブルの端には、途中まで読んだ文庫本と、口紅の蓋、レシートが二枚。どれも今日の前までの生活の続きみたいに置かれているのに、その中心にあるノートだけが、この部屋の空気を別のものへ変えていた。何を書けばいいのか分からない、と思う時間は、もう過ぎていた。本当は、書かなければならないことが多すぎるのだと、美里は知っていた。ごめん、だけでは足りない。助けてほしかった、だけでも足りない。兄がこの先、自分の残したものと向き合うとき、何も知らないままではもっと苦しむ。けれど全部をまっすぐ書けば、兄はたぶん調べる。あの場所へ行く。怒る。自分の代わりに何かを背負おうとする。だから書かなければならないのに、書けば兄を巻き込む。その矛盾のまま、紙の前に座るしかなかった。美里はゆっくり息を吸い、ようやく最初の一行を書いた。兄さんへ。ごめんなさい。その下に、しばらく何も続かなかった。兄の顔が浮かぶ。スマートフォン越しの短い文ではなく、もっと古い記憶のほうから先に来る。小さいころ、転びそうになったときに手を引いてくれたこと。大学へ入って一人暮らしを始めたあとも、季節が変わるころに必ず連絡をくれたこと。仕事が忙しくて会えない時期でも、食べてる、ちゃんと寝てる、と訊く声が、押しつけがましくなく優しかったこと。そういう人に向かって、何を書くのか。謝るだけでは足りないし、真実だけでも足りない。美里はペン先を紙に戻した。たぶん、兄さんが思っているより、ずっと前から苦しかったです。こうして文章にすると、ひどく平凡だった。苦しかった。そんな言葉で済ませていいのかと思う。けれど、あの重さを他の言葉に置き換えること
last updateLast Updated : 2026-03-28
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7.知らせのあとに残る静けさ
十月の終わりにしては、空が妙に白い夕方だった。和希は営業企画部の島で、ようやく今日最後の修正ファイルを閉じた。画面の右下に表示された時刻は、十八時四十分を少し回っている。会議用の資料を先方へ送り直し、上司から返ってきた確認メールに短く返信し、デスクの隅に寄せてあったマグカップを手に取る。コーヒーはもう冷え切っていて、表面に薄い膜が張っていた。オフィスには、まだ人が残っていた。電話を終えた誰かの椅子が軋み、少し離れた席ではキーボードを打つ音が細かく続いている。天井の蛍光灯は均一に白く、窓の向こうの夕方の色をほとんど消していた。ガラスの反射には、向かいの席の男が手を額に当ててディスプレイを睨んでいる姿と、自分の肩の線がぼんやり重なって見えた。今日はこのまま帰れる、と思っていた。今週は珍しく大きな火急案件がなく、来週の提案書の叩き台も午前中に整っている。帰りに駅前のスーパーへ寄って、切らしていた洗剤を買うつもりだった。ついでにコンビニでサラダでも足そうかと、そういう、取り立てて意味のない予定を頭の端に置きながら、和希はノートパソコンの蓋に手をかけた。そのとき、スマートフォンが震えた。デスクの上に伏せていた画面が、白く明るくなる。通知欄の一番上に表示されたのは、母の名前だった。珍しい、と思った。母は急ぎの用でない限り、和希の勤務時間を避けて連絡してくる。メッセージではなく通話なのも珍しかった。その珍しさだけが、まず頭に入る。嫌な予感と呼ぶには、まだ輪郭の薄いものだった。和希は無意識に、背筋を少し伸ばした。通話ボタンを押し、椅子を引いて立ち上がる。周囲の視線が集まらないように、オフィスの隅の給湯スペースのほうへ歩きながら、耳にスマートフォンを当てた。「もしもし」数秒、返事がなかった。回線の向こうで、息を吸うような小さな音がして、それから母の声がした。ひどく低く、乾いている。泣き声ではなかった。泣き声より、むしろまずい種類の静けさだった。「和希」名前を呼ばれただけで、和希の足が少し止まった。「…&helli
last updateLast Updated : 2026-03-29
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31.会社の名札
昼を少し過ぎた頃、芳人の事務所の窓には、白すぎる秋の光が斜めに差し込んでいた。夜の調査と違って、昼の光の下では、書類も端末も輪郭がはっきりしすぎる。机の上に並べたファイル、社員証、名刺入れ、スケジュール帳、会社の封筒。どれも昨日までは、ただの勤務先の持ち物に見えただろう。だが今は、その一つひとつが、美里の私生活へ続く別の入口みたいに思えた。和希は美里の社員証を指先で持ち上げた。細いストラップのついたプラスチックのケースに、証明写真が収まっている。少しだけ口元を引き締めた、仕事用の顔だった。私服でも、実家でも、兄と飯を食う時でもない、美里が会社で使っていた表情。名札の下には社名と部署名があり、その下にフルネームが整った活字で印字されている。社員証ひとつで、急に「働いていた人間」になるのが嫌だった。美里はもちろん働いていた。そんなことは分かっている。毎日会社へ行き、取引先に頭を下げ、メールを返し、会議に出ていたはずだ。だが兄として知っていたのは、その大枠だけだった。忙しい、疲れた、最近少ししんどい。そういうぼんやりした輪郭しか持っていなかった。社員証に印字された部署名や、首から下げていた名札の重さまでは、何も知らない。「勤務先の端末は、ログインできる範囲だけ見る」芳人が、向かいの机から言った。ノートパソコンを開き、メモ用のファイルを立ち上げたまま、声だけが低く届く。「私用と業務の境目が曖昧になってるところを拾う。最初から私的な男を探すんじゃなくて、仕事の流れの中で浮く相手を見る」和希は社員証を机の上へ戻した。「分かってる」そう返しながらも、胃の奥は少しだけ硬かった。白燈院までは、まだ「苦しんだ妹」と「搾取した側」という構図で見られた。けれど勤務先を辿れば、その手前にいるもっと俗な現実が出てくる。会社、取引先、担当者。そこにただの男がいる気配がする。それが、和希には妙に嫌だった。美里の私用ノートパソコンの中には、会社用メールを確認するためのウェブ画面の履歴が残っていた。完全な社内端末ではないが、業務を家に持ち帰る時に使っていたのだろう。ログイン状態が切れていなかったのは、幸運なのかどうか分からない。ただ、いまはそれに頼るしかない。芳人がテーブルの中央へメモ帳を寄せる。「得意先ごとに分ける」和希は頷き、メールの送受信一覧を開いた。最初は、
last updateLast Updated : 2026-03-30
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8.喪服の手順
実家へ着いたときには、夜がすでに深くなっていた。駅からタクシーで十分ほどの住宅街は、見慣れているはずなのに、その夜はどこか色を失って見えた。街灯の白さが道路の端に細く落ち、並んだ家々の窓には、それぞれの生活の灯りがともっている。誰かが風呂に入り、誰かが夕飯の片づけをし、誰かがテレビを見ている。そういう普通の夜の中に、和希の実家だけが急に別の用途の家になってしまった気がした。玄関の灯りはついていた。インターホンを押す前に、鍵は開いた。父だった。ネクタイを外していないワイシャツ姿のまま、顔だけがひどく疲れている。泣いた顔ではない。むしろ逆だった。感情をどこかへ押し込みすぎて、輪郭だけが硬くなっている顔だった。「来たか」父の声は低く、乾いていた。和希は頷いた。「うん」それ以上の言葉が続かない。お疲れ、とも、どうなってる、とも、何も言えないまま靴を脱ぐ。玄関には母の靴と、見慣れない黒い革靴が一足並んでいた。葬儀社の人間だろうと思う。玄関マットの端が少しめくれている。父か母がさっき足を引っかけたのかもしれない。そんなことだけがやけにはっきり目に入った。リビングへ入ると、空気が少し乾いていた。暖房は入っているのに、家の中の温度が人の心まで温めていない感じがする。ダイニングテーブルには書類が広がり、黒いスーツ姿の男が一人座っていた。葬儀社の担当者らしく、胸元に社名入りのネームプレートをつけている。母はソファの端に座っていて、膝の上にハンカチを握ったまま顔を上げた。「和希」呼ばれた声は、電話のときよりも細かった。母の目元は赤い。泣き続けたせいで腫れているというより、涙が出たり止まったりを繰り返したあとの顔だ。頬の色も悪い。いつもはきちんと留めている髪が、今日は耳の横で少し崩れていた。和希は母の前まで行き、何か言わなければと思ったが、結局「うん」としか返せなかった。抱きしめるでもなく、肩に手を置くでもなく、そのまま立っている。そうするしかなかった。葬儀社の男が丁寧に立ち上がり、名刺を差し出してくる。和希はそれを受け取り、名前だけ目で追う。読む気があるわけでは
last updateLast Updated : 2026-03-30
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9.焼香の向こう側
白い花は、近くで見ると少しだけ冷たい。菊も百合も、会場の照明の下ではきれいすぎるほど整っていて、触れれば水気を含んだ花弁が指にひやりと張りつきそうだった。祭壇の前には、同じ高さに揃えられた供花が並び、そこへ細い香の煙がゆっくりと上がっている。煙は真っ直ぐではなく、空調の弱い流れに押されるように揺れ、会場全体へ薄く溶けていく。和希は遺族席の横に立ったまま、何人目か分からない会葬者へ頭を下げた。「本日はありがとうございます」その言葉は、もうほとんど反射だった。相手の顔を見て、会釈の角度を少し変え、香典を受け取り、係の人に渡し、また別の相手に礼を言う。会場の空気は静かだった。大声で泣く人はいない。読経は低く抑えられ、靴音も、椅子を引く音も、すべてが場に合わせて小さく削られている。整えられた悲しみの場だった。その整い方の中にいると、和希は自分の感情がどこへ行ったのか分からなくなった。泣いていないわけではない。昨夜も、母の小さな泣き声を聞いたとき、喉の奥が何度か熱くなった。けれど会場へ入ってからは、その熱も形にならないまま沈んでいる。弔問客が来る。礼を言う。親族に声をかける。僧侶が到着する。供花の名札の並びを確認する。どれも一つひとつは小さなことなのに、それが途切れず続くせいで、和希は泣くタイミングを失っていた。母は黒い喪服の袖口を何度も握り、時折目元を押さえながら座っている。父は表情を固くしたまま会葬者へ頭を下げ、必要な場面だけ短く声を出す。二人とも壊れていないわけではない。壊れる寸前を、場の手順がかろうじて支えているだけだ。その不足分を埋めるように、和希は今日も動いていた。「お兄さん、しっかりしてるわねえ」遠縁の女が、小声でそう言った。褒めているのだと分かる。悪意はない。だがその言葉は、和希の皮膚の上を滑っていくだけで、何も内側へ届かなかった。しっかりしているのではない。ただ、立っていないといけないから立っているだけだ。そう言い返すのも違う気がして、和希は曖昧に会釈した。香の匂いがまた濃くなる。会葬者の列が途切れかけたころ、受付の前で小さなざわめきがあった。誰かが特別大きな声を
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