音の層が折り重なっていくところを追いかけると、
平沢の痕跡が現代のさまざまな場面で見えてくる。僕は昔からその独特なシンセの鳴りや、民族調の旋律と電子音を無理なく繋げる手法に惹かれてきたので、自然とどのクリエイターに影響が及んでいるかを探してしまう。
まず、エレクトロニカやダブ的なテクスチャを好む若手ミュージシャンたちだ。彼らはサウンドメイキングでノイズと透明感を同居させ、曲の中央に“不可視のメロディ”を置くことが多い。そこには平沢の「音の空間」を作るやり方が息づいていると感じる。
次に、ゲーム音楽に携わる人たち。ループするフレーズの中で情景を想起させるアレンジや、ボーカル処理を音そのものの一部として扱う手法は、平沢が世に示した可能性の延長線上にある。僕が最近聴いたあるインディーゲームのサウンドトラックでも、同じ種の“機械的で温かい”質感が意図的に用いられていて、影響を実感した。
結局、平沢の作風はジャンルや世代を越えて「音で世界を構築する」ことを大切にするクリエイターたちに響いている。私自身もその影響を受け続けていて、聞くたびに新しい発見がある。